魔導国の日常【完結】   作:ノイラーテム
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 今回のお話は、エイプリル企画『火薬庫の子供達』を焼き直した物です。
その為、同じの内容が多分に含まれますのでご注意ください。


学業のススメ

●末路の報告

「労役に参加したことで子供達は様々な事を覚え、引き取り手も現われました。全てアインズ様のお陰です」

 エ・ランテルの執務室に、ユリ・アルファが御礼の言葉を述べた。

「引き取ったのは当初思っていた職種ではありませんでしたが、出会いの場としても考えておられたのですね」

「そこまでは考えて居ないさ」

 アインズはユリが放つ尊敬の眼差しを、くすぐったそうに受け止めた。

 その裏で、『あーそういえば中小企業人材交流センターで他の業種の人と出会ったなー』なんて、今更のように思い返していたのである。

 

「ただ…そうだな。今回は別件もあって都合が良かったと言うだけだ。ところでシズの方は上手くやれているのか?」

 アインズは手元の軍資金を稼ぐために利用したとは言えず、話を打ち切るためにこの場に居ないシズの事を尋ねた。

 てっきりユリが答えて、別の話題に変わると期待したのだが…。

 

 残念ながら、斜め上に持ち上げられてしまう事態に突入した。

「その件ですが、想定していたより大きな余録が発生しているようですわね。例の件も早く始められそうです」

「例の件…ですか?」

「ふむ…」

 アルベドの言う話に、ユリどころかアインズもサッパリだった。

 偶には素直に聞いても良い様な気もするのだが、帝国から来た行政官と引き会わされたばかり。

 

 仕方無いので、いつもの手を使うことにした。

「せっかくだ、アルベド。ユリ達にも判る様に聞かせてあげなさい」

「承知しました。まずは労役によって集められた労働力・資材・食料を元に、街道の敷設・避難所の建設が急ピッチで進んでおります」

 これは判り易い具体例だ。

 確かに労役で作らせても薪や食料と違い、レンガや石板の消費先が無いのは困る。

 せっかくアンデッドでは製作出来ない物資なのだし、他の政策で決まった案件に消費できるのは良いことだ。

 

「避難所の内、交易を並行して行う場所に『駅』を建設してチェックポイントにする予定です」

「以前に話していた『道の駅』だな? 定期便を利用出来る冒険者が増えてくれればありがたいのだがな」

「駅と申しますと、ただの伝令詰め所ではないので?」

 アルベドとアインズの会話に、帝国から来たロウネという行政官が疑問を挟む。

 それに対しての答えは叱責では無く、ニヤリとした笑いであった。

 

「ソウルイーターを始めとしたアンデッドによって大型の馬車・荷馬車を定期的に運用するの」

「イザという時に近隣住民を守れるだけでなく、物流を司る訳ですな。僭越ながら利用可能な冒険者とは…」

「亜人種との交易できるだけの『理性』を持っていると判断出来る者たちだな。無論、行政官も含まれるが欲しければ発行してやろう」

 人間の心理とは面白いもので、自由に交流して良いとすれば敬遠する。

 だが、一部だけが交易して良いとすれば、利益欲しさに望んで手を上げるのだ。

 ロウネがゴクリと頷いたところで、アインズの指先一つでエルダーリッチの一体が作業を始めた。

 

「便さえあれば朝の出発で昼には森の北に在るリザードマンの村まで行ける。流石にドワーフの国へは夜に成るし、おいそれと許可は出せんがな」

「そ、それだけの速度を持つ馬車が、定期的にですか!?」

 驚く声を耳にして、アインズは満足げに頷いた。

 自分が手掛けたものでないにしろ、立案に関わった身としては面白いものだ。

 

「ん。話を中断させてしまったな。…続きを頼む」

「これらの話を見聞きした者たちの口を伝わって、早速、我が国に乗り込んで居る商人『達』が増えている模様です」

 今度はロウネも口を挟まなかった。

 いや、達…という言葉が聞こえた時、自分達のことかと喉を鳴らして緊張したくらいだ。

 

「奴隷や労役の管理は登録制ですので、帝国のように戸籍が整うのも間もなくでしょう」

「戸籍か…。せっかくだし、帝国から来た連中に任せるとしよう」

「よ、よろしいのですか? 国の要を私達等に任せてしまっても」

 ハッキリいって、よろしいも何も無い。

 アインズには戸籍の重要性も、造り方も判らないのである。

 収入だとか兵だとか、国力の基礎計算の源と言われてもサッパリなものはサッパリだ。

 

「餅は餅屋だと言うだろ? それに…何の問題もあるまい?」

「まさか支…。いえ、何でもありません。謹んで任務に精励させていただきます」

 その場を誤魔化したアインズであるが、ロウネの方は到着した後の恐ろしい光景を思い出していた。

 全員が一斉に心を支配され、魔導国や帝国に仇なす目的で入り込んだ者を挙手させたのだ。

 

 彼らにはナイフが手渡され、自分の主人の前へメッセンジャーとして送り返された。

 今頃は取り押さえられて居ない限り、こうなる運命だと喉をかき切っているに違いあるまい。

 本当に必要ならばそうやって管理できるし、恐怖と利益の二つがあれば人を操るなどもっと簡単なのである。

 

 事実、ロウネはデータを誤魔化すなどやりたくもないし、発行された許可証を自由に使ってみたいと言う気持ちにさせられている。

 まだ見ぬリザードマンの集落や、道の駅に定期便。

 余計な事をしてここで死ぬよりも、もっと先を見て見たいと言うナニカが心の中に芽生えて居た。

 

●より上を求める為に

「お、おそろしい…。あの方の前では忠実に任務をこなしてしまいたくなります」

「アインズ様ならば魔法など使わずとも同じこと。それにしても何手先を読まれているのかしら」

 退出するロウネの言葉を拾って、アルベドは共に下がりながらクスリと笑みを浮かべた。

 歯向かっても無意味だが、意思に従うならば安全や利益を保証される。

 それだけでなく、言われたことを以上の事をやり遂げれば、栄達と栄光が待って居るのだ。

 

 二人の話を聞いていたユリは、話が今一つ理解できない物の…。

 すべきことを見付けて、目の前に居る知恵者に素直に尋ねることにした。

「アルベド。申し訳ありませんが、私にも何か、すべきことがあるのではないでしょうか?」

「ん~。貴女の役目的には十分果たしていると思うけれど…。そうねえ、話してしまってもよいのかしら」

 ナザリックに所属する者にとって、至高の方の為に役立つのは当然の義務。

 そして他の者が言われた事以上をこなしているのであれば、ユリが不安に思うのも当然であろう。

 

 気持ちは判ると言いながら、アルベドは少し考えてから口を開いた。

「アインズ様の構想では、学校関連は落ち付いたら一つ上の学校を造るそうよ? 志望者の中から更に選抜すると思うけど」

「選抜者の学校ですか…」

 そう聞くと、ユリとしては肩を落とすほかは無い。

 今教えている子供達には、簡単な計算や文字を教えはしたがそれだけだ。

 優秀な者を集めて、冒険者や行政官にするというのであれば、物足りないどころではない。

 

 落胆するユリに対し、アルベドは微笑んでフォローを掛けてやる。

 それが守護者だけでなく、ナザリック全体を統括し…ひいてはアインズの后たるものの役目! であろう。

「そこまで気にする必要は無いわよ? 才能には色々あるし、子供のころから教えられるならば延び代はあるもの。それにタレントばかりは数を見ないとね」

「タレント…。たしか様々な能力があり、千差万別で生まれつきの才能とは別方向なこともあるのでしたよね」

 アルベドの言葉に、ユリはカルネ村に居る青年を思い出した。

 あの青年は凄まじいタレントを持って居ると聞かされたが、薬師としては言うほど使うものではない。

 あえていうならば、薬品関連の特殊アイテムがあるならば役に立つくらいだ。

 逆に、ツアレの妹は魔法関連のタレントを持ち、その分野の才能もあったと休みの間に聞いた覚えがある。

 

 確かに、早期にタレントを発掘して、その適性を活かせる者ならば上級の学校に推薦できるかもしれない。

「しかしタレントの発掘などどうやってやったものやら…」

「安心なさいな。それもアインズ様の手の内よ。なんでも精神系統の第三位階にあるとか。その辺りも含めて良い教師を揃えれば良いのではなくて?」

 ここまでヒントをもらえれば、直情系のユリでも判る。

 学校の経営は今のレベルを維持して、教師陣を揃えて希望者は上の学校に行ける様にすればよいのだ。

 その人材集めは無駄にならないだろうし、中には上級学校で教鞭を取り便宜を測ってくれる者も出て来るかも知れない。

 

 では、どうやって?

 その疑問を口にしようとした時、思わぬところから答えが先に提出された。

「せ、精神魔法の第三位階が使え、教師が出来るならば問題のある人物でも構いませんか?」

「帝国には魔法使いの学校があると言ってたわよね。貴方も知っての通り、問題など魔導国には存在しないわよ」

「心当たりがあるならば教えてください。万難を排除して連れてきます」

 嫣然と笑うアルベドと、籠手同士を打ちあわせるユリに対し、ロウネはおずおずと口を開いた。

 

「犯罪者で良ければ…」

 大抵の場合では恐れるものが、髪の毛と共になくなった彼であるが、流石に犯罪者を推挙するのは躊躇われたのである。

 それも帝国内に潜伏する輩ゆえ、押しつけと思われかねない。

 

「子供を育てて、八本指のような犯罪者やイジャーニのような暗殺者の里、あるいは後継者に困った貴族に売り付ける者がおります」

「良いかもしれないわね。精神魔法で子供のころから調整すれば確かに…。面白いじゃない」

「その人物を殴って更生させれば良いのですね? 何処に居るのですか?」

 ロクでもないことを考え始めるアルベドと違い、ユリの方は至極真面目であった。

 その勢いで殴りつけたら即死だと思いながらも、ロウネは言い訳を考え始める。

 ここまで来て、居場所を特定しきって居ないとは言い出し難かった。

 

「ロックブルズ卿ら四騎士と共に追い詰めて居た時期がございます。一度は王国経由で逃れられてしまいましたが、帝国の総力を要請すれば難しくはないかと」

「王国に逃げた事が? ふーん。なら特定は難しくないわね。良いでしょう、貴方たちに手の者を貸してあげるわ」

 ロウネの苦しい言い訳を聞きながら、何事か思い当たりのあるらしいアルベドは楽しそうに頷いた。

 その人物が八本指の同盟者であるか、外部に放った手下であれば特定するのは簡単であろう。

 隠行を得意とする魔物と、八本指の知識の両方があればアッサリと見つかるように思われたのである。

 

 そして、その予想は外れてなど居なかった。

 暫く経って、というには日がそう離れて居ない時節、件の人物が潜伏する先がもたらされたのである。

 

●見出す者と、育てられし者

「タニア、今日も早いね」

 十歳ちょっとの少女が町のはずれ、工事現場にやって来た。

 そこには何人かの若者が汗を流し、老人達が物の数を数えたり、紐の長さで道を測っている。

 

 ここは魔導国や、帝国など傘下に入った地域が主導する労役の場である。

 週一の労役が課せられはするが、規定以上の時間か休みの日に自主的に訪れると金を稼ぐことが出来た。

 村や町の都合で増やす日は、割増し料金も貰える。

 

「はい! もうちょっとで私を買い戻せるですっ、頑張ってますよ~」

「御主人との間にはちゃんと誰か挟んで居るかい? そうか、ならば安心だなタニア」

 タニアと呼ばれた少女は奴隷である。

 奴隷同士の父母の間に生まれた、生まれながらの奴隷だ。

 ティの娘だから、タニアという名前だけ。

 

 でもちょっと寂しいので、今ではこう名乗ることにしている。

「我こそ最後。魔導国で最後の奴隷、タニアなのです!」

「そうかそうか、頑張っておくれよ」

 傘下に収まった帝国やその他の地域から奴隷制度が逆輸入されたが、ほぼ一瞬でそんなモノが消え去った。

 なにしろ全ての人民は魔導王の貴重な財産。傘下の国生まれでも同じこと。

 主人はそれを借りて居るだけであり、奴隷が自らを買い戻す事を邪魔出来ないし、必要以上に拘束する事も出来ないのだ。

 功績を数える者を買収したり、商人自身が労役代わりに計算する事も可能だが、エルダーリッチが担当の日は功績を誤魔化す事も出来ない。

 

 もちろん無能な者や、やる気の無い者は別なのだが…。

 この少女の様に、積極的な努力する者には自らを買い戻す事が可能になっていた。

 そして農地解放と農地改革が同時進行することで…。人々は農奴という奴隷では無い奴隷を解放する為に、魔導王が奴隷制度を一度通用させたと噂しあったのである。

 実際には逆であり、金持ちから農奴を取りあげる為にデミウルゴスと言う賢者が導入したそうなのだが、大した差ではあるまい。

 

「タニアねーちゃん、今日はなに納める?」

 身寄りのない子供達が、計算できるタニアの元に集まって来る。

 孤児であったり親が病気であったり、彼女の様に時間を造って金を稼ぐ奴隷の子も居た。

「ちび達は薪を集めるですよ。お日様があっちに行くまでに持ってくるです」

 彼らを指揮して、タニアは簡単な作業を振り分ける。

 

 それはまるで蜂や蟻の女王であるかのようだ。

「その後は日干しだね? 紐を沢山持って来る!」

「順番を間違えるなですよー」

 子供達の多くは数を数えられないので、定められた紐でくくることでソレを代用している。

 ド・リョウコウという賢者の名前が単位を統一したとかで、どこでも同じ紐で良いのが助かった。

 仮に紐五本分が選択労役だとするならば、六本分以上持って来れば金を貰える。

 孤児はソレで日銭を稼ぎ、奴隷は自らを買い戻す為に励むのであった。

 

「俺達は何をすれば良いんだ?」

「おっきな子たちは日干し煉瓦を造るですよ。今日は焼煉瓦の職人が来てるので、買い取ってもらえるです」

 金持ちは自分の労役を奴隷や雇い人に任せる事も出来る。

 徒弟や丁稚などは親方の代わりに訪れており、彼らに交渉する事も…美味くやれば技術を学ぶ事も出来た。

 もちろん、あからさまに敵対すれば商売敵として睨まれるが、大抵は開拓村に行けば良いので問題には成らない。

 

「タニア、またこんな所に来て…。お前ならもっと楽な場所で働けたろう?」

 やがて、タニアの主人らしい身なりの良い若者が数人伴って現われる。

 護衛であったり雇い人であったりするのだろうが、顔見知りらしく皆一様に笑う。

 町でも名の知られた若者が、成人のプレゼントとして買われてきたはずのタニアに、てんで弱いことが良く知られていた。

 

「若旦那! もしかしてお迎えに来てくだすったのですか? でもですね、ここの方が実入りが良いのですよ」

 身も蓋も無い事ながら、タニアとてボランティアで子供達の面倒を見て居たのではない。

 段取りを考えたり、数を数える代わりにタニアは手数料を物納でもらって居た。

 自分自身が働くことに合わせそれらを加算する事で、彼女がまだ若いながらも自分を買い戻す事が視野に入れれたのだ(若くて能力が無い頃の値段だからこそ、安かったとも言えるが)。

 

「タニア。そんなに私の元に居るのが嫌なのかい? お前さえ良ければ…」

 惚れた弱みもあるのだろうが、若者はタニアに強く出られないで居た。

「それでは若旦那の物のままなのですよ。タニアはタニアの意思で若旦那と一緒に居たいのです。それに、タニアを馬鹿にした連中にあいつは凄いと言わせて見せるのです」

 タニアの方も若者を憎からず思って居る様であるが、彼女には奴隷には似合わぬ自尊心がある。

 

 豊作貧乏で売られると言う理不尽が徒来た時。

 あるいは若旦那の御相手で、一緒に計算や文字を覚えれると知った時から、彼女は諦めるのを止めた。

 そこに有益な手段があるのだ、やって何が悪いと居直ったとも言う。

 

 そんな風に、タニアは生来の奴隷としては、一風変わった女の子だった。

 …まるで誰かに、そうあれと操られたかのように。

 

「先生が変なことを教えるから、タニアが変わった子になってしまいましたよ」

「元から彼女は物判りが良かった。教えなくともいつかは自分で理解したとも。私はソレを後押ししただけだ」

 変わった所も悪くない。

 そんな風に笑う若者に、先生と呼ばれた男は力強く頷いた。

 

「特殊なタレントも魔術の能力も無いが、何が必要かを理解する力がある。何をやってはいけないかを理解する力でも良いがね」

「冒険者にでもなったらどうするんですか。せっかく教えたことが無駄になるんですよ? まあ、慣れましたけどね」

 才能が無いからこそ愛されるという事もあるだろう。

 タニアは誰でも出来ることを、他人と一緒に汗水たらして実行するだけなのだ。

 ただ諦めることなく、前を向いて実行するだけ。

 あえて言うならば、それが彼女の才能だろう。

 

「若旦那~。アルフレッド先生を独占したら駄目なのです。みんな困ってるのですよ」

「悪い悪い。つい話し込んでしまってね。タニアが聞きたいなら、また講義に来てもらおう」

 学校に行くと言うのは、ある種の幻想である。

 貧しい者に取って時間は有限だ。

 

「彼女はそういうことを言ってるんじゃないと思うがね」

 子供達でも数時間の労働で金を稼ぐことが出来るし、それが鉱山の様に特殊性があったり過酷であればあるほど時間は重要で、魔導国でなら賃金も高くなる。

 学校に行っている暇があれば、子守の一つでもさせるのが貧乏人である。

 その意味に置いて、労役の最中に時間を造って、判り易く教えてくれるアルフレッドと言う教師は貴重であった。

 

「アルフレッド先生~。先生に面会だよー。レイナースさんて言う、綺麗なメイドさん!」

「レイナース? まさかな…。今行くから待って居てもらいなさい」

 一同が色々やっていると、子供の一人がアルフレッドを呼びにやって来た。

 その名前が有名人の名であることも、自分が教師と言う名目で隠遁している事を悟られた理由など覚えがあるものの、なぜその人物が呼びに来るのかが見当が付かない。

 

 いっその事、心当たりが外れてくれれば気が楽なのだが…。

 どう見ても、知っている人物にしか見えないだけに不気味である。

 しかも聞いて居た通り、メイド用の服を着て居るのが混乱に拍車を掛けた。

 

「アルフレッドさんですね? とある方がお会いになりたいそうです」

(これは勝てんな…。以前はもっと余裕が無い感じだったが、随分と様変わりしたものだ)

 アルフレッドは自分の過去の行状から捕えに来たのかと、逃げる事を考えたものの、その考えを打ち消した。

 戦っても勝てず、隙を突いても揺らぎそうにない。

 何より、戦って死ぬことよりも、レイナースと言う心に闇を抱えた女性が、ある種の安定を得た事に興味を覚えて居た。

 

 帝国は魔導国の傘下に入ったものの、別に解体などはされて居ないはずなのだが…。

 魔導王というのは、そんなにも影響力があるのだというのか?

 

「ある方? 会うのは構いませんが、私に何が出来るやら」

「その方は、魔導国に良い学校を造りたいそうですわ。その為の要請だと思います」

 一応はトボけてみせるものの、隠し通せるとは思わない。

 そもそもが、正体が突きとめられていなければ、彼女が会いに来る必要などないのだ。

 

「いつまでも後ろ暗い『妖精隠し』などせずともよいでしょう」

「妖精隠しか…。なるほど、言い当て妙だ」

 アルフレッドと名乗る男は、人浚いの真似ごとをしていた。

 そして、才能がありそうな者を精神的に加工し、大成しそうな者を望む場所に送り込むのだ。

 

「だが、私なら裏切り者と呼ぶがね。そんな男を推挙すると?」

「そんな事が気に成るような方ではありません。思いっきり自分のしたいことを出来る職場へと案内いたしますわ」

 これはアルフレッドと言うイジャーニの人形師、あるいは八本指の暗殺者と呼ばれる男が…。

 魔導国の学校経営に携わる前の出逢いである。




 エイプリル物の話を拡張し、何故そんな事になったのかを付け足して
微妙になさそうな事を修正し足り加工してみました。
 奴隷のタニアとアルフレッド先生は、ティタニア・オベイロンの妖精ネタから名前をもじった感じで。
 アルフレッド先生の来歴ですが、精神魔法が使えて、子供の才能を引き出すのが上手くて…。でも冒険者でも魔法学園にも関係ない。という必要性から、こんなキャラになりました。
幾つかの元ネタはありますが、シンプルにまとめるためガンパレ系の『A』とオーフェンの『チャイルドマン』の2キャラに絞った感じです。
当然まんまの設定では使い難いので、流用してる程度ですが。







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