プロダクトマネージャーに必要な資質って何ですか? 元グーグルのPM対談

プロダクトマネージャー(PM)ってどんな仕事? プロジェクトマネージャーと何が違って、普段どんなことを考えながら仕事してるの?——日本でも徐々に認知度が高まってきた「プロダクトマネージャー」にフォーカスし、そんな疑問に答える「Japan Product Manager Conference 2016」が10月24日、25日の2日間にわたって都内で開催された。内外のさまざまな企業で活躍しているPMが壇上に立ち、自らの試行錯誤や経験、時には失敗を踏まえ、PMという仕事の難しさと醍醐味を紹介した。

そのセッションの一つ「グローバル企業におけるプロダクトマネージメント」では、ナイアンティックの河合敬一氏と、カンファレンスの実行委員でIncrementsでQiitaのPMを務める及川卓也氏が登場。「僕がPMとしてグーグルに入ったときの面接を担当したのが及川さん」(河合氏)という関係にある二人が、会場からの質問を交えつつ、率直にPMのあり方について語った。

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ナイアンティックと言えば、イングレス、そしてポケモンGOというゲームを立て続けに公開し、一躍注目を集めた時の企業だ。

ただ河合氏は「ゲーム会社を作りたくて独立したという気持ちは、僕らにはあまりありません。会社の標語は『Adventures on foot』という3語、つまり足で冒険するんだということで、できるだけ皆さんを日常生活の中の冒険に誘いたいと思っています。実は発見って、日常生活の中にたくさん埋まっているんです。それに気付いて、ちょっと面白いなって思ってもらえないかな、それをテクノロジの力で後押しできないかなと。そこにある価値がナイアンティックという会社の中心です」という。

プロダクトマネージャーは、要はものを決める人

河合:会社によってPMはいろんな形があると思いますが、シリコンバレーでは、要は「ものを決める人」という共通の理解があります。「これ、どうしようかな」と悩んだときにとりあえず伝える人。そして、何か言ったら怒らずに決めてくれる人。エンジニアが「PMがこれでいいって言いました」って言える、そういう、「ちょうどいい人」という役割なんですよね。

ただ、次に実装するフィーチャーをどっちにしようとか、判断に悩むときもけっこうあります。そういうときには「ガイド」の存在が大きい役割を果たします。うちの場合、「Adventures on foot」というビジョンに沿っているか、人が外に出るきっかけになるか、新しい発見になるか……という社内共通の軸があるので、それに合わせて判断できます。逆に、そこがぶれてしまうと気分で判断を下すことになったり、「社長に聞かないと分かりません」ってなってしまう。ですから、組織やプロダクトで共通の価値観を持つことがけっこう大事です。これがあれば、PMが複数いても判断がぶれないし、みんな自律的に判断できるようになって、「これどうしようか」って言われるのも減ってきます。

及川:会社を立ち上げたときには、PMがファウンダー陣の中にいるはずです。その人の思いをちゃんと受け取って、プロダクトやサービスを作っていくのが次のPMの仕事ですよね。その部分に関して、ファウンダーなりCEOとしっかり共通理解ができていれば、「サービス価値を貶めないで、事業サイドからのいろんなリクエストにどのくらい合わせるべきか」というよくある質問への答えも出てくると思います。

でも、複数のタスクやイシューがあったとき、優先順位はどのように決定していますか? 当然トレードオフがあると思いますが。

河合:これは永遠のテーマで……ずっと試行錯誤してます。最後はカンです。データを分析して出てくるものもありますが、出てこないものもありますよね。例えばポケモンGOでいうと、次にどの機能を追加するのか。同時にはできないものをどちらからやるか、すごく難しいです。時にはエンジニアリングのコストやスケジュールといった外的な要因も見て、それらを並べて、「うーん、こっちだよね」という話をするしかない。機能の追加と、今出ている問題の改善とのトレードオフもけっこう大変です。

同じことをやっていたら、プロダクトマネージャーとしては負け

及川:グーグルのPMっていうと、何かすごい方法論やプロセスがあると思われがちですが、ぶっちゃけていうと、全然そんなことなかったですよね。

河合:なかったですね、人に依存していたと思います。PMに期待される役割像はありますが、それをどう実現するか、表現は人によっていろいろだと思います。僕がGoogle Mapsをやったときは、ストリートビューの撮影用の車を借りてくるところから始めて、オペレーションからパートナーシップ、ストラテジーまで何でもやってました。一方でシリコンバレーには、ひたすら地図の配色を突き詰めたり、次のフィーチャーを考えている人もいます。求められる役割とプロジェクトのフィットによるところもあるし、PMって幅が狭いようにみえて、けっこういろいろありますね。

及川:プロダクトによっても全然違いますよね。僕がChromeをやっていたときは、開発者向けだから、すごくテクニカルなところが求められました。一方、Google Newsのときは、PMは4人くらいいたけれど、うち一人はニューヨークにいて、ひたすら出版社、パブリッシャーとの連携だけやっていました。チームの中でどんな役割が必要かによっても違いますね。

河合:ナイアンティックはスタートアップだけに、とにかく目の前のプロダクトに集中できる環境ですが、大きい組織になってくると、今のプロダクトだけでなく、1年先、2年先を見据えた大きな仕事をやっている人もいます。

及川:グーグルは大きいから、他にも何人かPMがいたり、データを見るときの環境がかなり整備されているから、すごく楽でしたね。さっき控え室では、二人とも今の仕事で久しぶりにSQLコマンドをガチで叩きまくっているよね、って話をしてました。これは大変だけれど、面白いところでもある。

Q:いまは一人でPMの業務に就いていますが、サービスや組織が大きくなるにつれて、自分一人では抑えきれない領域が出てくるかもしれません。そのとき、どのように役割分担すべきかを教えてください。
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河合:PMの仕事って、「その他全部」ですよね。だから、その他全部がいっぱいになってきたらどうしようっていう話ですよね。キャパシティを増やすにはやり方は二つあって、仕組みを作って誰かにやってもらうか、PMを増やすしかないです。

この四半期と次の四半期で同じことをやっていたら負けです。僕も言われてきたんですが、僕らは「チェンジエージェント」であり、変化の仕掛けを作るのが仕事。プロジェクトに入っていって、問題を聞いて、要件を立てて、直す。で、回るようになったら「じゃ、よろしく」といって次に行かなきゃいけない。定常的なルーチンのタスクになったらそれは離して、次の仕事に行かないと負けです。これが、その後も続く仕組みを作るPMの仕事だし、同じことをやってちゃダメ。

でも、それでも回らなくなることもあるので、そうしたらPMをどう組織にするか、ということになります。ユーザーに見えるフロントとインフラに近いバックで分けるやり方もありますし、フィーチャーで分けることもありますよね。プロダクトとユーザーの種類で分けるのがいいと思います。

プロダクトマネージャーには強い奥歯と厚い面の皮が必要

及川:Twitterでいただいた質問は「ポケモンGO」は、「最初の展示会ではネガティブな反応を受けたと聞いたんですが、そこからどうやってローンチまで持って行ったのか」だそうです。

河合:そうですね、フィールドテストでは結構こてんぱんにされましたね。僕らとしては、修正できるところはした上で、とにかく出して、良くしていくというプロセスを回さないと、最終的なユーザーの反応は分からないだろうからと、最後はエイヤ、と見切って出しました。パッケージソフトじゃないので、出して終わりじゃないんですよね。ですから、出してからもずっと、ユーザーの意見を聞いて直すサイクルをどれだけ早く回せるか、やってみようと。

及川:freeeの佐々木さんの講演でも、「最初にプロダクトを出したとき、ユーザーからのフィードバックがあまりよくなかったとき、開発者のモチベーションが下がるんじゃないですか」という質問があったんですが、同じようなことはありませんでしたか?

河合:ちゃんと凹むのって大事ですよね(笑)。PMには強い奥歯と厚い面の皮が必要だとよく言っているんですが、言われたことは笑顔で聞く。ユーザーさんが言ってくれることは宝物で、そこには必ず改善のヒントがありますから。ただ、ぐっと来るのも事実。だから、熱いお風呂にゆっくり入るとか、それをうまくプロセスする方法は持った方がいいと思います。

それから、エンジニアをどこまで守るかはみんな悩むんですよね。ユーザーの言うことをがちんとぶつけてエンジニアに目を覚ましてほしい場合もありますが、あんまり言ってばかりだと「俺たち、つまんないものを作ってるんじゃないか」って悪い方にいっちゃう。そこのバランスは大事です。

ただ、僕たちはユーザーの代弁者なんだっていう思いは、PMなら誰しも抱いていると思います。ですがユーザーの代弁者というのも、一部のやかましい人だけが大声でいっている場合と、多くの人が軽く嫌だと思っている場合では、実は後者の方が大事です。でも、大きい声やネガティブな声に引きずられやすいので、全体のバランスは見るようにしています。

及川:声なき声を拾うってことですが、けっこう難しいですよね。グーグルの場合は、あまりユーザーの声を拾わないで、データを見て、そこにある、声を出さないユーザーの声をとっていましたね。

それから、PMって技術力がどのくらいいりますか、という質問もよく聞かれます。もちろん開発力があるほうがいいとは思うけれど、僕は、ちゃんと技術の会話ができて、エンジニアからリスペクトされる存在であることが大事だと思います。河合さんはガチに技術を深掘りするタイプではないけれど、そこがうまくできていたように思います。そのコツは?

河合:知ったかぶりも、最後までばれなければ知ったかぶりにはなりませんから(笑)。聞きながらひたすら「うんうん、こーいうことかな?」っていうのが上手かどうかですよね。もちろん、最低でもある程度のことは分かっていないといけませんから、そこは教えてもらいながら。あとは、この人がドーナツが好きかな、ビールが好きかな、と。

及川:焼き肉に連れて行くのがPMのタスクの一つとか(笑)

河合:PMの責任って、プロダクトを作って、世に出して、愛されて、使ってもらうことです。それに必要なリソースがないなら、ないものはしょうがないから、どこかからかき集めてくるしかない。それも含めて自分の仕事ですから、もし焼き肉をおごったらコード書いてくれるかもしれないならおごります。そういうのはよくありました。

及川:河合さんはそういうの、すごくうまいんですよね。

エンジニアに納得感を持ってもらうことが重要

Q:楽天の齋藤満さんのお話ではかなりの部分をPMが詰めるアプローチでした。一方、Incrementsの海野弘成さんは、開発者を巻き込むことに重点を置いているように思いました。仕様に関して、PMとエンジニアの関係はどうあるべきでしょうか。

河合:この場は「Product Manager Conference」ですからね、秘密を教えちゃいます。ボトムアップの見かけは大変重要です。

PMとしては、エンジニアが同じ思いを持っているとすごくいい。言われて作らされている感をもたれるとやめちゃいますし。ですから、いかにエンジニアに「これがやりたかったんだよね?」「うん、これがやりたかった」と思ってもらうかが、PMの腕の見せ所です。

その上でどこまでこだわるか、どこまで細かくやるかは、PMによって幅があります。シリコンバレーでも、スティーブ・ジョブスのようにとことんこだわる方がいい、いやそれだと作ってくれる奴がいなくなる、と意見が分かれるところですが、僕は、そこに集まったチームでベストのパフォーマンスが出せればいいと思っていて、自分のこだわりをあまり持たないようにしています。もし、エンジニア二人でどっちがいいかぶつかって決まらないときは、僕が入ってとにかく決める。どんなディシジョンでもノーディシジョンよりはいいですから。

まとめると、いかに「自分ごと」にしてもらって、プロダクトの成功にチームがコミットできる環境を作ることが大事です。あとはPMのキャラクター次第ですね。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA及川:PMって、全員に納得感を持って決定を受け入れてもらうため、ファシリテーション能力がけっこう必要ですよね。既にいろんなところで話しているのでバレちゃってるテクニックですが、自分にこうしたい、という方向があっても、自分では言わずに相手の口から言わせるようにするんです。そうすると、相手は自分が決めたかのように、納得感を持って仕事を進めてくれる。

このテクニックで良いところは、もし自分が間違っていたときには、相手からもっと良い意見が出てくるんですね。自分では99%こうやろうと決めていたとしても、1%のそれよりもいい意見を拾える可能性があるんです。なので、最終的にはトップダウンで決めるかもしれませんが、ある程度ボトムアップの仕組みを取り入れるのは非常に重要です。でも、時には相手にミエミエってこともありますが(笑)

プロダクトマネージャーを目指すなら、読むよりやってみる

河合:PMの評価って、みんなに信頼されて、判断する権限を渡せてもらえたかどうかが一番大事ですよね。その次に大事なのは、プロダクトやサービスがちゃんとシップ(出荷)したかどうかです。で、出たものは皆に使ってもらえたか、愛されているかと。なので、製品の評価とPMの評価は近付くところがある。

及川:スキルに関して言うと、ソフトウェアエンジニアならば、プログラム言語とかデザインパターンとか、ある程度学ぶべきものはこれ、というのがあるじゃないですか。デザイナーもそうです。でもPMは、「このスキルが必要です」と分かりやすいものを提示できないのが難しいところですね。

河合:要は、問題を解決できるかどうかですよね。で、問題の解決の仕方は人によって違うし、そのためのスキルもいっぱいあります。僕の場合は、特に外国で、第一言語ではない英語で皆に聞いてもらい、理解してもらい、納得感のいく判断をしてもらうためにも、ロジカルに、データを使って説得するのを大事にしていました。でも人によっては「こいつの言うことだったら、ま、いいか」って感情的にやるのもいい。なので、データが全てではありません。

Q:PMを目指す上で、一番効果があったことは?

河合:僕自身はPMがどんなものかよく分からないままなってしまったところもあり、いろんな失敗もありました。けれど、その失敗を許してもらえる環境に行けたことが一番大きいかったように思いますし、その意味で、グーグルには感謝しています。まずは、読むよりやってみる。オープンソースのプロジェクトでも何でも、プロジェクトがあれば積極的にやってみるのが一番だと思います。

今回のカンファレンスで、PMという仕事がこんなに認知されていることが分かってうれしく思いますが、PMがPMとして活躍するには、本人のスキルや能力だけでなく、「PMってこういうものだ」と理解してもらえる環境も大事だと思います。PM以外の人が、PMとは何かを分かってくれないと活躍できないと思うので、そのための環境作りをいろんなところで一緒にやっていければと思います。

あきらめたくなったら、自分を信じてあきらめる

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Ask the Speakerコーナーに長蛇の列ができたことから、急遽ランチタイムが質疑応答のランチセッションに変更となった。そこでもさらに興味深い話が飛び出した。

Q:日本からの要望を通すポイントは?

河合:外資系PMあるある、ですね。

及川:外資系っていうと、アメリカに魂を売った人のように思われるんですが、実は外資系にいるPMが日本を一番愛しているんですよ。日本の成功を願っているのは、外資の日本人社員です!

河合:いわば日本代表みたいな存在ですよね。本社に対し、日本向けに「この変更をさせてほしい」とか「住所の順序が変なんだ」とか、「日本語にはふりがなというのがあるんだ」「なにー、マジかー」ってのを説明して、日本のユーザーに向けてちゃんと直すとプロダクトとしてこんなに良くなるぞ、と言うのを、ひたすら布教して回るしかない。小さな改善の積み重ねで売り上げが上がる、ユーザーが増える、と説得します。あと、「他はみんなやってます」も効きます。実はアメリカ人も「みんなやってます」というのを気にしますね。時には、翻訳を添えてTwitterのつぶやきを張り付けたりもします。

感情に訴えるか、データに訴えるかのどちらかですが、自分が日本代表だ、俺がここで負けると、日本のユーザーはふりがなのフィールドがないままだ、という気持ちでやるしかないですよね。

及川:日本は課題先進国だったり、いろんなインフラの先進国だったりします。かつて、アメリカではそれほどブロードバンドが普及していなかった頃に、ブロードバンドの先進国だから日本をテストベッドとして使いませんか、という展開をしたこともあります。

Q:優先順位を付けるときの「カン」って何ですか、もう少しブレークダウンして教えてください。

河合:ビジョンとミッションは何なのか、が最初に来ると思うんですよ。僕らの場合はさっき言った「Adventures on foot」。それにExplore、Excersice、Engageという3つの軸に沿っているかの判断もします。もう一つはプロダクトのゴールです。KPIをユーザー数で見ているならば、どちらを取ったらユーザー数が増えるのか、と考えます。そして最後は自分が一ユーザーとしてどちらが好きか、ですね。ユーザー目線でぶれないのが大事です。

及川:ChromeのときはStability、Speed、Simpleという3つのSを挙げていて、そこを失ってはいけない。機能がついてもスピードが遅くなってはいけない。もう一つ、KPIツリーを作って、本当にそれが必要なのか、どのくらいインパクトがあるかを、ポジティブネガティブ、両方見ていました。

もう一つ違う軸も参考までに紹介しますね。OSはいったん出した後はリコールできません。で、開発フェーズごとにクライテリアがどんどん変わっていくんです。ソフトウェアってバグだらけです。でも多くのものはユーザーに影響をあまり与えないんです。ですから出荷が迫ってくると、他に悪影響を与えるものはいかに直さないで出荷できるか、という議論が始まります。安定性やセキュリティ、プライバシーに影響を与えるものと、メジャーな機能に影響を与えるもの、それら以外は1カ月前になったら直さない。取り残してしまったものはサービスパックで直しましょうと言う具合に、ある程度あきらめが必要で、何を拾うかについては厳密にレビューしていました。

Q:アイデアを出すコツは?

河合:チームのムードを盛り上げる、でもってミーティングではホワイトボードでマーカーを持つ。これってけっこう大事です。信頼って、そういうちょっとしたことの積み重ねだったりしますね。でもアイデアってずっと出続けているものなので、アイデアに困ることはあんまりない。むしろ、その中からどれを選んで次に進むかのほうが難しいですね。

Q:意見の衝突があったとき、どうやってゴールまで持ってきますか?

河合:衝突、上等ですね。衝突のない会議の方がよっぽど心配ですよね。衝突はあったほうがいいという前提で、どこでディスアグリーなのかを整理するのがファシリテーターの仕事ですから、「言っていることはそんなに違わないよね」といった具合に整理して、あとはひたすら自分がサンドバッグ、クッションになると。

及川:何も反対意見が出てこないアイデアっていうのは、大したことのないアイデアである可能性がありますよね。それを引き出すようなファシリテーションやチーム文化を作ることが大切かなと思います。衝突があるところには、実はチャンスのタネがある。普段から信頼し合っていれば、人格攻撃にならないような環境を作った上で、激論が交わせると。外国の人はそのへんがうまいですよね、さっきまで大激論したのに、部屋を出たらけろっとしていたりしますから。

Q:若手のPMを育成するにはどうしたらいいですか?

河合:シリコンバレーでびっくりしたのが、新卒のPMがいることでした。グーグルに限らず、けっこうあります。会社としてPMを一つの職として成立させるんだ、という強い意志の表れかもしれません。このとき大事なのは、いきなりいい仕事ができるわけではないので、組織として強く守る必要があるということです。シニアのPMがちゃんとペアでついて、手取り足取り教えてあげるといったプロセスが必要になります。周りも、若くてもこいつがPMなんだから、こいつにリードさせよう、という環境を作る。ちゃんとそういう仕掛けを作ってあげることですね。

Q:PMはあきらめない、と言われることもありますが、正直あきらめたくなることってありますか? どうやって乗り越えますか?

河合:あきらめたくなるときは、あきらめた方がいいと思う。「しんどい」ではなく「あきらめたい」って、かなり重傷ですよね。頑張ってもどうしようもないなと判断したら、プロジェクトを変えてもらう。それで復活するPMも多いです。やめるか、期限を思い切り延ばすか、スコープを小さくする。自分がやばいと思ったら本当にやばいので、自分を信じて、自分を直さず周りを直すというのもありです。

及川:もう少し頑張るべきか、それともやめてやり直すか。そういうときに、バディのように意見を聞ける人、相談できる人がプロジェクトとは別のところにいると、判断を下す参考になりますよね。

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