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【社会】

「派遣3年期限」法改正から3年 雇い止め通告 増加懸念

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 派遣労働者が同じ職場で働ける期間を最長三年とした改正労働者派遣法が今月末で施行から三年となり、「雇い止め」を通告されるケースが出始めている。派遣労働者の正社員化を促す狙いで上限を設け、人材派遣会社に「雇用安定措置」を義務付けたが、派遣先企業は三年ごとに別の労働者に入れ替えることが可能なためだ。既に労働組合には多くの相談が寄せられているといい、今後も増える懸念が出ている。

 「『法律で決められているから』と言われた。仕事量が多くても、時には昼ご飯も食べずに頑張ってきたのに…」。東京都内の金融機関で働く派遣労働者の女性(40)は涙を流した。女性は十五年ほど前からこの金融機関でパソコンへのデータ入力など事務作業を担ってきたが、法改正後の契約に基づき、三年となる来年一月末での雇い止めをこの夏通告された。

 システム改修の影響もあり、以前ほど入力作業に人手を割かないようになった。「私はシステムもない時代から苦労して働いてきた。『派遣だから切り捨てやすいんだな』と思った」と悔しさをにじませる。改正法では、派遣で働く人が希望すれば正社員となれるよう三年に達したら派遣先企業に直接雇用を依頼することを派遣会社に義務付けた。一方で、派遣先には直接雇用の義務はなく、派遣先の中には安価な労働力として別の派遣労働者と入れ替える企業も少なくないのが実情だ。

 直接雇用を断られた場合、派遣会社は別の仕事を紹介するか、自社で無期雇用するなどしなければならない。しかし、「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は、派遣会社は仕事が減った時を懸念して無期雇用を避けていると指摘。「雇用安定措置の義務を果たしていないと思われる派遣会社もある」という。

 市民団体「非正規労働者の権利実現全国会議」が昨年九月からネット上で実施したアンケートには「当初は派遣先も直接雇用に前向きだったが、派遣会社が紹介料を要求したことで考えを変えた」「派遣会社が直接雇用を打診してくれたが、難色を示されて派遣切りに遭いそうだ」といった相談が寄せられた。関根書記長は「真に雇用が安定する法的な枠組みを作るべきだ」と話し、現行法の不備を訴えている。

<労働者派遣> 人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で指示を受けて働く仕組み。雇う会社と仕事を命じる企業が違うため「間接雇用」と呼ばれる。従来、企業の派遣受け入れ期間は秘書や通訳といった専門業務を除く一般業務で最長3年だったが、2015年の改正労働者派遣法の施行でこの区分をなくし、一律のルールで期間制限を撤廃。3年ごとに別の派遣労働者と入れ替えることなどを条件に、同じ職場で派遣労働者を使い続けられるようになった。安倍政権が進める労働分野の規制緩和の一環。企業は業務量に応じて人数を調整しやすく、労働者には雇い止めの不安が付きまとう。厚生労働省によると、派遣労働者は昨年6月時点で約156万人。

 

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