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Label of the month: EM Records

  • オブスキュアな音楽に捧げてきた、日本の“目立たない”レーベルの20年。

    江村幸紀氏の控えめな事務所は、小さな音楽図書館のようである。 大阪市の中でも最も密度の高い商業地区である心斎橋にほど近い、雑居ビルの一室に足を踏み入れると、まずEM Records(エム・レコーズ)の最新リリースが飾られたミニ・ギャラリーに出迎えられる。 今年の前半にここを訪ねた時は、地元のミニマル・インストゥルメンタル・バンド、Goatの音源の初ヴァイナル化となった『New Games / Rhythm & Sound』、ベテラン・キーボーディスト、エマーソン北村のソロEP『The Countryside is Great』、日本の地域的な盆踊りの1982年の録音のリマスター再発盤、境石投げ踊り保存会の『境石投げ踊り』が出たところで、それらが壁に飾られていた。私が江村氏に話を聞くことができたは、ちょうどこれらの最新商品のプロモーション・イベントに参加するための東京出張から戻った翌日だった。

    彼は20年間、インディペンデントなレコード・レーベルをほとんどひとりで切り盛りし、それをフルタイムの仕事として生計を立てているという希少な一人だ。「レーベルを始めてレコードを数枚出すことは誰にでもできますが、維持していくことはまた別。どうやって始めるかを教えてくれる人はたくさんいても、続けていくノウハウを教えてくれる人はいません」と、特徴的な落ち着いた口調で話す。「ひとりでやっているとね、営業会議がないからいいですよ!」 EM Recordsが始動したのは1998年、彼がまだ大学の頃にアルバイトを始め、後にバイヤーとなって勤務していた大阪の伝説的な”ディガーズ・パラダイス”であるJellybean Recordsを離れた後だった。彼のここでの元同僚は、この事務所からそう遠くない、地元で最も影響力があり愛されるレコード店、Newtone Recordsをもう長らく経営している。もしも、この二人の人物によるレコード業界における献身がなかったとしたら、常に極めてエクレクティックでアヴァンギャルドな層を保ってきた大阪のアンダーグラウンド音楽シーンの風景は、全く違ったものになっていたかもしれない。

    彼の事務所の中の一番大きな壁は、自身のLP、SP、12インチ、10インチ、7インチ、そしてカセットテープや書籍のコレクションで床から天井まで埋め尽くされている。本棚の大部分も、『世界の民族音楽辞典』、『パトワ単語帖』、『インドネシア音楽の本』、『日本音楽史』、『ザ・ブルース・ブック』といったタイトルが並ぶ。部屋の中央に小ぶりな机が置かれ、コンピュータ画面の両側に2つのスピーカーがきちんと配置され、耳の高さで内側に傾けられており、ちょうど座った位置にスイートスポットが来るようになっている。 氏の視線が長い時間向けられているであろう座席の向かいの壁には、カンザスシティの実験的なジャズ・アーティスト、Roland P. Youngのアルバム『Isophonic Boogie Woogie』(1980)、『Istet Serenade』(2009)、『Mystiphonic』(2013)など、EMからリリースされた作品のオリジナル・アートワークが飾られている。このうちの2つは、Youngの奥様が描いたものなのだと教えてくれた。 このアーティストの場合は、再発盤を出したことをきっかけに、後のフルレングスのリリースが実現している。 「Rolandさんが、まだどこからも出していないという新しい曲を送ってくれたんですよ。それがまあ良くて。出さなきゃ、と思いました。」Youngはこれを機にレコーディングのキャリアを再開し、EMから通算4枚の新録アルバムを出している。机の左側にはCDコレクションのタワーがあり、『Trojan Dancehall Explosion』のコンピレーションとAlvin Lucierのアルバムが並列されているのが見えるが、他の名前やタイトルは、正直全く聞いたことがないものばかりだ。 そして、通りに面した窓の近く、部屋の一番奥の方に、過去20年間のEM Recordsバックカタログの一部がストックされている大型のシェルフが組んである。

    ここが音楽図書館のように感じるのは、DJのレコード・コレクションとは異なり、特定のスタイルの音楽に偏っていないからだ。 おそらく日本や欧米のメインストリーム・ポップミュージックを除く、世界のあらゆる場所の、様々な時代の多種多様なスタイルの音楽があり、そのほとんどが一般的には有名でないものだ。 EM Recordsは過去の多くの隠れた名盤を再発してきたが、最もカッティング・エッジな地元のアーティストの作品も出している。









    これほど長くレコードに関わる仕事を、活気に満ちた大阪のシーンの中心で続けてきたこの人物の頭の中には、どれほどの音楽知識が蓄積されているのか、思いを巡らせずにはいられない。 ここにある全てのものが、たった一人の所有物であるとはにわかには信じ難いのだ。EM Recordsの幅広さを知っていればなおさら、このレーベルがたった一人の人間によってずっと運営されてきたことに驚くだろう。

    「俚謡山脈(日本の民謡に精通するDJデュオ)、Soi48(タイ音楽を専門分野とする二人組DJ)、阿部広野君(ミュージシャン、東京のNoahlewis’ Recordsという中古レコード・ショップのオーナー)など、外部でサポートしてくれる人たちはいますが、僕自身何でも聴くのが楽しいんです。もう習性なんでね。 レコードやCDを買うのが大好きで、基本的に音楽で得た収益は全て音楽に費やしてきました。他にあまり欲求がないですね。レーベルを運営するなら、過去にどんなものが出ていて今どんなものが出ているのか知っておかなければならないですし。それも仕事のうちです。 変わった音楽が好きなんですよ、普通の音楽では満足できない。それをリリースするのは、自分が好きでいいと思うからです。」

    それを彼が手がけたものだと知らずに、既にあなたも彼が世に送り出したレコードを購入したり、所有している可能性もある。 現行のレーベルの多くは、ロゴ、センター・ラベル、スリーブ・デザインなどに、購買者が見たらすぐに認識できるようなビジュアル的な特徴を打ち出している。これに対し、リリース作品の約半数を自らデザインしているという江村氏は、常にEM Recordsの製品を美しくパッケージしてきたが、それはいつも中身の音楽を表すもので、レーベルではない。「レーベルは別に目立たなくていいんですよ。私がやっていることなんて、裏方の事務職です。 アーティストと音楽が一番前に出ているべきで、別にレーベルのことは知らなくていい。実際誰も知らないですから!」

    江村氏のこんな謙虚さに反し、意外なことに20年前にレーベルを立ち上げた当初の動機は、純粋に商業的な理由からだったという。 「世の中で一番レコードが売れていた時代でしたね。みんな”バカ買い”していたし、僕も売るってことに執着心があった」と笑いながら話す。最初に発売したのは、イギリスのポップ・バンド、Harmony Grassによる1970年のアルバム『This Is Us』の再発CDだった。「当時、CDの方がレコードよりまだ若干値段が高かったので、より裕福なお客さんがCDを購入していました。 レコード・バイヤーとしてずっと働いていたので既に売るための販路は持っていたし、 人脈もあった。 今とは違って90年代後半の頃は、CDをプレスするのもブックレットを印刷するのもえらくコストがかかりました。だから基本的に前の作品の売り上げを全部次の作品の支払いに回さないと続けられなかった。だから始めて最初の数年間は副業をしていましたが、2000年に一大決心をしてEM Recordsに専念することにしたんです。」













    そんな彼のアプローチが劇的に変化することになったきっかけは、ちょうどレーベルの経営が軌道に乗ってきた2003年に遭った、致命的な交通事故だった。「本当に死にかけましたね。事故で完全に潰れてしまい、腎臓と脾臓を失いました。僕がまだ生きていて、今やっていけているのは、奇跡みたいなものです。 それまではビジネスと自分が本当に好きなものとを分けていたところがあって、ゆくゆく安定してお金の余裕ができたらちょっとずつ混ぜて本当に好きなものを出そうと思っていた。でもすぐ死ぬ可能性が高いということになって、商売っ気がなくなりましたね。下りた事故の保険金を全部レコード・レーベルに注ぎ込みました(笑)。」

    今も時々思い出すというその時の気持ちについて、さらに話を続けてくれた。「病院って音楽が流れていないでしょう? 入院中のある朝、リハビリのためにふらふら歩いていたら、ある部屋にサン=サーンスの「白鳥」が流れていて。 そしたら勝手に涙がぼろぼろ流れてきたんですよ。あれは凄かった。初体験ですよ、あんなのは。音楽のパワーというものを感じましたね。」

    もうひとつ、回復後に奥さんが教えてくれたという笑えるエピソードも話してくれた。「何度か大手術を受けなければいけなかったんですが、麻酔で意識朦朧として幻覚を見てたんです。 手術室に入れられる前に、『病室の奥に大きなレコード・アーカイブがある、後で連れて連れていってくれと主治医に伝えてくれ』と必死に頼んだそうです。レコード・コレクターが死の淵で見る幻覚というのはね、バカですよねぇ」と苦笑いした。

    2004年に事故から復帰し、彼はレーベルのロゴをリニューアルし、レーベル名の周りに人間の心臓のイラストを加えた。漫画のような描写で、生命を象徴する心臓から発せられる振動が、耳に届くところが描かれている。「このデザインはね、非常に珍しいレコードのジャケットが元ネタなんですが、それが何かは明かしません。言ってしまうと面白くないから」と告白するが、そこに込められたメッセージは明らかだ。 心からの音楽を届けます、という宣言。

    それまでも、年平均5〜7枚のアルバムという一定のアウトプットを続けていたEM Recordsだったが、この新たなフェーズに入ってから年7〜10枚のアルバムを出すようになった。 ここ数年は、ほぼ毎月1タイトルは出ているようなペースだ。「それはね、出さないと回らないからですよ」と、また笑い飛ばす。 「本当は、もっと落ち着いて出したいんですけどね。今は90年代のようにレコードを買いまくるお小遣いがある人は少ないので。」 最新のリリースは日本の新進気鋭のアンビエント・プロデューサー、7FOのセカンド・アルバム『竜のぬけがら』と、俚謡山脈とのコラボレーションによる日本民謡シリーズの、盆踊り歌の再発盤、木崎音頭保存会の『木崎音頭』で、レーベルの型番は現在179を数える。

    これまで世に放った179枚の記録の中で、最も人気のある作品のいくつかを江村氏本人に挙げてもらった。 「最近のトップセラーは間違いなく(田中重雄の)『弓神楽』(2016)ですね。」EMのウェブサイトを見ると、この様々な伝統楽器の演奏と詠唱を伴った神道儀式音楽の、1990年のカセットテープ音源の再発盤にAwesome Tapes From AfricaやBen UFOが称賛のコメントを寄せているのを見ることができる。 タイ国の1975年の音源であるAngkanang Kunchaiの『Ubon-Pattana BandのIsan Lam Plearn』(2014)は、江村氏によれば、彼のカタログの中で最も愛され続けている作品の一つだという。「これは、ヨーロッパでは特に人気がありますね」と、英国のポスト・パンクのアーティストであるBrenda Rayの『D'Ya Hear Me!:Naffi Years、1979 - 83』(2012)を棚から抜き出して見せてくれ、「これも足しておきましょう」と手渡してくれたのが、バレアリック・クラシックとして再評価されている、80年代のスペインの実験的アンビエント・バンド、Finis Africaeのコンピレーション盤『El Secreto De Las 12 (The Secret Of 12 O'Clock) 』(2013)だ。

    EMのここ最近の作品の選択について注目すべき点は、新録ものと日本の知られざる良質音楽の割合が増えていることだが、依然としてこのレーベルの先のリリースを予測することはほぼ不可能だ。 ここ数年におけるこの傾向の例の一部に、大阪出身のデュオ、Synth Sistersのアルバム『Euphoria』、もう一人の大阪ベースのミュージシャン、YPYのダブルLP『Zurhyrethm』、ドイツのポリリズム・プロデューサー、Don’t DJによる「Hyperspace Is The Place / Hyperspace Is No Place」EP、ニュージーランドのパーカッション・アンサンブル、From Scratchの『Five Rhythm Works』などがある。 「EMを始めた頃は、いわゆる再発レーベルというのはあまりなかった。でもいまはたくさんあるからシラけちゃって。再発は、売り上げも含めて大部分が予測可能。新録の作品を出すのに比べたら100倍簡単にリリースできます。だから、今は新録作品を出す方が楽しいですね。」

    最後に、江村氏にシンプルな疑問をぶつけた。リリースする音源は、どうやって発掘するのですか?

    「とにかく浴びるほど音楽を聴いてきたし今も聴いています。 聴いたことのないものは全て聴く。 どうしても聴きたくて、それを聴く唯一の術が100,000円のレコードを購入することなら、買いますよ。 でも、音楽そのものの価値という点では、私はすべてのミュージシャンを平等に扱います。 有名無名は関係なく、レコードを出す条件は同じにしています。 自分の耳をなるべくバイアスのない状態に保つことが重要だと思いますね。 僕は次の作品を探してレコードを聴いているわけではないですけどね、これだけ長いことレコードを買ったり聴いたりしていると、面白いレコードは光って見えてくるんですよ(笑)。僕は自分が出会うべき音楽との遭遇のためにいつも準備して待ち構えていて、”聴く”ということはその出会いのためのほとんど唯一の手段です。音楽ですから。聴かないと話にならない。」



    Label of the month mix

    大阪拠点のDJ、Yousuke Yukimatsuが、EM Recordsのカタログからハイライトをセレクション。このミックスから同レーベルの幅の広さを感じとってみてほしい。



    Tracklist /
    Nora Guthrie - Emily's Illness (EM1083)
    Haku - Hawaii's Own (EM1136LP)
    The Sakai Ishinage Odori Preservation Society - Yose Daiko (EM1171LP)
    Jun Arasaki And Nine Sheep - Kajyadhi Fu Bushi (EM1176)
    Synth Sisters - I Am Here (EM1175LP)
    Roland P. Young - Twirling (EM1087LP)
    Yoshi Wada - Singing In Unison (EM1109LP)
    Finis Africae - Thunder Men (EM1118LP)
    Angkanang Kunchai - Lam Phloen Ramwong Lao (EM1157LP)
    Shintaro Sakamoto x VIDEOTAPEMUSIC - A Night In Bangkok (EM1158TEP)
    KUFUKI And Rifu Otsu - The Countryside Is Great (EM1172TEP)
    The Kizaki Ondo Preservation Society - Kizaki Ondo (EM1179LP)
    Tapes - No Broken Hearts On This Factory Floor (EM1146SP)
    Don't DJ - Forest People Plot (EM1161TEP)
    YPY - RIP 505 (EM1153DEP)
    Synth Sisters - Until The World Breaks Up (EM1175LP)
    7FO - Ryu No Nukegara (EM1178LP)
    Syntoma - I'm The Worst Of The Worst (EM1134LP)
    YPY - Gazing Beat (EM1153DEP)
    Compuma Meets Haku - Compuma Re-edit (EM1141MLP)
    Finis Africae - Magical Ceremony In The Pond (EM1118MLP)
    Noahlewis' Mahlon Taits - Valley Of No Return (EM1100LP)

    • 文 /
      Yuko Asanuma
    • 掲載日 /
      Tue, 25 Sep 2018
    • Photo credits /
      Ikue Uyama
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