女優の樹木希林さんと格闘家の山本KID徳郁さんが、お二人ともにガンでご逝去されました。才能のある素敵な人や、まだ若くてこれからという人が亡くなると、本当に惜しいと思いますし、つい自分の健康のことも考えてしまいます。
そんな中、たまたま読んだそれぞれ別の記事に、こんな話がありました。
一つは樹木希林さんが、亡くなる2か月ほど前の取材でお話されたコメントで、「あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」という言葉が紹介されていました。
もう一つは、山本KIDさんが、同じ格闘家の妹に残したメッセージとして紹介されていた、「心配すんな、でも安心すんな」という言葉でした。
お二人は年令も仕事も違いますが、たまたま同じ時期に同じガンという病気で亡くなり、そのお二人の言葉のニュアンスがよく似ていて、しかも自分が共感できるものだったので、つい注目してしまいました。
お二人の言葉から、私は物事には良いことも良くないこともどちらもあるのだから、極端に舞い上がったり落ち込んだり一喜一憂したりせずに、平常心を保ちなさいという意味だと捉えましたが、この言葉を発したお二人の心情は、どういうことだったとかを少し考えました。
メディアなどを通じての情報しかないので、ここから先はあくまで想像ですが、お二人ともとても愛情豊かで周囲の人にも優しく、面倒見がよく、人間的にも素晴らしい方だったと聞きます。
そんな他人に対する「真の心の優しさ」を持った人というのは、決して相手を罵倒したりけなしたりせず、だからといって甘い言葉ばかりをかけたり、一方的に手助けすることもせず、その人にとって本当に必要なことは何か、自分がどう振る舞えばその人のためになるのかをいつも考えています。
こういう人は、「励ましながら油断させない」「手助けしながら依存させない」「責めないが甘やかさない」など、かかわり方の距離感、バランスが素晴らしいです。そして、これが大事なのは、企業の人材育成をはじめとした人間関係においても同じです。
企業の中で意外によく見られるのは、「言っても無駄だから言わない」「誘っても来ないからもう声をかけない」といった一方的なあきらめや、反対に「無理にでもやらせる」「辛くても我慢させる」といった一方的な強制です。
ただこれも、「あきらめが肝心」と言いながらも「継続は力なり」ですし、「早い者勝ち」といったかと思えば「残りものには福がある」といいます。「石の上にも三年」で我慢が大事と言ったり、「案ずるより産むが易し」とまず行動を促したりします。すべてのことがどちらか一方だけで終わることはありません。
人間関係の中で、相手とは近すぎても離れすぎても良くありません。いい距離感を持った組織やチームは、みんな心地よく仕事をしています。
お二人のご冥福をお祈りするとともに、偶然目にしたそれぞれの言葉の共通点から、あらためて大事なことを思い出させてくれたと感謝しています。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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