【保存版】図解でわかる住宅借入金等特別控除申告書の正しい書き方
年末調整の時期になると「住宅借入金等特別控除申告書の書き方ってどうすれば良いんだったかな……」と悩みますよね。
住宅ローンの控除はローン残高に応じて所得税を控除できる制度で、返済が大変な住宅ローンの負債者にとって税金の納め過ぎを回避できる嬉しい制度です。
そんな住宅ローンの控除ですが、
「住宅借入金等特別控除申告書の書き方が分からない……」
「住宅ローンを組んで、今年が初めての年末調整だけどどうすればいいの?」
「住宅ローン控除の申請を忘れてしまった場合、どう対処すればいい?」
などのような悩みや疑問を抱えていませんか?
年末調整で控除を受けるためには、住宅借入金等特別控除申告書の提出が必要です。
もし書類を書き間違えた状態で提出をしてしまうと、「会社の経理の人に依頼して修正してもらう」「自身で確定申告をする」などで対処をする必要があります。
自身も手間が増えてしまいますし、周りにも迷惑をかけてしまうので、一回で正しく記入して提出したいですよね。
※年末年始は経理の方はすごく忙しいので、修正依頼を出すととてもイヤがられます…。
しかし、これらの書類の記入は複雑で、自信がない方もいらっしゃるでしょう。
そんなあなたのために、この記事では住宅借入金等特別控除申告書の書き方も含め、書類を再発行する方法や申告をし忘れた場合の対処法を分かりやすく解説していきます。
控除は2年目から年末調整で行う
マイホームの購入や、省エネ・バリアフリーのリフォームに住宅ローンを利用する際、税金の一部控除を受けられる仕組みを、住宅ローン控除と言います。
住宅ローン控除を受けることができるのは、
- 控除を受ける年の所得が3000万円以下
- 住宅ローンの借入期間が10年以上である
- 住宅を取得してから半年以内に入居し、控除が適用される年の12月31日まで住み続けている
- 物件の床面積が50平方メートル以上あり、半分以上が居住用である
などの条件を満たしている場合に限ります。
これらの条件を満たしている場合でも、勤務先から0.2%以下の金利で資金を借り入れている場合、親族から個人的に借り入れている場合は控除を受けることができません。
収入や借り入れの状況、住宅を利用する期間だけでなく、取得する物件やリフォームの内容に関しても細かい条件があるので、よく確認する必要があります。
物件やリフォームの条件に関しては、物件の取得やリフォームを行う際に不動産・リフォーム業者に確認しておくと良いでしょう。
住宅ローン控除によって控除を受けられる税金は、所得税と住民税の2つです。
住民税の控除は必ず受けられるわけではなく、所得税の控除で差し引きできなかった額を住民税から控除するという形になります。
多くの税金の控除が期待できるので、控除の対象となっている場合はしっかりと申告を行いましょう。
住宅ローン控除を受けるためには、初年度は確定申告、2年目からは年末調整を行わなければなりません。
初年度は確定申告
住宅ローン控除を受けるためには、初年度に確定申告を行う必要があります。
確定申告に必要な書類は、主に以下の6つです。
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの残高証明書
- 住民票の写し
- 登記事項証明書
- 不動産売買契約書の写し
これに加えて、中古住宅や認定された住宅の場合は、性能評価書や認定通知書の写しが必要になります。
必要書類を準備し、控除額を計算して税務署で申告を行いましょう。
確定申告を初めて行う場合、どうして良いか分からないという場合も少なくないでしょう。
早めに税務署に相談しておくようにしましょう。
確定申告を行うと、その後「住宅借入金等特別控除申告書」が届きます。
2年目以降の年末調整時に使う書類なので、大切に保管しておきましょう。
2年目以降は年末調整で申請
2年目以降は、年末調整で控除の申請を行います。
初年度の確定申告時から状況が変わっていない場合、確定申告に基づいて控除額を決定するので、確定申告を省略することができるのです。
年末調整に必要な書類を確認していきましょう。
年末調整で必要なもの
年末調整で必要となるものは、住宅借入金等特別控除申告書と残高等証明書になります。
住宅借入金等特別控除申告書
初年度の確定申告後、税務署から送られてくる書類です。
控除を受ける年数分の書類がまとめて送られてくるので、紛失しないように注意しましょう。
また、それぞれ使用する年度も最初に印字されているので、間違わないように注意しなければなりません。
残高等証明書
住宅ローンの借り入れを始めると、毎年金融機関から残高等証明書が送られてきます。
金融機関によって名称が違う場合がありますが、年末の住宅ローン残高を証明するために必要な書類です。
この証明書をもとに、住宅借入金等特別控除申告書を記入し、勤務先に提出します。
書類は再発行できる?
住宅借入金等特別控除申告書は、何年も後に使うものまでまとめて送られてくるので、紛失してしまうことの多い書類です。
住宅借入金等特別控除申告書、残高等証明書ともに再発行を行うことができます。
住宅借入金等特別控除申告書の再発行は、税務署で行います。
「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」という書類があるので、請求事由を「紛失のため」とします。
「交付申請書類の対象年分」の欄には、紛失してしまった書類の対象年分を書き入れます。
その他、住所や居住開始年月日など、必要事項を記入したら、納税地の税務署に提出しましょう。
後日、再発行した分の住宅借入金等特別控除申告書が届きます。
残高等証明書の再発行は、住宅ローンを借り入れている金融機関に連絡をとって再発行の手続きを行いましょう。
金融機関によって違いがありますが、一般的に窓口で手続きを行います。
金融機関の通帳やキャッシュカード、届印、免許証などの本人確認書類が必要になる場合があるので、事前に確認しておくようにしましょう。
金融機関によっては、電話での手続きが行える場合もあります。
無事に手続きが終われば、数日後に郵送または窓口で受け取ることができます。
どちらの書類も、再発行の手続きを行ってから実際に書類が届くまで1週間程度かかることが予想されます。
年末調整の時期が近づくと税務署が混雑するため、再発行の手続きが遅れてしまう、再発行した後の年末調整がスムーズに行えないという場合もあるでしょう。
余裕を持って、事前に書類を準備しておくことが必要です。
住宅借入金等特別控除申告書の書き方
ここでは、年末調整で住宅ローン控除を申請するために必要な住宅借入金等特別控除申告書の書き方について書類の一番上から順に沿って解説していきます。
※(6)~(10)・(12)、(13)の記入欄は、増改築による住宅ローン控除なのでここでの説明は省略します。
引用:国税庁「(参考文例)給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の記載例」
勤務先・名前・住所
住まいの地域を管轄している税務署の町名、勤務先名称、勤務先所在地、本人の氏名と住所を一番上の欄に記入してください。
氏名の隣に押印するのを忘れないようにしましょう。
新築又は購入に係る借入金等の年末残高
年末の時点の住宅ローン残高を、「(1)新築又は購入に係る借入金等の年末残高」の「(C)住宅及び土地等」の欄に記入します。
金融機関から郵送されてきた残高証明書を基に転記してください。
住宅のみの場合は(A)に、土地等の場合は(B)に記入しましょう。
2ヵ所の金融機関から借入している場合は、それぞれの年末残高合計金額を記入します。
(例)A銀行で800万円、B銀行で1,000万円を借入していて、それぞれの残高が50%の場合
8,000,000円(A銀行) × 50% + 10,000,000(B銀行) × 50% = 9,000,000円
なお、今回の記入例では、19,750,000円を(1)に記入しています。
家屋又は土地等の取得対価の額
住宅と土地の取得対価を(2)に記入します。
住宅の総床面積及び土地の総面積、居住用部分の割合も記入してください。
住宅用部分は住宅ローン控除の対象外となるので注意
記入欄には「「下の口」「下のホ」「下のヘ」とありますが、ここでいう「下」とは住宅借入金等特別控除申告書の下部にある「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」のことを指し、該当する欄から転記してください。
取得対価の額に係る借入金等の年末残高
「住宅ローンの年末残高 」で記入した金額のうち少ない方を(4)に記入します。
今回の例では、19,750,000円の方が少額になるのでこちらを記載することになります。
そして、(4)に記入した金額に(3)の割合をかけた金額を(5)に記載してください。
ここでは、(4)19,750,000円 × (3)100% = (5)19,750,000円になります。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算の基礎となる借入金等の年末残高
(5)と(10)を合計した金額を(11)に記入してください。
今回は新築を例にしているので(10)は空欄となり、(5)と同じ金額「19,750,000円」と記入することになります。
そして、(5)に住宅ローンの控除率をかけた金額を(14)に記入しますが、居住開始日によって住宅ローン控除率が変わるため、今回は1%です。
(5)19,750,000円×1%=197,500円
年末調整後には、197,500円戻ってくるという計算結果になります。
年間所得の見積額など
右下にある「年間所得の見積額」には、年間所得(年収ではない)を記入してください。
年間所得3000万円以下でないと受けられないのですが、見積額とされているため正確な金額でなくても構いません。
もしも前回の源泉徴収票が手元にあれば「給与所得控除後の金額」に記載されている金額を記入すると良いでしょう。
連帯債務になっている場合は、「連帯債務による住宅借入金等の年末残高」または「備考」の欄に記入してください。
A銀行とB銀行の年末残高合計金額を記載し、備考欄に自分がどのくらい負担しているのか、他の連帯債務者の氏名、住所、勤務先を記入します。
年末調整を忘れた場合の対処法
住宅ローン控除は、住居を取得した最初の年から確定申告する必要があるのですが、2年目以降にうっかり申告し忘れたという方も多いのではないでしょうか?
申告漏れがあった場合、税務署から直接連絡が来るということはありません。
ここでは、年末調整を忘れてしまった人のために有効な対処方法を紹介していきます。
時効は5年
住宅ローン控除の還付申告は、過去5年間までさかのぼって申告することができます。
申告するのを忘れていたという方もなかにはいますが、時効までの5年間は還付申告が有効になるので安心してください。
しかし、自営業者は1年以内となっているのでそれ以上を過ぎてしまうと請求できないので注意しましょう。
1月末まで年末調整が可能
▼ サラリーマンの例
1年目の確定申告は無事に完了したが、2年目以降の年末調整で申告し忘れた場合は源泉徴収票が作成される1月末までに年末調整を行うようにしてください。
この期限までであれば、勤務先で再度年末調整を行うことが可能です。
忘れてしまった場合は、早急に給与担当者に申し出るようにしてください。
もしも、1月末を過ぎてしまった、または給与担当者に問い合わせできない場合は、1年目と同様に税務署で確定申告をしても住宅ローン控除を受けることができるので頭に入れておきましょう。
▼ 自営業者の例
自営業者の場合は、毎年確定申告をしている前提があるため住宅ローン控除を忘れた際は、確定申告書の控除項目で住宅ローン控除の申告漏れが発生しているということになります。
この場合、一度申告した確定申告の内容を更生することになるでしょう。
当初の申告日より1年間が更生請求できる期限となっているので注意してください。
できない場合は確定申告
2年目以降の年末調整をし忘れた方は、時効までに確定申告すれば問題ないと説明しましたが、1年目のような膨大な書類をかき集めなければならないのかと思うと頭を抱えてしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、2年目以降の住宅ローン控除に必要な書類は1年目に比べると大幅に簡素化されているので、それほど負担が重くなることはありません。
- 給与所得の源泉徴収票(年末調整までに間に合えば不要)
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に関係する借入金の年末残高等証明書
以上の3点が必要書類になります。
(1)の書類は勤務先から1月末に配布されますが、(2)と(3)は自宅に郵送されてくるため紛失してしまう方が非常に多いです。
(2)は、税務署から2年目~10年目までの9年度分の申告書がまとめて送られてきます。
(3)は、住宅ローンを借入している金融機関から10月末頃に送られてきます。
住宅ローンの確定申告について詳しく知りたい際は「確定申告で住宅ローン控除を受けよう!確定申告の手引き」を参考にして下さい。
自営業は1年が期限
自営業者の場合は一般のサラリーマンの方と違い必要書類も違ってきます。
- 更生の請求書
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に関係する借入金の年末残高等証明書
自営業者はサラリーマンと違って、そもそも源泉徴収票がないため、(1)の書類で当初確定申告した内容を基に更生していく形になります。
更生の請求書は税務署に置いてあるので、(2)と(3)を持参した上で記入しても問題ありません。
また、更生の請求書は税務署のホームページからも入手することができます。
請求期限は当初申告日から1年間となっているので、それまでに申告するようにしましょう。
(2)と(3)の書類はサラリーマンと共通の書類となっています。
必要書類を紛失した場合は、控除の対象にならないということはありません。
住宅借入金等特別控除申告書は税務署へ、年末残高等証明書は各金融機関へ問い合わせて再発行の依頼をしましょう。
まとめ
2年目以降の年末調整で必要な住宅借入金等特別控除申告書の書き方をマスターしておくと、手続きがスムーズになります。
もしも、申告し忘れたとしても上記のような対応策によって対処することができます。
10月末に「住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書」が自宅に届いた際は、次年度以降の申告でも使用するので大切に保管しておいてください。
万が一必要書類を紛失した場合は、再発行の手続きを行い必ず申告するようにしましょう。