「空」と「旅」というコンセプトのもと2009年より休むことなく活動してきたPASSPO☆は、今年5月に解散を発表。アイドルシーン全体に大きな衝撃を与えた。バンド演奏とダンスパフォーマンスによる2部構成の「歌って踊って奏でる対バンツアー」はゲストを招いての対バンツアーとして実施され、ファイナルは2012年3月にグループ初のホールワンマン公演が行われた思い出の地・中野サンプラザホールで単独でのラストフライト(ラストライブ)として開催された。チケットはソールドアウトし、会場には彼女たちの最後の勇姿を見届けようと大勢のパッセンジャー(PASSPO☆ファンの呼称)が集結。客席は開演前から熱気に包まれていた。
にぎやかな“機内アナウンス”とオープニング映像を経てステージに登場したクルー(メンバー)は、グループ初のオリジナル曲「Let It Go!!」でラストフライトの幕を開ける。さらにメジャーデビュー曲「少女飛行」や、扇子を振り回すパフォーマンスでお馴染みの「夏空HANABI」を歌唱して序盤から会場を盛り上げていく。最初のMCで藤本有紀美が「9年間の私たちのすべてを皆さんにぶつけるから! 今日が一番楽しかったっていう日にしような!」と早くも泣きそうになりながら客席に呼びかけたあとには、自己紹介ソングの「7's Up」、代表曲であるキラーチューン「Pretty Lie」、キャプテン(リーダー)の根岸愛が作詞を手がけた「くちゃLOVE」などが次々に届けられた。
岩村捺未が今回のセットリストを振付師の竹中夏海と共に決めたことを明かしたのち、PASSPO☆はバンド形式のBAND PASSPO☆としてパフォーマンスを展開。「WANTED!!」「マテリアルGirl」の曲中には、タンバリン担当の岩村やボーカルの森詩織が客席通路を移動してパッセンジャーを楽しませた。中盤のMCでは森が「成長は私たちにとって楽しいことで。こうやってバンドも楽しく続けられて全然苦じゃなかったです」「ここにいる皆さんが森の歌を大切にしてくれてたから、自信を持って歌うことができました」とBAND PASSPO☆に対する思いの丈を吐露。彼女の「次の曲は自分に向けて歌っている曲でもあります」という言葉から、7人は「Perfect Sky」「向日葵」をプレイし、これまでの活動で磨いてきたバンド演奏の集大成を見せつけた。
その後、7人はくじ引きで選んだ初期のナンバー5曲をメドレーで歌唱。バンドスタイルで「BREAK OUT!!」を披露してから、「ViVi夏」「Go On A Highway」「LALA LOVE TRAIN~恋の片道切符~」「じゃあね…」をノンストップで届けて会場のボルテージを上昇させた。フライト終盤では森のアカペラから始まる「無題」のほか、「『I』」「You」といったエモーショナルな歌詞が印象的な楽曲が熱演され、ステージ上のスクリーンにはグループの歴史を振り返るように過去の映像が映し出されていた。
根岸は「私たち、解散発表してからずっと笑ってて。なんでそんなにケロッとしてるんだよって思われてただろうけど、パッセンジャーさんやほかのアイドルちゃん、スタッフさんが私たちの代わりに泣いてくれて。そんな思いをさせて本当に申し訳ないという気持ちの反面、こんなにPASSPO☆って愛されてたんだなってうれしかったです」と話しつつ、「解散発表してからのみんなとのフライトが今まで以上に楽しくて、幸せを感じちゃって。これが私たちの9年間の塊なんだなって思いました」と述べる。さらに「私はこのクルーがいるからPASSPO☆を残したいと思ったんです。これからも曲が歌われれば私たちは蘇るし、それがずっと続いていくってことなんじゃないかなって今は思えて」「0を1にする瞬間をたくさん経験できたのが私たちの力になりました。だからこそこれから先に進めるんだと思います。PASSPO☆でいたことが誇りです」と涙ながらも力強く語った。そして7人は元クルーの奥仲麻琴、槙田紗子が在籍中に9人体制最後の楽曲として発表した「TRACKS」を歌い上げてライブ本編を終えた。
アンコールで7人はパッセンジャーの掲げる垂れ幕を見て喜びを露わに。増井みおの「私たちがやってきたことは本当の最高のことだし、限界を超えてきたと思っているので、最後にこうやってバンドをできて、みんなが声を出してくれることが元気の源になっています。今が歴史になります!」という煽りを経て、「Party like a Rockstar!」をバンド形式で披露し、会場はパッセンジャーの持つ青と白の誘導灯(サイリウム)のきれいな光で包まれた。続けて増井が「ケガしない! ケガしない! ケガしない!」というお決まりの“三原則”を叫んだのち、彼女たちは「STEP&GO」「Music Navigation」を歌唱。場内には星型の紙吹雪が降り注いだ。
客席からは熱烈なダブルアンコールが沸き起こり、PASSPO☆はもう一度ステージに登場。BAND PASSPO☆でドラムを担当していた玉井杏奈は「9年間で一番実りのあることはドラムでした」「これからPASSPO☆から外に出て、新しいことにチャレンジすることが全然怖くないのは、あのときドラムをめちゃくちゃ練習したからだと思います」と述べ、「明日からなんでもいいからチャレンジしてみることをおすすめします。そうしたら嫌いだったことも好きになるかもしれないの。それが人生なんだってー!」と観客に語りかけた。また玉井は「この曲を最後にバンドでやりたいんだ」と話し、7人はこの日2回目の「少女飛行」を演奏。観客と盛大なシンガロングを繰り広げた。
PASSPO☆が9年間を締めくくるラストナンバーとして選んだ楽曲は、女性同士の友情を歌った「バチェロレッテは終わらない」。根岸が「ラストフライトがあると決まったときから最後にこの曲をやると決めてました」「私たちは9年間で得たものを持ってそれぞれ進んでいきます」と語り、「みんな出会ってくれてありがとね!」とクルーに感謝の気持ちをぶつけたあと、7人はこれまでの活動を噛みしめるように同曲を熱唱し、場内に銀テープが舞う中、肩を組んでステージをあとにした。エンディング映像では「あなたにとってのPASSPO☆とは?」という問いに対する元クルーを含むPASSPO☆の手書きメッセージが映し出され、中野サンプラザホールに大きな余韻が残る中ラストフライトの幕が閉じた。