塾や家庭教師のバイトを長いことやっていた。
「こないだの期末テスト、どうだった?」
「先生、聞いてくださいよ〜数学70点だったんですよッ」
生徒からこう返ってきたとき、どんなリアクションを取るべきかは普段の出来によって決まる。
70点というのは微妙な点数である。
悪くはないが良くもない。
いつも80点とか90点を取っている人にはショックな点数だ。しかし元が30点とか40点なら、奇跡の成績になる。
「この塾に入ったおかげで、偏差値が30上がりましたッ!」
みたいなテンションの高いレビューを見ると、元が相当低いことがわかる。「はは、30上がるって、もとはいくつだったんだろうねぇ」と思われるリスクを冒してでも、このレビューを書けるのは凄い。
子どもが生まれると生活は変わるらしい。それも恐ろしく。
眠れないし自分の時間はないしイライラするしもうめちゃくちゃ大変な日々が待ち受けているらしい。
インターネットをみているとそんな印象だ。私も産前は震えていた。
だが蓋を開けてみると、私の場合はちょっと違った。むしろ生活の質が向上した気すらした。具体的に書いてみよう。
まず睡眠。
たしかに一晩ぐっすりみたいな日はたまにしかない。生後3週間くらいから、王子は夜7〜10時間眠ってくれるようになり「こりゃ楽だなあ」とウハウハしていたら、2ヶ月くらいから普通に3〜4時間おきに起きるようになった。ぬか喜びである。
12時に寝て3時に起こされる。大変つらい。だがよく考えてみたい。私はもともと、明け方4時まで平気で起きていたりする夜型人間である。
22時から2時が睡眠のゴールデンタイムだというが、この時間に眠っていることはまずなかった。目を赤くしてiPhoneを眺めていることはあっても。
明け方3時まで平気でPCや刺繍机に向かっていた日々を思うと、11時に布団に入っている今は奇跡の生活である。
次に食事。
これまた一人だと面倒くさくて、夕方まで何も食べないことがしょっちゅうあった。夜の22時、「今から居酒屋行っちゃおう〜」みたいな日もザラであった。
だが授乳中の今は王子の栄養も担っているため、とりあえず三食たべている。夕食も8時台とかに終えている。これまた奇跡の食生活である。
そして化粧。
今までは面倒くさくて(あと化粧品がもったいなくて)すっぴんで家ごもりする日も多かった。
しかし今、王子が昼間にグズったらすぐに散歩にでかけられるよう、常に朝からメイクをしている。人として当然のレベルだが私にとっては奇跡の美容意識向上である。
さらにはコミュニケーション。
「赤ちゃんと二人きりの生活」というと、狭まったイメージである。だがもともと一人家にこもっていた私の場合は逆である。
ポケモンみたいな雰囲気だけど、一応もう一人いるのだ。独り言も、話しかけてる感じになるッ!
王子をスリングに入れて散歩していると、毎日いろんな人が話しかけてくれる。有難い。こうして私の対人コミュニケーション指数は爆上がりした(当社比)
最後に、何よりも変わったのが入浴である。
ブログでなんども書いているが、私は風呂が苦手である。
風呂に入るのが面倒くさくてダラダラしていたら平気で夜中の2時とかになっている。ボタン一つで入浴済みステイタスになれる機械が発明されればいいのにとか本気で思っている。会社勤めをしていた頃からそんな人間だった。
だが今、入浴は一日の楽しみ、もはや「娯楽」と化している。
なぜか?
生後3ヶ月の、めちゃくちゃスーパーキュートな赤ん坊と一緒に入れるからである。クリームパンみたいな小さな手。ふわふわのパンみたいな足や二の腕。まさにキューピーと一緒にお風呂に入っているようなもの。
今までは湯船の中でヒマなのが苦痛だったが、王子を抱っこしながら「かわいいねぇ。ねえ、なんでそんなに可愛いの?」と鼻の下を伸ばしてデレデレしていたらあっという間である。
こうして私は風呂に入るようになった。それも嬉々として夕方に。素晴らしい変化である。
産後に怯えている人に届けたい。
これから待ち受けているもの、それはいわば「70点の生活」である。
もともと朝早起きしてスムージを飲んでヨガで体をほぐし、規則正しく素晴らしい生活をしていた90点組にはショックである。だが私のように30点だった人には奇跡を起こす。
お気づきだろうか。
「偏差値が30上がりましたッ!」
私は今、浮かれたレビューを書いている中学生男子そのものなのである。
謎のポジティブで、今夜もがんばろう。
Sweet+++ tea time
ayako
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