POPなポイントを3行で
- 主人公がタイムスリップ、10年前からクリエイター人生をやりなおすライトノベル
- 「このラノ」部門賞ランクインなど、人気を伸ばし最新第5巻刊行!
- 作者・木緒なちが作品を通して伝えたい、読者へのエール
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MF文庫Jで刊行中のライトノベル『ぼくたちのリメイク』。
2006年に戻ってクリエイターを目指すというストーリーで、「このライトノベルがすごい!2018」では文庫部門新作第4位、総合6位にランクインするなど注目を集める。
また、著者の木緒なちさんは、アニメ『ひだまりスケッチ』のロゴはじめ、もともとは漫画やラノベの装丁、アニメのロゴやパッケージなどを手がけるデザイナー。彼が代表をつとめる「KOMEWORKS」と言えばメーカーの間では名の知れた存在だ。
一方で、成人向けゲーム『グリザイアの果実』などを手がけるシナリオライターでもあるという異質な経歴を兼ね備えている。
『ぼくたちのリメイク』最新となる第5巻が発売になる今回のタイミングで、作者の木緒なちさんへとお話をうかがうことにした。
取材・文:cube Tanaka
──よろしくお願いします。小説を書く以外にもいろいろなお仕事をされている木緒さんについて、まずは最初に軽く自己紹介をいただいてもよいですか?
木緒 元々はまったくオタク業界とは関係ない企業広告制作のお仕事をしていたんですが、美少女ゲーム業界にいた友達から「こっちでいろいろ楽しいことやってるぞ」というお誘いを受けて。
それでフリーランスとして、ゲームのロゴをつくったりパッケージのデザインをやったりしていたんですけど、「ねこねこソフト」というゲームメーカーさんに就職することになったんです。
そこでディレクター兼デザイナー兼シナリオライター兼……みたいなことをやりはじめたのが今につながる転機になった感じですかね。
その後、デザイン方面で私の仕事をお手伝いしたいという方がいらっしゃって、それなら法人名義をつくろうということで会社を立ち上げたのが、現在代表をつとめているKOMEWORKSのスタートです。 ──デザイナーとしてお仕事しているうちに、シナリオライターとしても活動することになったと。例えば、デザイナーとしては『ひだまりスケッチ』や『ご注文はうさぎですか?』のロゴや単行本の装丁、シナリオ作品ではアニメ化もされた『蒼の彼方のフォーリズム』(「あおかな」)などを手がけられていますよね。
木緒 そうですね。「ひだまり」の蒼樹うめさんとは前職のお仕事の時に知り合いまして、そこから芳文社さんとご縁ができて以来、いろんな作品の装丁をおかげさまで担当させていただいてます。
「あおかな」は世界観から全部つくったこともあって、自分の中でも非常に印象深い作品ですね。この作品以降、スポ根で明るくて可愛らしくてみたいなところが自分の得意な作風のイメージとしてご相談をいただくことも多くなったかなと。シナリオは個人で受けて、デザインの仕事は法人の方でやるという感じですね。蒼の彼方のフォーリズム for Nintendo Switch
──シナリオを書き始めたきっかけも、なかば無茶ぶりのようなものだったとか?
木緒 2003年頃の美少女ゲームって業界自体がまだまだ未成熟で、とにかく「できる奴がやれ」みたいな空気がどこのメーカーさんにもあって。
だからスクリプター(エンジニア)とかデバッガーとか、本来全然関係ない職種の人がそのままライターになったみたいなケースが非常に多かったんです。自分もその例に漏れずというか。
自分の場合はライターとデザイナー、どちらもそこそこ仕事が続いたので、続くうちは、と思っていたら13年くらい経っちゃいました。
木緒 いわゆるクリエイターものと呼ばれる、つくり手にスポットを当てた作品というのが近年増えてきたと思うんですけど、自分もつくり手として仕事をしてきたのでそうした作品を書いてみたいというのがあったんですね。
編集さんとも話をする中で出てきたのが、2007年頃、10年前ってオタク業界でいろんなことが起こったねと。ニコニコ動画ができた時期だったり、初音ミクが生まれた時期だったり、いろんな潮流がオタク側に寄ってきた時代だったなと思うんです。
なので「10年前」をひとつのキーワードにして、現代の主人公がその時代の大学生に戻ってクリエイティブの最前線で奮闘する姿を描くというのは面白いんじゃないかなと思いまして。これが『ぼくたちのリメイク』という作品の設定になっています。 ──作品の舞台は芸術大学ですが、これは木緒さんの母校・大阪芸術大学もモデルにしているということですね。そうした実体験も含めて、10年前という舞台での作品を書いてみたいと思ったのですか?
木緒 10年前の話というのがベースにはなっているんですけど、ただ単純な懐かしみだけの話ではなく、今も昔も変わらずそこに生きているクリエイターの話みたいな捉え方をしてもらえるといいかなと。
自分自身の振り返りというのもありますが、今まさにものづくりをやろうとしている若い人たちにも共感してもらえるように、上手くリンクさせられるといいなと思ってやっています。
いわゆる業界ものってかなりビターなトーンで描くタイプの作品ももちろんあるんですけど、自分としてはこれまでに体験してきたことで比較的報われたり、すごく面白い出会いに恵まれたりということが多かったので、そういう側面もちゃんと見せていきたいなというのがあるんですね。
だから今回の『ぼくたちのリメイク』という作品については、ものづくりは面白いよ、それは別に恵まれた人に与えられた特権ではなくて明日からでもあなたが始めることができるものだよっていうことを、ちゃんと伝えていきたいというのがあります。
──ネガティブだけじゃないものづくりを小説として伝えたかった。
木緒 僕自身も福岡の片田舎の出身で美大に行く知り合いもいないし、当時はネットもなかったから大学や仕事での実際の体験談が聞きたくても聞けなくて。そうした疑問に答える側の役割が、年齢的にも今の自分へ求められている時期なんだろうなと。
実際に大学生やこれから大学に行こうという高校生の読者さんからも、勇気づけられたとかいろいろやってみたいと思えるようになったといったポジティブな反応をいただくことが多くて。狙ったとおりに反応をいただけているのが自分としても嬉しいです。
──自身の体験を振り返りながらの集大成というよりも、これからの人たちへ向けた思いの方がこの作品に取り組む上で強いのですね。
木緒 作品単体として面白いものをつくるという目的ももちろんあるんですけども、これをつくっている状況にある僕自身の発信だったりとか、あとは普段僕がニコ生で配信している時に寄せられたコメントへのお返事にしても、次に繋がっていく人たちが生まれてくれることにすごく期待してるというか。そういったものが僕としては大きいかなと思っています。
2006年に戻ってクリエイターを目指すというストーリーで、「このライトノベルがすごい!2018」では文庫部門新作第4位、総合6位にランクインするなど注目を集める。
また、著者の木緒なちさんは、アニメ『ひだまりスケッチ』のロゴはじめ、もともとは漫画やラノベの装丁、アニメのロゴやパッケージなどを手がけるデザイナー。彼が代表をつとめる「KOMEWORKS」と言えばメーカーの間では名の知れた存在だ。
一方で、成人向けゲーム『グリザイアの果実』などを手がけるシナリオライターでもあるという異質な経歴を兼ね備えている。
『ぼくたちのリメイク』最新となる第5巻が発売になる今回のタイミングで、作者の木緒なちさんへとお話をうかがうことにした。
取材・文:cube Tanaka
木緒なちさんってどんな人?
木緒なち(以下、木緒) こんにちは、木緒なちと申します。──よろしくお願いします。小説を書く以外にもいろいろなお仕事をされている木緒さんについて、まずは最初に軽く自己紹介をいただいてもよいですか?
木緒 元々はまったくオタク業界とは関係ない企業広告制作のお仕事をしていたんですが、美少女ゲーム業界にいた友達から「こっちでいろいろ楽しいことやってるぞ」というお誘いを受けて。
それでフリーランスとして、ゲームのロゴをつくったりパッケージのデザインをやったりしていたんですけど、「ねこねこソフト」というゲームメーカーさんに就職することになったんです。
そこでディレクター兼デザイナー兼シナリオライター兼……みたいなことをやりはじめたのが今につながる転機になった感じですかね。
その後、デザイン方面で私の仕事をお手伝いしたいという方がいらっしゃって、それなら法人名義をつくろうということで会社を立ち上げたのが、現在代表をつとめているKOMEWORKSのスタートです。 ──デザイナーとしてお仕事しているうちに、シナリオライターとしても活動することになったと。例えば、デザイナーとしては『ひだまりスケッチ』や『ご注文はうさぎですか?』のロゴや単行本の装丁、シナリオ作品ではアニメ化もされた『蒼の彼方のフォーリズム』(「あおかな」)などを手がけられていますよね。
木緒 そうですね。「ひだまり」の蒼樹うめさんとは前職のお仕事の時に知り合いまして、そこから芳文社さんとご縁ができて以来、いろんな作品の装丁をおかげさまで担当させていただいてます。
「あおかな」は世界観から全部つくったこともあって、自分の中でも非常に印象深い作品ですね。この作品以降、スポ根で明るくて可愛らしくてみたいなところが自分の得意な作風のイメージとしてご相談をいただくことも多くなったかなと。シナリオは個人で受けて、デザインの仕事は法人の方でやるという感じですね。
木緒 2003年頃の美少女ゲームって業界自体がまだまだ未成熟で、とにかく「できる奴がやれ」みたいな空気がどこのメーカーさんにもあって。
だからスクリプター(エンジニア)とかデバッガーとか、本来全然関係ない職種の人がそのままライターになったみたいなケースが非常に多かったんです。自分もその例に漏れずというか。
自分の場合はライターとデザイナー、どちらもそこそこ仕事が続いたので、続くうちは、と思っていたら13年くらい経っちゃいました。
ものづくりは、恵まれた人に与えられた特権ではない
──木緒なちさんはこれまで『妹は僕に手を出すなっ!』や『16:00の召喚魔法』といったライトノベルを執筆されていますが、『ぼくたちのリメイク』は5巻が刊行されてご自身の中で最長期シリーズとなっています。2017年から始まった『ぼくたちのリメイク』のきっかけはあったのですか?木緒 いわゆるクリエイターものと呼ばれる、つくり手にスポットを当てた作品というのが近年増えてきたと思うんですけど、自分もつくり手として仕事をしてきたのでそうした作品を書いてみたいというのがあったんですね。
編集さんとも話をする中で出てきたのが、2007年頃、10年前ってオタク業界でいろんなことが起こったねと。ニコニコ動画ができた時期だったり、初音ミクが生まれた時期だったり、いろんな潮流がオタク側に寄ってきた時代だったなと思うんです。
なので「10年前」をひとつのキーワードにして、現代の主人公がその時代の大学生に戻ってクリエイティブの最前線で奮闘する姿を描くというのは面白いんじゃないかなと思いまして。これが『ぼくたちのリメイク』という作品の設定になっています。 ──作品の舞台は芸術大学ですが、これは木緒さんの母校・大阪芸術大学もモデルにしているということですね。そうした実体験も含めて、10年前という舞台での作品を書いてみたいと思ったのですか?
木緒 10年前の話というのがベースにはなっているんですけど、ただ単純な懐かしみだけの話ではなく、今も昔も変わらずそこに生きているクリエイターの話みたいな捉え方をしてもらえるといいかなと。
自分自身の振り返りというのもありますが、今まさにものづくりをやろうとしている若い人たちにも共感してもらえるように、上手くリンクさせられるといいなと思ってやっています。
いわゆる業界ものってかなりビターなトーンで描くタイプの作品ももちろんあるんですけど、自分としてはこれまでに体験してきたことで比較的報われたり、すごく面白い出会いに恵まれたりということが多かったので、そういう側面もちゃんと見せていきたいなというのがあるんですね。
だから今回の『ぼくたちのリメイク』という作品については、ものづくりは面白いよ、それは別に恵まれた人に与えられた特権ではなくて明日からでもあなたが始めることができるものだよっていうことを、ちゃんと伝えていきたいというのがあります。
──ネガティブだけじゃないものづくりを小説として伝えたかった。
木緒 僕自身も福岡の片田舎の出身で美大に行く知り合いもいないし、当時はネットもなかったから大学や仕事での実際の体験談が聞きたくても聞けなくて。そうした疑問に答える側の役割が、年齢的にも今の自分へ求められている時期なんだろうなと。
実際に大学生やこれから大学に行こうという高校生の読者さんからも、勇気づけられたとかいろいろやってみたいと思えるようになったといったポジティブな反応をいただくことが多くて。狙ったとおりに反応をいただけているのが自分としても嬉しいです。
──自身の体験を振り返りながらの集大成というよりも、これからの人たちへ向けた思いの方がこの作品に取り組む上で強いのですね。
木緒 作品単体として面白いものをつくるという目的ももちろんあるんですけども、これをつくっている状況にある僕自身の発信だったりとか、あとは普段僕がニコ生で配信している時に寄せられたコメントへのお返事にしても、次に繋がっていく人たちが生まれてくれることにすごく期待してるというか。そういったものが僕としては大きいかなと思っています。
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