理化学研究所(理研):人工知能・AI技術を用い「世界最高精度」を達成『核磁気共鳴(NMR)化学シフトの予測』
- 2018.09.26
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理研が人工知能・AI技術を用い「世界最高精度」を達成
イギリスの化学ジャーナル誌にも掲載
自然科学系総合研究所である国立研究開発法人「理化学研究所(理研)」
2018年9月12日、理研は人工知能・AIによる探索により、核磁気共鳴(NMR)化学シフトの予測を「世界最高精度」で達成したと発表した。
この研究は、理研環境資源科学研究センター環境代謝分析研究チームによるもの。
研究成果はイギリスの王立出版部から出版されている科学ジャーナル誌「Chemical Science(ケミカル・サイエンス)」に掲載されている。
理化学研究所 とは?
理研について、ざっくりカンタンに説明
国立研究開発法人「理化学研究所(理研)」は、埼玉県和光市に本部をもつ、日本で唯一の自然科学総合研究所として、1917年より物理学、工学、化学、計算科学、生物学、そして医学などに及ぶ広い分野で研究を進めている。
2000年台より「元理事の研究費不正流用」や「STAP論文事件」など不祥事が続き、世間的には「問題ばっかり起こして、いったいなにやってるトコロなの!?」という印象が強い。
理研を56文字で説明してみる。
理化学研究所(理研)は、なにをしているトコロか簡単に説明すると「独自研究や企業との共同開発により、新たな化学物質や機械システム、プログラムを開発し、それでお金を儲けているトコロ」だ。
研究や開発だけでなく、次世代に繋げるための研究員を育成する手腕に長けていることでも有名。
スーパーコンピューター「京(けい)」を開発し、その恩恵により日本の多くの企業や研究機関が、飛躍的な発展を遂げることが出来たことも功績として新しい。
核磁気共鳴(NMR)化学シフトの予測 とは?
NMRについて、ざっくりカンタンに説明
今回の研究「核磁気共鳴(NMR)化学シフトの予測」についてもカンタンに説明しよう。
まず「核」と名前がついているので「ヒエッ!」と思う方もいるかもしれないが、核爆弾とは関係ない。
危ない研究ではないので、そういう先入観を取り除いて読んで欲しい。
医療機器MRIに利用されている核磁気共鳴(NMR)
すべての物質を構成する「原子」は「電子と原子核」から構成されていて、原子核はN極とS極をもった「磁石」の性質をもっている。
その特性を利用して、原子の状態を測定するのが「核磁気共鳴(NMR)」
核磁気共鳴は「指紋」と同じように、原子の種類それぞれによってバラバラである。故に、同一の周波数であれば、同一の原子であるという判断もできる。
医療機器として使われる「磁気共鳴画像(MRI)」や、食品の成分や産地、加工状態の検出にも使用されている。
核磁気共鳴の周波数は本来同一種族において同じはずであるが、化学的なものや磁気環境によって変化してしまう。これを「化学シフト」と呼ぶ。
この化学シフトがあるため、一概に正確なデータを検出することが難しかったが、理研は人工知能・AIのチカラを借りて、その精度を「世界最高」のものへと昇華させたのであった。
化学シフトの予測で期待できること
この研究から期待できることは、もちろん上記したような食品データの分析による「食品偽装の撲滅」がある。
だが、それ以上に期待できるのは医療においての「新薬開発」である。
それも、患者個人個人に対しての適切な「個人薬」の開発。
本来、クスリというものは患者の年齢や身長、体重、体脂肪、血圧などのデータを元に、内服量をはじめ有効成分の割合などは個々に差別されるべきものである。
が、それを可能とするためには原子レベルでの調合が必要となる。
今回の理研の研究は、それを可能とするパワーをもっている。
現実となれば、これまで患者を苦しめていた抗癌剤による副作用の抑止や、薬物アレルギーの排除なども可能となるだろう。
スーパーコンピューター「京」の登場で、日本の企業・研究機関が大きく躍進できたように、この研究で日本の医療が、大きく躍進できるかもしれない。