テックビューロの仮想通貨流出問題は、金融庁が2度にわたって業務改善命令を出すなど、同社の業務改善に向けた取り組みの最中に発生した。しかも、同社は1月に約580億円相当の仮想通貨を流出させたコインチェックのような登録を目指す「みなし業者」ではなく、金融庁の“お墨付き”を受けた「登録業者」だ。今後、批判の矛先は監督官庁の金融庁に向けられる可能性もある。
「その時その時でやるべきことはやってきたが、結果として不正流出が起きたのは遺憾だ」。金融庁の担当者はそう述べると、金融庁としては顧客資産を保護するためできる限りの対応を進めてきたことを強調し、悔しさをにじませた。
金融庁はコインチェックの流出問題発覚後、すべての仮想通貨交換業者への立ち入り検査を実施する方針を掲げ、これまでに計17社に対し業務停止命令を含む行政処分を行ってきた。
ただ、実際は再び流出問題が発生。手口もコインチェックの時と同様に外部からのサイバー攻撃をきっかけに、常時インターネットに接続されている保管場所「ホットウォレット」に置いてある仮想通貨が狙われた。
予防にはネットから切り離した「コールドウォレット」で保管することが重要となるが、出し入れに時間がかかるなど利便性に劣るため、2つを使い分ける業者が多い。問題はホットウォレットに入れる資産の割合だ。金融庁によるとテックビューロが預かる顧客資産は472億円相当で、「割合は少し高い印象だ」(担当者)といい、同社が安全よりも利益を優先させていた可能性がある。
金融庁は同社が内包するリスクを十分に見極められていたのか。業務停止命令など、より踏み込んだ対応は取れなかったのか。監督官庁としての対応も検証が必要となりそうだ。(蕎麦谷里志)
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