個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう

鴻上尚史×河合薫対談 その2

2018年9月28日(金)

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『残念な職場』を書いた河合薫さん、『不死身の特攻兵』を書いた鴻上尚史さんの対談の2回目。それぞれの著書を踏まえながら議論はさらに深まる。

前回から続く)

鴻上:軍隊のなかで、パイロットはほかの職種と違う部分があります。完全な技術職のため、空に飛んだら抑圧的な「上下」の関係が通じないのです。

 上官から無茶な命令を出されても、パイロットは空の上では個人でいられるのです。自分の思いに対して忠実にできるのです。飛行機を降りたら怒られますが、技術のない上官も「ガミガミ言いすぎたら、敵機と遭遇したときに守ってくれないのではないか」と思ったでしょう。

 戦争が続いていたら佐々木さんは何度でも帰ってきたと思う反面、撃ち落とされたかもしれないとも思います。おそろしいのは司令官側が佐々木さんをこっそり殺していた可能性もあったことです。

 上官が佐々木さんの暗殺指令を出していたのは事実のようです。上官からすると、天皇に戦死を報告したのに帰ってくるのは責任問題ですから最終的に死んでもらわなければならない。ブラック企業の究極です。

河合:佐々木さんはそのことは知っていたのでしょうか。

鴻上:知らなかったようです。捕虜として収容所に入ったときに知り、驚いていました。
 佐々木さんに対し、「逃亡した司令官をどう思いますか」と何度も聞きました。しかし、立場が「雲の上」の人を佐々木さんがジャッジすることはありません。これは大企業の新入社員が社長をジャッジしないのと同じです。ジャッジできなかったのだと思います。

河合:そもそも鴻上さんはなぜ、佐々木さんが生きて帰ってきた理由を知りたいと思ったのですか。

鴻上:21歳の若者が40代、50代の上官の命令になぜ背けたのか。その理由を知りたかったのです。

河合:軍隊に「ノー」という答えは用意されていないと考えていたからですか。

鴻上:その通りです。この本の「命を消費する日本型組織に立ち向かうには」という帯の言葉は担当編集者がつけてくれたのですが、戦前の軍隊のような日本型の組織はずっと生き延びています。その究極が特攻隊というメカニズムだと思っていたため、あれほど佐々木さんに会いたかったのだと思います。

河合:「命を消費する」とは、日本型組織は人をコストとしてしか見ていないということです。そんなコスト意識に佐々木さんは勝ったのですね。

鴻上:上官たちがいたにもかかわらず、21歳の若者がコストにならないで戦ったすごさです。

河合:佐々木さんにとって、心のよりどころはどこにあったのでしょうか。

コメント3件コメント/レビュー

今の日本の会社組織で上層部にいる人間には、戦争でいえば上官にへつらい部隊全員が殺されても自分だけ生き残ろうとする指揮官と同じ人間が多い。だから「会社のために働け」と従業員を機材・材料と同じ扱いを繰り返して何があっても責任を取らないし、上位者へのゴマすりが上手であるため、上位者も勘違いして周囲に集めるためワンマン化する。だから損をするのは従業員ばかりである。そのような人間たちを弾劾できる仕組みが欲しいものである。(2018/09/28 08:27)

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「個を殺す残念な日本型組織を抜け出そう」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今の日本の会社組織で上層部にいる人間には、戦争でいえば上官にへつらい部隊全員が殺されても自分だけ生き残ろうとする指揮官と同じ人間が多い。だから「会社のために働け」と従業員を機材・材料と同じ扱いを繰り返して何があっても責任を取らないし、上位者へのゴマすりが上手であるため、上位者も勘違いして周囲に集めるためワンマン化する。だから損をするのは従業員ばかりである。そのような人間たちを弾劾できる仕組みが欲しいものである。(2018/09/28 08:27)

個を殺すというより、目に見えない同調圧力に個を殺されるのが日本です。

他人と同じ事をしなくてはならない、他人がガマンしてるのだから同様に
ガマンしなければならない空気、同じ事をしないと周囲から浮いてしまい
心中落ち着かず、他人より杭が出てしまうとすぐ嫉妬で打たれてしまう世界・・・

こんな圧力に晒された日本が、他国、特に発展著しいアジア各国に負け、
幸福感に浸れないのは必然の結果と考える。(2018/09/28 07:43)

>していることに自信があるなら、むしろ「強制になった人もいた」と書くはずなのです。

これはよくわかります。
本当に「正しい、けどしょうがないことだった」と思うなら、「全員自ら志願してくれたが申し訳なかった」「結果的に強制的になってしまった」みたいな少し自分たち側を下げる表現がついて回る
命をかけるような事なら尚更(2018/09/28 03:35)

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