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お金がなくなる日がやってくる——信用×Techがつくる新しい社会とは

ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平さん。

ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平さん。中学1年生くらいの頃からお金に興味を持ち、考え始めたという。

今、お金を中心に大きな転換が起きている。GoogleやFacebook、Amazonなど、国家を超えたグローバルカンパニーが生まれ、お金の信用母体が国家にとどまらない動きがある。

日本初の決済ソリューション「NP後払い」を提供してきたネットプロクションズでは、2018年10月30日、貨幣を起点に、信用や価値のあるべき姿を考えるカンファレンスを開催する。当日は経済や歴史の専門家や起業家などが登壇。その中の一人、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平さんに、お金のこれまでとこれからについて、お話をうかがった。

20代に大型M&Aを担当して、感じた違和感

山口さん

仮想通貨に代わるのではなく、お金そのモノ自体がなくなり人の営みに価値が生まれ循環する新しい経済システムができる。

——山口さんは「いずれお金はなくなる」と言われていますが、現在お金はどのように変化しているのでしょうか。

2017年12月、『新しい時代のお金の教科書』という本を書きました。僕が「いずれお金はなくなる」と言っているのは、仮想通貨に代わるという意味ではありません。通貨の性質が変わるのではなく、お金というモノ自体がなくなり、人の営みに価値が生まれ循環する新しい経済システムができるということなのです。

このようなことを考えるようになったのは、僕が1990年代から大手コンサルティング会社で大型M&Aに関わった経験が影響しています。

企業は“法人”、すなわち法律上は人としての権利を持つ有機体とされています。しかし、M&Aではその価値が数字で計られ、売買されます。子どものころから“友だちは大事にしよう”と言われてきたのに、それはどういうことなんだろう、と違和感を抱きました。

企業の売買が原因で、場合によっては多くの人がリストラされ、死者が出ることもあります。そう考えると、もはやお金は武器です。

そもそもお金とは、そこに価値があると人々が信用していることを前提に、共通言語として流通しているものです。それゆえにその言語が自由に使えれば信用を流通させることができ、社会をサバイブできるとても便利なものでもあります。

「企業は有機体、お金は無機物」が意味すること

株価チャートの画面。

極度の資本主義経済が進んだ現代においてお金は、社会を破壊する悲劇的リスクが高いものでもある。

GettyImages

反面、お金は数字という無機物です。今は世界70億人がその無機物につながっています。しかし、M&Aの例を見てもわかるように、本来有機的なつながりがあるはずのものに無機物である数字を持ち込むと、共同体や人間の秩序は一気に崩壊する危険性があります。

実際、2008年のリーマンショックでは、一つの投資銀行の経営破たんから、世界的なメルトダウンを起こしました。

極度に資本主義経済が進んだ現代では、お金は社会を破壊する悲劇的リスクが高いものでもあるのです。

なぜGoogleの社員食堂は無料なのか

共同体の中でお金はやりとりしない

共同体が外側に対して使うものがお金であり、逆に言えばお金のやり取りのない世界はすべてが共同体となる。

お金は共同体と非共同体を分けるものでもあります。共同体、たとえば家族の中でお金のやりとりはしません。Googleは、社員食堂も無料ということで知られています。しかしGoogleは共同体の外では、ものすごく稼いでいます。

共同体が外側に対して使うものがお金。内側には必要がない。逆に言えば、お金のやり取りのない世界はすべてが共同体となります。

日本では再階級化が進んでおり、非正規雇用のワーカーもいれば、数千万円単位で稼ぐ人もいます。階級のふたは閉じているので下から上の階級には行きにくい。

資本主義が生み出した格差は人間関係を断絶します。一方で、今はその階級の中で横のつながりができ、その共同体に属していれば生きていけます。

稼げる人は、社会により“適合”した人

話す山口さん

モノやコトを互いにシェアしながら、お金を使わないで流通させていく記帳主義経済へと変化していく可能性も。

これまでは、お金を持っている人は努力してきた人で、ない人は努力していない価値がない人とみなされていました。しかし、前述したようにお金は社会の共通言語です。お金を持っている人は、そうした社会に適合する能力を持っているにすぎない。マネー偏差値はもう無意味になりました。

では、今後はどのように経済が変わっていくのでしょうか。一つの方向性として考えているのが「記帳主義経済」です。記帳主義経済は、モノやコトを互いにシェアしながら、お金を使わないで流通させていく。

一人ひとりが、“お金を使わずにあげたもの”“もらったもの”をすべて記帳していきます。数字が記帳されている資本主義経済では、誰の目から見ても富の多寡は明らかですが、物品を記帳するこの経済システムでは、それを見た人の価値観や趣味、嗜好、ほしいものによって価値が変化します。

資本主義に代わる「記帳主義経済」とは何か

"記帳主義経済とは?"

一人ひとりの与えたものともらったものが明確になり、価値を生み出し、信用を構築していくことが"記帳主義経済"では必要とされる。

たとえば料理ができない人にとって、料理のサービスを提供してくれる人は価値が高い。料理を提供した人は「料理をしました」と記帳する。お金の精算はしません。このようにそれぞれの価値をお金を介さず直接やりとりし、記帳することで価値を高めていくのです。

記帳主義経済では、一人ひとりの取り引きがすべてデジタル台帳に記帳され、それがすべての人に共有されるため、騙したり隠したりができなくなります。

記帳主義経済の後には、「時間主義経済」が訪れると思っています。人々の欲求が「モノ(生存)」から「コト(承認)」へと変化すると、お金中心の経済が時間中心の経済へとシフトする。

たとえ大富豪でも、大統領になるには時間をかけて社会からの信用を育まなければいけません。自他の欲求を満たすために使うものが、お金ではなく自らの時間になるということです。そして「記帳主義」と「時間主義」を合わせた「信用主義経済」が到来します。

信用は、価値を積み上げたもの

カメラを見る山口さん

「貨幣の束縛」では、テーマである貨幣を出発点にして、資本主義に代わる新しい社会をどうデザインするのかを考えてほしい。

——ネットプロテクションズ社のミレニアル世代向けカンファレンス「貨幣の束縛」で、どのようなことを参加者に伝えたいと考えていますか。

変化する経済社会を生きていく20代、30代の人に伝えたいのは、まず信用ポイントを貯めよう、ということ。それには、出発点を自分ではなく他者や社会にすることです。カンファレンスのテーマである貨幣を出発点にして、資本主義に代わる新しい社会をどうデザインするのか、考えてほしいと思っています。

逆に参加者に聞いてみたいのは、「身体感覚としてのお金」についてです。信用は価値の積み上げ(信用=Σ価値)です。価値を交換するとき、信用というものを使って信用を交換することになる。すると、ロジカルな帰結として、お金が存在しなくとも経済システムは成立する。

一方で多くの人が感じているように、お金は簡単にはなくならないように思えます。それは、お金を一つの媒介物や、記号以上の何かとして捉えているからではないでしょうか。

この「身体感覚としてのお金」の正体は何なのかを、今の時代を生きている参加者と話してみたいですね。

お金について肌で感じている”右脳の感覚”と、ロジカルに考えたとき”左脳の帰結”を同時に考え、思考を深める場として、このカンファレンスに期待しています。


10月30日開催!THINK ABOUT CONFERENCE Vol.1「貨幣の束縛」についてはこちら

ネットプロテクションズが運営するオウンドメディア「THINK ABOUT」のコンセプトをベースとした、日本がこれから前に進むためのヒントを考えるカンファレンスイベントを開催します。山口揚平さんをはじめとした有識者の方を招いたパネルディスカッション(インプット)とワークショップ(アウトプット)を通して、参加された方々が自分の考えを見つめ直す1日にできればと考えています。

貨幣の束縛

(クリックするとイベントページに遷移します)

ネットプロテクションズについてはこちら
THINK ABOUTについてはこちら


山口揚平:ブルー・マーリン・パートナーズ代表。早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修了。1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供する。2010年に同事業を売却。現在は、コンサルティング会社をはじめ、複数の事業・会社を運営する傍ら、執筆・講演活動を行っている。専門は貨幣論・情報化社会論。著書に『新しい時代のお金の教科書』などがある。

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