【大相撲】貴乃花親方、廃業 「引退」届け出て会見2018年9月26日 紙面から
大相撲の貴乃花親方(46)=元横綱=が25日、東京都内で記者会見し、日本相撲協会に引退届を提出したことを明らかにした。3月に内閣府へ提出した告発状の内容が事実無根であると認めるように、協会から圧力を受けたことが主な理由。新団体の設立を否定するなど、今後も協会と争う姿勢は見せなかった。協会は圧力を否定し、引退届は受理できないとの認識を示した。 平年寄に降格し、一兵卒として出直しを誓ってからわずか半年。やはり、貴乃花親方は自分の思いを曲げてまで相撲協会に居続けることはできなかった。 六本木ヒルズで開かれた会見には黒いスーツに身を包んで姿を現した。入門してから31年。なぜ協会を去らなければならなかったのか。貴乃花親方は穏やかな口調ながら、視線をそらすことなく語り始めた。 「8月7日に日本相撲協会より、協会が依頼された外部の弁護士の見解を踏まえたとする書面が届きました。その書面では、『告発状は事実無根な理由に基づいてなされたもの』と結論付けられておりました。告発状の内容は事実無根でないことを書面で説明してきましたが、その後、告発状の内容が事実無根な理由に基づいてなされたものであることを認めないと親方を廃業せざるを得ないなど、有形無形の要請を受け続けてまいりました。事実を曲げて、告発は事実無根だと認めることは私にはできません」 昨年10月に弟子の貴ノ岩が元横綱日馬富士から暴行を受け、その後の協会の対応に疑問を感じた。真実の追求を理由に3月9日、内閣府公益認定等委員会へ告発状を提出。協会との対決姿勢が鮮明になった。 名古屋場所後の理事会では、協会が一丸となっていくため、無所属の親方は5つある一門のいずれかに所属することが義務付けられた。だが、協会を告発した貴乃花親方の意志が変わらないのであれば、いずれの一門も受け入れを保留せざるを得ない。 ただ、一門に所属できなければ親方業務ができないとは決められていない。「ある役員から場所の後半戦にそのような話を聞いた」という貴乃花親方とは認識のずれもあったようだ。 結局、この日の早朝、信念を曲げることよりも退職することを決断。弟子らに伝えた後、代理人を通じて相撲協会へ引退届を提出した。協会に最後の物言いをつけた貴乃花親方は「戦う姿勢とかはもうございません」と協会とは一線を引く考え。今後は、力士を目指す子どもたちへの普及活動をしていくという。 2003年初場所で現役を引退したときの会見では「非常にすがすがしい気持ち」と晴れやかに語ったが、この日は「断腸の思い」「無念」「苦渋の決断」という言葉を何度もくり返した。信念を貫いた末とはいえ、一時代を築いた「平成の大横綱」が不本意な形で協会を去った。 (岸本隆)
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