先日最終回を迎えた吉岡里帆さん主演のドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(カンテレ・フジテレビ系列)。原作は2014年から『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載されている柏木ハルコ著の同名マンガだ。
生活保護を担当するケースワーカー(役所の担当者)を主人公に、さまざまな課題を抱える生活保護利用者や新人ケースワーカーの奮闘を描いている。既刊7巻で累計70万部(電子含む)を超える人気作品だ。
原作者の柏木ハルコさんと取材等を通じて親交があったこともあり、ドラマ放送スタート前に現代ビジネスでインタビューをおこなった。
インタビューのなかで、柏木ハルコさんは「間違った情報を描かないよう監修をつけてほしい」「視聴者の偏見を助長するような表現はしないでほしい」という2点を条件に、テレビドラマ化のオファーにOKを出した、と話していた。
僕自身は、ふだん、行政機関ではなく民間の支援団体の立場で生活困窮者の支援に携わっている。
生活保護利用者と接したり、彼ら・彼女らを支援するなかで、生活保護を管轄する行政機関や担当者などと協力・連携をしたりすることもあれば、行政機関の不当な対応があればその是正を求めたりすることもある。
そして、それ以外にも生活保護行政について提言したり、メディア媒体などで意見を述べたりしてきた。
僕もドラマ化にあたって懸念をもっていたのはこの点であった。
全国放送のテレビドラマは、たとえ視聴率が振るわなかったとしても、当然ながら多くの人が視聴することになる。
生活保護とは何か、ケースワーカーとはどのような人たちで何をする仕事か、生活保護を利用している人にはどのような人たちがいて、どんな課題や困難さ、苦しさを抱えているのかなど、このドラマをきっかけに初めて知った人も多くいるはずだ。
たとえば、生涯のなかで、病院に行く機会がまったくない、医師を見たり、彼らに診断された経験がない、という人はほとんどいないだろう。それは、教師もそうだろうし、警察官などもそういった職業であると言える。
しかし、この「健康で文化的な最低限度の生活」においての主人公であるケースワーカーという職種、彼らが担当している「生活保護」という制度は、人生のなかで触れる機会がない、という人も多い。
だからこそ、このドラマのなかで「どのように描かれるのか」について、期待もあれば不安もあったというのが正直なところだった。
第一話から最終話まで、毎週火曜日に自団体の相談活動が終わり次第、すぐさま帰宅して視聴した。