お酒が飲めない人は、採用しない
わが社の新卒採用では、新卒選考の過程で、「武蔵野トリビア」(全 10問の質問に「はい」「いいえ」で答えてもらう)にチャレンジしていただきます。会社説明会に参加した学生であれば、とても簡単な質問です。トリビアの1問目には、次のように書かれてあります。
飲みニケーション。課長以上毎月25,000円の飲み会手当がつく。
飲めなくても、もちろん大丈夫! 雰囲気が好きならば!
イッキもコールもありません! お酒は好きですか?
「はい」「いいえ」
会社の文化を知ってもらう「トリビア」の1問目に「お酒は好きですか?」と質問する会社は、世界中で武蔵野だけだと思います(笑)。会社説明会で、事前に「お酒が飲めない、あるいは、お酒を飲みに行くのが好きじゃない男性は、採用しません」と明言しています。
飲み会は、会社を強くするコミュニケーションツール
わが社は、「お酒が飲めること」を重視しています。なぜなら、「よく飲む人ほど、よく出世する」からです。私が武蔵野の社長に就任したころの「部長昇格試験」は、「1時間で42度の焼酎1本を2人で空ける」です。しかもロックで(笑)。できれば部長。できなければ昇格見送りでした。
お酒が飲めれば、バカなことも言えて、部下と本音のコミュニケーションがとれる。上司と部下のコミュニケーションがよいと、部下も成長します。
コミュニケーションの原点は、人と人が顔を突き合わせて会話をすることです。飲食は心を和ませ、人はよく話すようになり、情報を多く仕入れることができます。相互理解が高い人とそうではない人なら、「相互理解が高い人」のほうが仕事において差が出るのは、言うまでもないことです。
なぜ飲み会が公式行事なのか
一流の上司は、「社員」との飲み会を公式行事にする
普通の上司は、「外部の人」とお酒を飲むのが好き
三流の上司は、飲みに行かない
飲み会の多くは、すべて公式行事です。武蔵野のコミュニティ、風通しのよさはここから生まれてきます。コミュニケーションは回数ですから、上司と部下の面談は、「半期に1時間」よりも、「毎月10分を6回」やったほうがコミュニケーションはよくなります。また、「飲み会」も、年に1、2回、一緒に飲んだくらいでは親睦は深まらないから、「毎月飲む」のがわが社の基本です。
武蔵野ほど、社員がよく集まって飲む会社は少ないと思います。とにもかくにも、お酒がある。1か月に10回以上飲みに行くことも、よくある話です。だから、武蔵野には忘年会がない。毎月末が年末のようなものだから、わざわざ忘年会を開く必要がありません。私は、65歳まで社員との「公式な飲み会」だけで、年間66日、実施していました。「公式」は、あらかじめスケジュールを社員全員に公開している飲み会です。「今日、飲みにでも行くか!」という突発的なものは含みません。
社長(上司)と部下が一緒にお酒を飲むのは、大事なことです。「たかが飲み会」と軽んじる人もいるかもしれませんが、少人数の中小企業にとっては、社員の結束が大切です。飲み会は、結束力や団結力を強くする重要なコミュニケーションツールです。お酒を飲むと、固定観念が崩れて、人と人の垣根が低くなります。だから社員の本音を聞くことができます。
ところが、業績の悪い会社の社長は、自社の社員とは飲みに行きません。「○○会の集まりだ」「社長同士の付き合いだ」と言って、社外の人間ばかりと付き合っている。コミュニケーションをとらなければならないのは、社外ではなく、「自社の社員」です。
多くの社長にとって懇親会の費用は福利厚生費ですが、私の考え方は、「教育研修費」です。武蔵野は、社員に支給する懇親会の費用が、年間約2500万円。わが社の結束力は、お酒代に比例して、強くなっています(笑)。
一流の上司は、飲み会は「教育研修費」と考える
普通の上司は、飲み会は「福利厚生費」と考える
三流の上司は、飲み会は「社員の自腹」と考える
上司と部下が共に相手のことを学ぶから、社内の雰囲気がよくなる
私は、「飲み会」を教育の一環と考えています。
私たちが、居酒屋、バー、スナックの常連客になるのは「居心地がいい」からです。では、どうして居心地がいいのですか?
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