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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について 作者:インスタント脳味噌汁大好き
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第12話 小さな身体

改変後の世界に来てから4日目の朝は雨だった。傘がない、と慌てていたら凛香さんが無言で背後に立ち、傘をさしてくれる。護衛なのに凛香さんはスッと無言で移動するのでたぶん元忍者。お抱えの忍者衆でもここまで気配を絶って瞬間移動できる人はいなかった。


今日は愛知から京都まで汽車で移動だ。帰りに気付いた事だけど、要人が乗る汽車の席は全て買い占めているようだ。美雪さんが居た行きの時は護衛を含めると車両内がいっぱいだったから気付かなかった。


そして、京都へ向かう電車の中では3人の女の子と向き合う。


「……名前と年齢だけ順番に言って」

「私の名前は加藤(かとう) 愛莉(あいり)です!歳は18です」

島津(しまづ) 千夜(ちよ)です。愛莉と同じく18歳、です」

木下(きのした) 真里(まり)です。17歳です」


女の子達の年齢は17歳と18歳だから、俺の外見年齢よりか上ということになる。それなのに彼女らはとても背が低かった。


「加藤さんが36キロで、島津さんが35キロね。木下さんは、30キロ!?」


死亡する可能性があることを念頭に置いて、愛華さんは人集めをしたのだろう。豊森姓じゃない。そして全員が身長140センチ代の、体重は30キロ代だ。木下さんとか141センチで30キロだから17歳という先入観が無ければ小学生にしか見えない。……褐色肌も相まって全員田舎の小学生って感じだな。顔も幼い感じだし、子供っぽく見えるというより子供に見える。


愛知の国有企業で働いていた人の中に条件に合致した、若くて泳げる低身長低体重の人がいたから愛華さんが連れてきたようだ。3人とも漁師として働いていて、親元を離れているとのこと。17歳の外見小学生が1人で自立して働いているのか……。まあ、身長は140センチ代だから180センチ代よりか珍しく無い、か?


「これから俺が個人的に雇うことになるけど、最悪死ぬ可能性があることは頭に入れておいて欲しい」

「秀則様、その点は三人とも了承済みです」

「いや、そうだとしても本人達の口から聞きたいからさ」


彼女らは、ハンググライダーで飛ぶ予定の人間だ。少し話を聞く程度の人なら男性を連れてくるのに、長期間手元に置くような人は女性しか連れて来ないのは作為的なものを感じる。というか作為的だろう。


ハンググライダーでの飛行実験など本来であれば、提案者本人である俺がするべきことなんだろうけど、一度実践したらすぐに危険だからという理由で他の人に任せるよう注意されるだろう。あと、俺もそこまで軽いわけじゃない。165センチ55キロという中肉中背だし、この世界に来てから筋力が間違いなく低下している。


「お空を飛べると聞きました!お空を飛べるのであれば、死んだって構いません!」

「私も愛莉と一緒で空を飛んでみたかったから、そのための覚悟はあります」

「死ぬような事故が起こるのは空を飛んだ後、ですよね?それならば大丈夫です」


最悪死ぬ、と俺の口から聞いたのに、加藤さんは空を飛ぶことに強い憧れを感じる。若干アホな子というか、子供っぽいというか、そういう雰囲気がある。加藤さんと幼馴染であるという島津さんも、覚悟完了していた。……島津って、東海地方にいるならもしかしてあの島津豊久の子孫かな?


木下さんに関しては何が大丈夫なのかわからないけど、3人とも了承を得たので簡単にハンググライダーの構造を紙に書いていく。


「とりあえず鉄か何かのフレームで、三角形だった気がする。頂点と背中にロープみたいなものがあって……。

飛ぶ前はこんな感じで、飛んだ後はこんな感じ?」

「ほぇ、独特な絵ですね。そんな風に、何度も同じ箇所をなぞるんですか」


正直に言うと絵は下手な方だけど、鉛筆で何度も薄い線を書いて太くしていけば、そこまで崩壊した絵にはならない。それでも人を書くのは苦手だけど、丘上で立っている人間を縦に細長い丸で、飛んでいる時の人間を横に細長い丸で誤魔化す。


「えっと、なんとなく想像することが出来ました。

……あの、私が書いても良いですか?」

「加藤さん、絵描けるの?」

「愛莉は絵がとても上手、です。でも絵描きだと、食べていけないから……」


俺の書いた絵からは、何となくハンググライダーのイメージは出来るけど、お世辞にも上手い絵とは言えない。そんな俺の絵を見かねたのか、加藤さんが絵を描いてくれるそうなので任せてみることにする。


……俺の横に立っている愛華さんと凛香さんが加藤さんを睨みっぱなしで怖いんだけど、俺に対しての不敬罪の適用とかはしないように言ってあるので大丈夫、だと思いたい。そもそも言葉遣いで俺が怒ったことは人生を通じて無い。すっと外見16歳だし。


「お、凄く上手い。上の部分の翼は三角形、だったかなぁ?」

「それではこんな感じ……ですか?」

「おお、それだ!

ちょっと絵描きとして欲しいレベルだぞ、これ」


加藤さんの絵は俺とは違ってくっきりと人間の造形を細かく書いている。三角の鉄の枠を持つ手の指まで違和感なく書き込めるのは、才能だろう。これを一発書きなのだから、加藤さんは絵描きとして十分に食っていけると思う。


「本当にこんな簡単な構造で人が飛べるのですか?」

「うん、この絵の構造に多少の補強パーツを付け加えることは必要だろうけど、こんな感じの構造で飛べたと思うよ。

流石に平地からは難しいと思うけど、少しでも高さのある場所からは飛べた気がする」


加藤さんの絵を見て首をかしげる愛華さん。こんな簡単な構造で飛べるのか?という質問だけど、今までの飛行機開発ではかなり複雑な構造で飛ぼうとしていたのだろうか?それはそれで設計図を見てみたい気持ちになる。

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