魔導国の日常【完結】   作:ノイラーテム
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外伝。死者が棲む邦、一話

●シャルティアの為に

「アインズ様がお出でになる必要はありません」

「そうでありんす。アインズ様は玉座の間でお待ちいただければ!」

 ナザリックの玉座へ戻った時、珍しくアルベドとシャルティアが二人して詰め寄っていた。

 あまりの剣幕にその場に居合わせたデミウルゴスやマーレ達も驚いている。

 

「相手はアンデッドを操るアンデッドだとか。タレントであるなど万が一のことを考えれば…」

「二人の気持ちは嬉しいがな。幾つかの理由で却下する」

 アインズは内心で驚きながらも可能な限り冷静を装った。

 

「一つ目の理由は私が最もアンデッドの形態に詳しいということだ。該当する能力を持った上級モンスターを私以上に知っているか?」

「そ、それは…」

 真祖であるシャルティアと言えど知って居るのは吸血鬼系統だけだ。

 アンデッドを支配するアンデッドなど伯爵級以上…バンパイア・ロードや自分と同じ真祖が似たようなことが出来るという認識でしかない。

 アインズのようなオーバーロードは別格として、それほど知っている訳でもないのだ。

 

「ですが知識を授けていただければ可能かと!」

「あるいは守護者全員で討伐すると言う手もあります。魔導国として他者を操る者を許せぬと言うスタンスであれば、何の問題もないはず」

 なお、何故にこれほどの頑強な抵抗があるのか?

 それはきっと、地下に棲むアンデッドの親玉が女性タイプのアンデッドであるとの情報が影響しているのかもしれない。

 

 アインズ自ら攻め入るということは口説きに行くという判断が出来てしまうし、万が一に操られればすなわちNTRである。

 ペロロンチーノであればむしろOKと言いそうな気もするが、人の性癖はあまり気にしないでおこう。

 

「それこそ万一の時は取り返しがつかん。だが私ならばモモンとしての顔と魔導王としての顔で二度試せる」

 …もちろん対アンデッド探知対策は万全で行くぞ?

 そう言ってしまえば二人には抗いようが無い。

 もともと大きく口出せないのだし、理論的にも筋が通っている。

 

 モモンとして行けば冒険者を壁代わりに出来る上、人間相手だと舐めてかかる可能性がある。

 更にモモンとして敗北したとしても、アインズが自ら乗り出したということならば名声の塗り替えが可能なのだ。

 一度目が重要な他のプレイヤーと違い、モモンガ時代は二度目を前提とした情報収集で大幅な勝率を持って居たことも大きい。

 

 どう考えてもアインズ自らが最適、そういう空気が流れた所で仲裁が入った。

「二人ともそこまでにしたらどうです? それにシャルティア、これは君の為でもある」

「わ、わたくしの為でありんすか?」

(ん、どういうことだ?)

 デミウルゴスの仲裁はありがたかったが、いまいちアインズには理解でき無かった。

 自分としては政務なんかより冒険がしたいなーというのが本心であり、理由など話題を切り出す前から用意して居ただけだ。

 

 さっぱり思いつかないが、シャルティアが首を傾げたのでこれ幸いと見届けることにする。

 

「地下の女アンデッドが銀髪の吸血鬼を操った黒幕というのはどうです? 色々ストーリーが想像できて面白いとは想いませんか?」

「あっ…」

「ちっ」

 デミウルゴスが指で眼鏡を修正しながら説明すると、二人の女はそれぞれに言葉を失った。

 

「もとより吸血鬼はむやみに人に害為す気はなかった。あるいは助けられた以上は魔導国と契約する…など適当な噂で調整できるでしょう」

「まさかアインズ様はわたくしの名誉の為…いえ、魔導国の運営へ参加を許可する為に…」

 デミウルゴスの説明を聞いてシャルティアは感極まったのか涙を浮かべる。

 アインズはいつもながらアンデッドなのに器用だなーとか想いつつ、指でそっと涙を拭ってやった。

 

「あ、アインズ様~」

「ふふ…。流石はデミウルゴス。全てでこそないが見抜かれてしまったな」

「御謙遜を。私も最初はモモンと冒険者ギルドの貸し借りまで利用してしまうとは思いもしませんでした」

 鼻も出て来たのかハンカチを取り出すシャルティアの頭を撫でながら、アインズは『え、まだあるの?』と驚いた。

 口から出まかせで全てではないと言っただけなのに…やはりこれからは、余計な知ったかぶりは控えるべきかもしれない。

 

「シャルティアやマーレにも説明してあげなさい。判り易く出来るだけ簡単にな」

「はっ! 至らぬところは御修正いただければ幸いです」」

 しないって…そう思いながらもアインズは鷹揚に頷いてその場を誤魔化した。

 

「モモンはエ・ランテル時代の冒険者ギルドに留まる条件として、『二人の吸血鬼』に関する情報と討伐に優先権を与える様にと条件を付けました」

 二人居るのだから、そっくりな吸血鬼がもう一人居ても良い。

 実は蘇生アイテムで生きていたとかでも良いのだが、どちらにせよシャルティアが表に出ても問題は無いと言うことだ。

 

「ぼ、冒険者ギルドは吸収したのですし、条件を守らなくても良いのではないのでしょうか?」

「もちろんその通りだとも。だけど考えてみると良い。守らない場合と守った場合の差を」

 マーレが首を傾げるとデミウルゴスは教師が生徒を見る様な目で頷いた。

 これが人間ならば別の反応かもしれないが、彼は仲間には優しい男だ。

 

「必要以上に冒険者の取り決めに口を出さないから、人が、来易いということですか?」

「それもあるが、吸収した組織の貸し借りを代行する懐の深さを見せつけることが出来る。つまり魔導国は組み入れた国家や組織の負債を踏み倒さずに引き継ぐということだ」

「どこの大商人や小国も、安心して魔導国の傘下に収まれるということよね」

 約束を守らない相手に誰が金を貸し、奪われると判っている鉱山や工場に投資をするだろうか?

 また小国や貴族領が吸収合併される時に、他所の国だから知らんと突っぱねれば赤字を出すだけだ。だから攻められた国の大商人は、貸し倒れを防ぐために国に資金を提供するのである。

 

「これらの事項を様々な項目で実行すれば良い。そうすれば傾きかけた国の商家はこぞって魔導国に主権を委ねるだろうね」

「最初は赤字になるけど、や、約束を守る素晴らしい国だからみんな魔導国に参加するということですね」

(な、なるほどな。商売の話になってくれて助かった)

 更にカッツエ平原の事を責任もって面倒を見ると口にして、実質的に組み入れることも出来るだろう…。

 アインズはそんなデミウルゴスとマーレの会話を聞きながら、ようやく頷くことが出来た。

 この話を人間の文官が聞いていたら侵略準備だと卒倒するかもしれないが、ここはナザリックなので実にほのぼのしている。

 

「流石はデミウルゴスだな。しかし私も全てを計画している訳では無いぞ。そうなったら良いな…と思っていただけだ」

「いいえ。僅か一手、それも他国から聞いた情報を元にそれだけのことを見通せる御方などアインズ様の他を置いて知りませぬ」

 知ったかぶりをするのも怖くなって来たので、謙遜して見せるが尊敬返しをされてしまった。

 このストレスを発散しようと、アインズは冒険に打ちこむことにしたのである。

 

●幽霊船と陽動作戦

 それから暫くして、魔導王より一つの布告が為された。

『自由意志こそは全ての者に許された最後の尊厳!』

 集められた上位冒険者や魔導国に協力する騎士や魔導く士官たち。

 彼らの前で魔導国国王の名において、一つの命題が下る。

 

『ここにアンデッドを支配するアンデッドの討伐を、クエストとしてコールするものである!』

 クエストのコール。

 古来より力持つ王や人間に好意的な龍王などが発し、成し遂げた者に対して大きな褒章を約束するものである。

 魔を払う聖剣や生命を救う聖杯などの探索がそれに当たるだろう。

 

「これは千載一隅のチャンスね。…これを成し遂げれば私に掛った呪いなど簡単に解いてもらえるはず」

 ある女騎士は切なる悲願を心に秘める。

 

「ここで任務を無事に終えれば智慧を借りれるし、功績次第であの二人だって…」

 ある少女は悲しいほどに薄い希望に心を寄せる。

 

 叶えられない思いを持つ二人が出逢ったのは、さほどおかしな話でもないだろう。

 共に帝国から派遣されたという立場であり、情報収集の有効性を冒険者ギルドが訴えた事も影響した。

 

「魔導王陛下がおっしゃるには、地上のアンデッドは強制的な支配下にある。撃退するのは構わないが無理に追い詰めて倒さずとも良いと断言された」

 最初に口火を切ったのは、冒険者ギルドの長であるプルトン・アインザック。

 壇上に建てられた浮遊板(フローティングボード)にスクロールを張りつける。

「現時点では元は人間に友好的だった幽霊船と、そうではなかった幽体群が確認されているそうだ。情報を持っているものは高く買おう」

 遭遇した者や噂を聞いた者たちの情報を総合し。

 仮定で討伐難度150、足止めなら120を下回るのではないかと設定される。

 

 ここで注目を集めたのはまだ若い金髪の少女だ。

 華奢な体で杖を持っていることから、マジックユーザーと目される。

 

「帝国魔導官のアルシェ・イーブ・リリッツ・フォーサイトです。初期情報は御命です」

「幽霊船の目撃範囲か。既に情報を集めていたということは命令を下されたのは…」

 アルシェと名乗った少女はアインザックの推測に頷いた。

 既に帝国経由で魔導王の命令が降っていたということだ。冒険者にとって一番重要な情報を真っ先に集めていると言うのはどれほど先を読んでいるのだろうか。

 

「その為、報酬に関しては追加情報に対して『飛ばし』をお願いします」

「良かろう。功績が蓄積された暁には、許可された範囲で願いを叶えていただく」

 魔導国での報酬には三つの形態がある。

 通常の資金の他、一定ランクに達すると武具を選択報酬に選べる下賜、そして通常では与えられない願いを叶えるために積みあげる『報酬飛ばし』と呼ばれる貯蓄である。

 

 普通の魔法医には見離された病を治して欲しい、あるいはかつて失われた四肢を元に戻して欲しいなど。

 そういった目的であったり、一点物の魔法の品などを願う為に用いられている。

 飛ばしを選ぶのは目先の資金に難がないものであると同時に、このまま魔導国の為に働く意思表示でもあるので、上に立つアインザックなどは推奨している。

 もっとも、彼の友人であるラケシルのように、他では手に入らないマジックアイテムが見たいからという人間も居るのだが。

 

(ぶっちゃけ即金の方が困るんだよな。マジックアイテムや治癒魔法ならそれほど困らないし…)

 モモンとして参加して居るアインズは、冒頭で演説したパンドラズアクターに胃が痛い思いをしていた。

 まさかストレスを解消しに来てストレスを受けるとは思わなかったので、そろそろ事態を進展させる新情報が欲しかった所ではある。

 

「Aが幽霊船が最初に見掛けられた範囲です。Bがこちらの雇ったワーカーたちに気が付いた後の周回範囲になります」

(地下遺跡への襲撃を警戒して守る為に範囲を絞ったのか、それとも引き離す為に嘘の周回をしているのか…)

 加点はプラス一点というところか?

 アインズは話を聞きながら、まだまだ絞られて無い情報に可もなく不可も無くという印象を受けた。

 これで後は何処に行けば良いと判って居ればより良かったし、判って居なくとも判明させる提案が行えて居れば優秀だと思ったかもしれない。

 

「質問するがBを除いた範囲…仮にこれをCとするが、BとCのどちらかに青銅の巨人は見受けられたか? 地下から進んだ者の話なんだが」

「ブロンズゴーレムですか? 生憎と目撃例はありませんが察する事は可能です」

 アインズが墓杜の村で聞いた情報を提示すると、アルシェは地図にピンを幾つか突き刺した。

 一か所に断定するには多いが、それらは全てBに収まる範囲である。

「これは全てワーカーに負傷者ないし犠牲が出た場所です。何れも戦闘力だけならミスリル級ですのでゴーレムが居るとしたらBかと」

 遺跡ないし入り口か何かの痕跡を見つけ、ワーカーが報酬目当てに先走った可能性があると付け加える。

 冒険者と違って信用置けない分が微妙なのだが、ミスリル級を排除するとなればかなりの難敵だ。

 

「ゴーレムではなく幽霊船や幽体群の可能性もあるが…。どこかに入口があるならば足止め出来るかもしれんな」

「そうは言うが幽体群は倒すのも足止めするのも難しいぞ? 連中は実体が無い」

 アインザックの言葉にラケシルが難色を示す。

 何しろ実体が無い相手には有効打が発生させ難い。

 それこそ攻撃魔法を浴びせても、属性や形態によっては簡単にすり抜けてしまうのだ。

 

「一応だが魔導王より切り札を預かっているな。数に限りがあるから分散させる訳にもいかんが」

「も、モモン殿それはまさか…」

 アインズがテーブルの上に置いたのは、輝く小さな水晶が三つ。

 これの大ぶりなやつを見たことがあるラケシルとアインザックは、この水晶を複数個所持していたと言う魔導王の財力に目を見張る。

「そうだ。魔封じの水晶の下位に当たるものだ。…ラケシル、以前のやつとの差が判るか?」

「魔法を使えば直ぐなんだが…。まあ、さっきの子じゃないが想像できなくはない」

 良く見るとサイズの他に輝きがくすんで見える。

 明らかに劣化互換品と言うべきものであり、込められた力の差を感じてしまう。

 

「おそらくは低位の魔法しか込められない。あるいは…魔法強化などが一切掛けられないという辺りじゃないか?」

「正解だ。魔法の性質や拡大レベルが段違いだが…まあこの場はコレで十分だろう」

 中に込められている魔法は幽体系に効果のあるアストラル・スマイト。

 強大な幽体モンスターが出ると知った時点で、魔導王が用意したと言う。

 

 漆黒の英雄モモンが吸血鬼ホニョペニョコを倒した時のように、広範囲でもなければ超絶魔法でもない。

 しかし、相手に有効打を与えると言う意味では十分な力を持って居ると言う。

 

(魔封じの水晶を使った時の…嘘の情報がバレても困るしな。この場は複数種類があると説明だけすれば良い)

 アインズが用事の一つを片付けて安心した所、偶に見る人間のメイド…帝国騎士の女が手を上げている。

 これから作戦をどうするかと思っていた所なので丁度良い。

 

「帝国騎士のレイナース・ロックブルズですわ。神聖系魔法や魔法武器などを持つ者で固めた班を複数構成し、同時に陽動攻撃というのはいかがでしょう?」

「それならば最低限の攻撃力は保持できるし、この水晶は保険として使う事も出来るな」

 レイナースの提案に対して、魔封じの水晶を消耗したくないラケシルが飛び付いた。

 幽体攻撃手段を持たない班が挑むのは無謀であるし、持った班が追加攻撃手段として保持するのは有効な手段でもある。

 アインザックは呆れもしたが、効果的な作戦なので反対はしなかった。

 

「初回は威力偵察を前提として、入口の確定か守護モンスターの確定のどちらかまでを。幽体攻撃手段の無い班は、他の地域や負傷者の回収班に当てます」

「相手を知り戦えばおのずと勝利する…だったか。悪くない案だと思う」

 レイナースの作戦に対し、個体情報を重視するアインズが頷いたことで作戦は次第に決まって行った。

 

●門を守るは青銅巨人、攻め寄せるは大胸筋

 おおよその作戦が決まったところで、アインザックたち首脳陣やモックナックら上位冒険者らが少し難しい顔をした。

 アルシェやレイナースの話以外にも精力的に情報を集めたのだが、戦力が足りないのだ。

 

「地下を行ける所まで行ったというメンバーは?」

「敵が逃げ出さない様に見張ってもらう必要があるだろう。とすれば、少し手が足りないかもしれないな」

 魔導国が供給するマジックアイテムの数を知っているがゆえに、一時的に貸与するという話はしていない。

 集めた情報を追加しても、神聖魔法以外に闘気魔法も効果があるとか、ワイデンマジックで拡大できるならば攻撃魔法も有効な場合があるという程度だ。

 到底、怪しいとされた場所を全て調べるには足りないのだ。

 

「難しいかもしれんが、王都や帝都の冒険者ギルドに依頼を出すのはどうだ?」

「蒼の薔薇と朱の雫か? 受けてくれたとして、今回の最低条件の方が問題だぞ」

 御題目として、友好的なアンデッドならば敵対しない。

 今回はそんなルールがあり、戦いが避けられないなら倒すが無理には倒さないことを前提にしていた。ミスリル級までならむしろ足止めで良いから助かったと言うだろうが、本気で倒せるアダマンタイト級に要請するのは問題が無いだろうか?

 

 これが普通の依頼ならば何の問題は無いが、今回に限って御題目を大義名分にしているのだ。

 戦力をかき集めて討伐するのは可能かもしれないが、それでは魔導国として却下されてしまう可能性がある。

 

 一同が頭を悩ませた辺りで、解放されっ放しの扉を叩く音が聞こえた。

 ゴツンゴツンと鈍い音がした辺りを眺めると、分厚い胸板を持つ漢が立っているではないか。

 

「俺ともう一人だけなら構わねえぜ」

「あの漢はガガーラン!? まさか、蒼の薔薇が…」

 信じられないと言う表情で何人かが目を見開いた。

 だがあの大胸筋は蒼の薔薇に所属するガガ-ランに間違いが無い。

「悪いが全員じゃないけどな。リハビリがてらに協力しても良いってことさ」

「鍛え直してるけど、まだまだ」

 そう言えば、と王都での顛末を思い出す。

 彼女らは二名がヤルダバオトに殺されており、までかつての全力を取り戻して居ないのだと言う。

 

「だが、アダマンタイトともあろうものがアンデッドを見逃しても良いのかね?」

「実のところを言うとな。俺も『船長』には世話になったことがあってよ」

 ガガーランの言葉を聞いて、反応した者がいる。

「…もしやティアーさんが言っていた戦力のアテとは貴女の事ですか?」

「あの呪紋師か。そう言えばそんな事を言っていたな。アテの他に何チームか居れば…と」

「そういうこった。まあ俺らにも事情があって、別に亜人やアンデッドだからと言って問答無用で倒すわけじゃないのさ」

 キュクー・ズーズーが交渉した時の事を思い出すと、その後に参加したアインズも思い出して居た。

 その時は戦力のアテとだけしか聞いて居なかったし、そもそも自分達だけで解決するつもりだったので詳しくは聞かなかったのだ。

 なお、後ろにいた忍者が『呼んだ?』と自分の名前がティアであることを主張していたが、無視しておくことにする。

 

「しかし…判らんな。それならば何故、王都で蟲のメイドと無理に戦ったんだ?」

「犯罪者とはいえ目の前でバリボリと人の手を食われたら見逃せやしないさ」

 あまり思い出したくない過去とのことで渋面ではあったが、面倒見は良い方なのだろう。

 思わず以前と同じ質問をしてしまったアインズに、その時に居なかったガガーランは大真面目に答えた。

 

「そうか。それでも早計だったとは思うがあえて言うまい。その時の雰囲気もあるからな」

「亜人も沢山やって来ている魔導国に住んでるならそう思うのかもな。まあ、俺も亜人の村だったら少しは遠慮したがね」

 状況を聞いてしまったアインズは、エントマの失点を確認したことで僅かに怒りが遠ざかったような気がした。

 とはいえエントマが殺されかけたことには変わりない。

 機会があれば勝負を挑むことに変わりは無いとした上で、機会が無ければそのままでいいかと棚上げする事にした。

 

「ティアの足ならもう一か所回れないか?」

「ガガーランは変身できるから平気で言う。普通の人間には難しいことを覚えたほうがいい。…私には出来るけど」

 いつもの冗談に辟易しつつもガガーランは手を振って冗談はよせと止めさせた。

「俺は人間だっつーに。ともあれコレで二か所は行けるぜ」

「ならばもう一か所はこちらで都合しよう。位置を入れ換えるアイテムを使えば私とナーベが入れ替わることが出来る」

 その後にナーベが飛行魔法で合流すれば良いと付け足した。

 このことで最低限の場所を抑えることが出来る。

 実際に行動に移すまでに、ワーカーの情報を精査してもう少し絞れば良いだろう。

 

「情報の精査とチームの調整が付き次第に作戦に移るぞ」

「「応!」」

 こうして地下帝国の攻略作戦が始まったのである。




 と言う訳で、遅れる予定でしたが早起きしてしまったのと筆が滑ったので本日の公開予定です。
何も無ければ昼には予約公開されている筈。

0A:墓杜の村で最低限の情報を収集。
0B:ワーカーを使って幽霊船の行動半径を調査

1:クエスト発生
2:どうするかの会議(ナザリック)
3:どうするかの会議(魔導国)
4:ガガーラン襲来
5:威力偵察

6:陽動作戦予定
7:青銅巨人・幽霊船・幽体群の位置を確認
8A:幽霊船を抑えつつ他を撃破、地下へ侵入する
8B:アゼルシア山脈からの地下ルートは、墓杜の村の人々+@が抑える
 と言う感じの計画が立ちました。

次回…十二月十日前後に6からスタートと言う感じになる予定です。







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