EVは割安な家庭用蓄電池
夜間に発生した停電については、太陽光発電は無力である。したがって、病院、警察や消防など無停電化の必要性の高いところには、蓄電池の設置が望まれる。家庭用蓄電池も年々価格が下がってきているし、非常時であっても電気の必要性は高いことから、備えておくことは決して無駄ではないだろう。
しかし、蓄電池は高い。家庭用の5~8kWhの電池だと80万~160万円(単価20万~40万円/kWh)の予算が必要である。補助金が利用できるケースはその分安く購入できるが、概ね100万円の予算が必要と考えておけばよいだろう(図3)。
家庭環境が許せば電気自動車(EV)という選択肢もある。日産「リーフ」なら、24kWhの電池容量があり、「LEAF to HOME」というリーフと家を繋ぐキットも販売されている。リーフの値段は400万円ほどなので、自動車という機能付きで17万円/kWhとリーズナブルである。
設置型家庭用電池を購入する際、どのくらいの容量を備えればよいのであろうか。それには、停電時でも必要となる電力使用量(W)を想定し、それを何時間稼働させる必要があるかを考えればよい。
例えば、冷蔵庫を2日間動かしたい場合、約500W×48時間=24kWhとなる。リーフの電池と同じ容量である。停電時に晴天となるかはわからないが、太陽光発電が利用可能なら昼間の時間はそれを利用できるので、その半分でも十分かもしれない。
病院など必要な電力量がもっと大きい場合には、蓄電池にかかるコストが莫大になることが予想できる。このように、蓄電池は容量が大きいとそのコストが大きくなり過ぎるので、災害時長時間必要な電源を備える用途には、蓄電池はまだ向かないといえる。
一般的な日本の家に騒音を発する発電機を長時間運転させるのは差し障りがあるだろうし、北海道では建物内で発電機を長時間使用し、一酸化炭素中毒になったという事故もあったようだ。冷蔵庫を動かす、テレビをつける、スマホを充電するという用途では蓄電池は十分な性能を有するので、いざという時に備える意味で設置する価値はあるだろう。
蓄電池に電気を貯める。これは、経済性計算をするとなかなか採算性が取れないことがわかる。しかし、EVの普及で電池が劇的に安くなる可能性は高い。しかもEVの電池は十分な大きさがある。政策として、震災に備えてEVを普及させるのは悪くないアイデアと思える。交通網が麻痺したときに安定供給に課題のあるガソリン・ディーゼル車よりも、停電時であっても太陽光発電につなげば充電できるEVは災害に強い移動手段となり得る。そして、それがそのまま蓄電池として、家庭にも電力を供給できる。