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【格闘技】

木村、雑草の意地 エリート恒成を追いつめた

2018年9月25日 紙面から

健闘をたたえ合う木村翔(右)と田中恒成(金田好弘撮影)=名古屋市港区の武田テバオーシャンアリーナで

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◇WBOフライ級タイトルマッチ12回戦

 WBOフライ級タイトルマッチが24日、名古屋市の武田テバオーシャンアリーナで行われ、王者の木村翔(29)=青木=は僅差の判定で挑戦者の田中恒成(23)=畑中=に敗れた。序盤から積極的に打ち合い、全力を出し切った末の惜敗。王者の意地は見せたものの3度目の防衛はならず、試合後はすがすがしさとともに悔しさものぞかせた。

 チャンピオンの意地だった。腫れて見えない右目、11回から痛み出して握れない右拳。最終回、それでも木村は全力でパンチを振るった。

 挑戦者の田中も右の打ち合いで応じたが、次第に木村のペースになっていく。試合終了のゴングが鳴り、抱き合って健闘をたたえあったあと、力尽きリングに膝をついたのは挑戦者だ。数分後に読み上げられた判定は、わずかな差で王者の敗戦。だが、木村が見せた激闘は間違いなく王者のものだった。「負けた、とは思わなかった。終わった直後は気持ちよかったですね。しっかり気持ちがぶつかった試合ができて…。田中君も初回から前に出てきて、根性決めて試合してるんだと伝わってきた」

 アマ経験がほとんどなく、プロデビュー戦でKO負け。所属ジムに資金力がないため、昨年、中国・上海で世界タイトルに挑戦するまで一度もメインイベントを務めた経験がなかった。メインは今回が2度目で、いずれも対戦相手のホーム。小さなジムの雑草選手の悲しさだ。この試合に勝っていたら、次の目標は、自分自身が主役の世界戦をすることだったが、夢に終わった。

 「雑草はエリートに勝てなかった、紙一重だったスかね。ほんとは勝ちたかったけど。いつか本当のメインを張りたかった」。いつものように明るく取材に応じていた木村の目に、一瞬だけ涙がたまった。

 今後は未定。「今はやる気になんない。負けてすぐまたやると言えるほど半端な練習もしてないです」。そう言い切った雑草男のボクシングは、間違いなく見た者の心を動かした。 (藤本敏和)

 

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