これは英語教育の一環として、大学生に英語版ウィキペディアの記事を翻訳してもらい、日本語版にアップロードするという社会貢献プロジェクトだ。記事は候補一覧から学生に選んでもらうが、リストの中にはできるだけ女性に関係ある項目を入れるようにしている。
そうすると興味を持ってくれる学生もおり、今までにケイト・ミドルトンのウェディングドレスやウィキペディアにおけるジェンダーバイアス、ヘレン・M・ダンカンなどの記事が作られた。
女性のためのエディタソンも行われている。前述した科学と女性の執筆イベントはもちろん、毎年3月8日の国際女性デー付近にアート+フェミニズムという、芸術と女性がテーマのエディタソンが世界中で開かれている。
こうしたエディタソンは立派な試みだが、ウィキペディアンとしては不満もある。というのも、エディタソンや特定地域の記事を書くウィキペディアタウンといった執筆イベントは、ウィキペディアを充実させるよりはフェミニズムとか町おこしとか、別の目的のほうが重視されがちだからだ。
結果的に記事が宣伝のようになってしまったり、思い入ればかりが余った質の低いものになったりする。ウィキペディアの決まりを知らない初心者が集まり、ベテランのウィキペディアンや図書館の支援も受けずに実施しようとする場合すらあり、結果は推して知るべしといったところだ。
私はフェミニストで、ウィキペディアンだ。宣伝的でない正確で面白い記事がウィキペディアに増えてほしいし、女性に関する記事を充実させるのならば、記事の質と両立させなければダメだと思っている。
ウィキペディアコミュニティは、正直言ってあまり女性にとって居心地の良いところではないと思う。
性別を明かさなければセクハラを受けないというのはマシなところかもしれないし、私はもう古株でウィキペディア15周年企画の特別サイトに載ったことがあり、ありがたいことに比較的まともな活動をしている変人としてコミュニティで認知してもらえているが、それでも女性だから歓迎されていないと思ったことはある。
たぶん、この記事を書いたせいで怒るウィキペディアンがいるだろうとも思う。ただし、私はウィキペディアがそれだけで人を追放するようなところではないとも信じている。
私はこれからももっと女性のウィキペディアンが増えることを祈って、粛々と面白そうな記事を書いたり、学生を指導したりするだけだ。