2018年09月25日

「世界大学ランキングに日本の大学はたった〇校」系のネタで教育を語る意味はあるのか


いや、大した話じゃないんですけど。

たまーに、ビジネス系の記事で、日本の大学のレベルの低さを持ち出すネタの一つとして「世界大学ランキング」の話が枕に使われることがあります。世界から見ると、日本の大学はたったこれだけしかランクインしていない!!レベルが低い!!世界に目を向けろ!!的なアレですよね。

最近だと、「世界大学ランキングで、100位以内にランキングしている日本の大学はたった2校」という話を聞くことがあります。たった2校、と言われると、確かに問題な気がしますね?

ところで、当たり前の話なんですが、ランキングには当然集計している組織があって、そのランキングそれぞれの基準、傾向、性質を持っている筈です。

そして、「世界大学ランキング」というものは、実際には色んな組織が色んな基準でやっていまして、有名なものもあれば無名なものもあります。「これは有名だろう」と言い切っても誰からも文句が出なさそうなものに限っても、多分4つか5つくらいはあります。

例えば、イギリスの高等教育専門誌である「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」が行っている、「THE世界大学ランキング」。2018年分が先日発表されまして、このランキングで100位以内にランクインしている日本の大学は東大と京大だけですね。各国学者のレビュー、学生一人あたりの教員数、教員一人あたりの論文引用数なんかが重視されているランキングです。


次に、同じくイギリスの大学評価機関であるクアクアレリ・シモンズが発表している、世界大学ランキング。ちょっとややこしいんですが、上記の「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」も、2010年頃まではクアクアレリ・シモンズと共同でランキングを作っていたんですよ。集計方法とか、いろいろ批判があって分裂したんですけど。


ちなみに、このQSランキングでは、東大京大に加えて東工大、大阪大学、東北大学の3つが100位以内にランクインしています。計5つです。評価指標の内訳なんかはTHEの方とあんまり変わらないんですけどね。

The Center for World University Rankings (CWUR)がやっている「CWUR世界大学ランキング」。これは、学術研究や教育の質、卒業生の質なんかも考慮に入ったランキングでして、日本の大学がかなり高めに評価されています。東大は12位。他、京大と阪大が100位以内にランクインしています。


トムソン・ロイターがやっている「Top 100 ranking of the most innovative universities」。これ、2017年集計なんで他のランキングよりちょっと古いんですが、「科学技術への貢献度と世界経済への影響力を算出し、ランキングしたもの」だそうで、なんとトップ100内に日本の大学が8つもランクインしています。つっても、ランキング自体が相当北米に偏ったものなんですけど。日本の大学はレベルが低い!情けない!!って言いたい人たちからはあんまり引用されないですね。




ちなみに先日は、「東大がQSランキングで過去最高ランクを更新」なんて話が一部で話題になってましたね。


一方、ロイターのランキングで日本勢が軒並み後退、なんて記事もありましたけど。


いや別に、「日本の大学は言われている程レベルが低くない」なんて言いたい訳じゃないですよ。

「世界大学ランキング」に〇校しかランクインしていないから問題、みたいな論調はちょっとアホらしいなあ、というか。ランキング自体、基準もバラバラなら立ち位置もバラバラであって、場合によってはその機関の立ち位置、思想までランキングに影響したりします。一つ一つの指標を参考にするならともかくとして、総括して「日本の教育レベルの低さ、高さ」を論じるネタとしてはあんまり適してないんじゃないですかってことが言いたいんです。

要は、「世界大学ランキング」を、元ネタの明示もなしに引き合いに出して、単純に危機感を煽ったり既存の体制を批判したりする向きには、ちょっとばかり眉に唾つけて聞いた方がいいんじゃないかと。

勿論、教育の質、大学のレベルというのは大変重要な問題であって、憂慮すべき問題でもあります。基礎研究の重要性とか、大学の予算の問題とか、研究者が研究に集中できない環境だとか、大学について議論すべき課題、改善すべき問題点なんてものは山ほどあるでしょう。

ただ、それを語る時に重視するべきなのは、多分「グローバル」だとか「世界に目を向けているかどうか」とか、そういう言葉では多分ない。世界大学ランキングなんて、教育問題を語る上では正直単なるノイズであって、極論どうでもいい。

私自身は、一方では大学の教育レベルについて憂慮げな話をするくせに、もう一方では「1年から就活の許可を」とか「オリンピックボランティアの為に大学も配慮を」とか、大学の講義や研究にひとかけらの敬意も持たない要請ばかりして、くだらないノイズでますます研究者から研究の時間を奪っているあの辺の界隈をどうにかすることが、大学教育を改善する上で割と重要な一歩だったりするんじゃねえかと思っているんですが、皆さんいかがお考えでしょうか。

今日書きたいことはそれくらいです。

posted by しんざき at 07:07 | Comment(1) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本下げ的な部分だけで言ってしまえばそれ全ては自虐主義に基づいたただの話題消費パターンの範囲内でしかないってことで済むけどそれとは別に国単位の問題になると途端に他人事になる有権者意識の問題があります。

最後の文章だってそれを根っこで後押ししてるのは国民自身なわけで、勉強させてやるために税金含めてカネ出せと言う大衆、どこにいますか?どうして言うだけの自分を敬意を持ってる側に入れてるんですか?といった感じで結局返ってきちゃんですよ。
Posted by at 2018年09月25日 18:49
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