以上より、おおまかにみれば、日本の家計は、
(1) 住宅ローンを組んだ世帯を中心に、負債の拡大にともない、消費を切り詰め、しかもほとんどゼロ金利ながら元本の目減りを回避する極めて安全志向の強い貯蓄を増やす20歳代の世帯、
(2) 住宅ローンと子育て(教育)費用を抱えていながら、所得の伸びが低いために貯蓄を増やすこともままならず、住宅ローン以外の負債は返済し、消費を抑制せざるを得ない30~50歳代、
(3)老後の生活を念頭に借金の返済を行い、同時に消費を抑制させている60歳代、
(4) 消費も貯蓄も積極的に増やしている70歳代以上の階層、
に明確に分かれていることが家計調査からわかる。
特にアベノミクスによる雇用環境の劇的な改善は、主に20歳代の年齢階層には所得拡大という効果をもたらしていると思われるが、彼らが消費を抑制し、元本保証でほぼゼロ金利の「現金等価物」への貯蓄を増やしていることは、若年層の間には依然としてかなり強力な「デフレ・マインド」が染み付いていることが伺える。
この若年層の間にいまだに蔓延している強力な「デフレ・マインド」を払拭しなければ消費の拡大はままならないのではなかろうか(ついでにいえば、「貯蓄から投資へ」という金融資産のリスク資産へのシフトもままならないし、その結果、新しい産業や技術革新が日本国内から生まれるという状況もなかなか実現しないだろう)。
これに関連する話だが、飲食サービスの業態別の活動指数をみると(図表5)、20歳代の年齢階級の消費性向が大きく低下し始めた2015年からファーストフード店の活動指数が上昇に転じている。また、高級レストラン等が多く含まれる専門店・レストランの活動指数は消費税率引き上げの影響をほとんど受けていない。一方、居酒屋の活動指数は大きく低下している。
最後にあえて政治的な実現可能性を無視したまことに青臭い話をすれば、今後3年の安倍政権では、本格的なデフレ克服のために経済政策の資源を集中させた上で、将来の経済成長に向けて抜本的な税制改正(図表6の個人金融資産の年齢階級別分布をみると、相続税制や資産課税制をうまく使って高齢者の金融資産を如何にリサイクルするかが肝であると筆者は思うのだが)を時間をかけてじっくり練るというのが、憲法改正、及び、その後の日本の将来のためには必要ではないかと考える。