私のツイッター発言に対する沖縄地元紙の偽情報批判に反論する
改めて言う。玉城デニー氏が言う「沖縄一括交付金の創設は、自分が政府に直談判して実現にこぎつけた」は誇大宣伝である。
沖縄地元紙(2018年9月21日付、2面)のファクトチェックでは、沖縄一括交付金制度自体を「民主党政権下の2011年12月の沖縄関係予算案で初めて創設された」とし、当時総理補佐官、総務大臣政務官であった逢坂誠二衆議院議員のツイートを引用して、私のツイッターでの上記の発言を「偽」と断定した報道をしている。
しかし、そもそも予算と根拠法(沖縄振興特別措置法改正案)が国会で成立しなければ、それは政府の案に過ぎず、制度の創設とは言えない。沖縄地元紙の考え方は、憲法で「国権の最高機関」と位置づけられている国会を軽視しているようなもので、私としては、まずこの段階で強い違和感を覚えた。
議院内閣制の日本は、国会の議決が政府の予算や法律に基づく政策を最終決定するのであり、政府の予算案策定をもって制度の創設とするのは、不正確だ。もちろん、議院内閣制といっても、政治的現実として、二院制の日本において衆参両院で政権与党が多数を占めていれば、「政府案の策定=制度の創設」と書いてもあながち間違いではない。
ところがだ。2011年当時の政権与党である民主党は、2010年の参院選挙で大敗し、参議院で少数与党となっていた。いわゆる「ねじれ国会」だったのである。
よって、当時の民主党政権は、野党の協力なしに法律を国会で成立させることができなくなっていた。デニー氏が「直談判」したという相手の政府与党(当時民主党)は、野党の協力なしに法律を国会で成立させることができなくなっていたのだ。この重大な政治的背景をデニー氏も逢坂氏も沖縄地元紙も、なぜか触れていない。忘れていたのか、勉強不足か。この重大なファクトが抜け落ちている。ずさんなファクトチェックではないか。
2011年〜12年の「ねじれ国会」の下、当時の民主党政権の国会運営は厳しく、綱渡りだった。それを背景に、沖縄一括交付金の根拠法である「沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案」についても、与野党で法案修正をするための「沖縄与野党PT(プロジェクトチーム)」が2012年3月に設立されることになる。与党からすれば、国会審議に入る前に野党の合意を取り付けたかったのだろう。まさに、「ねじれ国会」の副産物だ。
沖縄振興特措法に関するPT21名の中に玉城デニー氏も参加していたことは私も知っている。しかし、それは、デニー氏の言う「直談判して実現にこぎつけた」こととは、無関係な話だ。
3月9日に行われた沖縄与野党PTの第1回会合では、法律案の修正協議を担う「交渉人会」の設置と人選が決まった。民主党から大島敦、小川淳也、吉良州司の3名、自民党から宮腰光寛、秋葉賢也、礒崎陽輔、島尻安伊子の4名、公明党から私と木庭健太郎(私のツイートでは、秋野公造になっていたので訂正する)の9名が選出されたが、そこには玉城デニー氏の名前はない。
その後、3月13日~3月19日の期間に4回にわたって交渉人会による徹底した修正協議が行われた。私自身、交渉委員会の一員だったから、どんな交渉があったかは、全て知っている。交渉人会に陪席した内閣府や財務省の担当官僚と私たち野党議員の間で激しいやりとりがあり、重要な法案修正がなされたのだ(6項目の条文修正、6項目の附帯決議で合意)。
3月21日に沖縄与野党PTの第2回会合が行われ、PTメンバーは交渉人会からの報告(合意内容)を了承した。デニー氏は、我々9名が交渉して決めた法律の修正案報告を受け、了承しただけである。2回しか行われなかった与野党PT21名の会合では、法案の中身については実質協議をしていない。
こうした異例のプロセスを経て、年度末ぎりぎりの3月30日、沖縄一括交付金の根拠法である「沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案」、「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の一部を改正する法律案」が国会において全会一致で可決、成立した。
逢坂氏は、この沖縄与野党PTの第1回会合(3月9日)に配布されたペーパーを挙げて、「玉城デニーさんは明らかにメンバーです」と述べておられるが、ピントがずれた指摘だ。私はこの与野党PT21名にデニー氏が参加していることを否定したことはない。実質協議をした交渉人会にいなかった、と指摘しているのである。
私は、沖縄一括交付金の根拠法である「沖縄振興特別措置法改正案」の与野党修正協議に交渉員として参加していないデニー氏が、「沖縄一括交付金の創設は、自分が政府に直談判して実現にこぎつけた」というのは「誇大宣伝である」と述べているにすぎない。
もう一つ、沖縄地元紙の当該記事には、看過できない問題がある。
玉城デニー氏がツイートしたのは、「『県や市町村の自由裁量度が高い予算=一括交付金(通称)の創設』を、政府与党(当時民主党)に玉城が直談判して実現にこぎつけた」である。
「創設」を「直談判」して「実現」にこぎつけた、が、沖縄地元紙のファクトチェックでは、いつの間にか「創設」が「導入」に、「実現」が「関与」にすり替わってしまっている。さりげなく表現を変えて、私のツイートを批判している。ずるい手法だ。
私は一度も「沖縄一括交付金の導入に玉城デニー氏が関与していない」とは主張していない。私の主張は「玉城デニー氏が言う『沖縄一括交付金の創設は、自分が政府に直談判して実現にこぎつけた』は誇大宣伝だ」なのだ。私が言っていないことを勝手に言ったことにして、「一括交付金導入で『候補者関与はうそ』は偽情報」と見出しを付けて発表するのは、報道機関としてフェアなチェックだろうか。チェックの前提となる表現が、私のツイートと違うのだ。発言を改ざんするのはやめて欲しい。
また、逢坂誠二衆議院議員は「自民、公明の皆さんは一括交付金に批判的だった」とツイートしているが、これは事実と違う。これも沖縄地元紙の記事の中でファクトチェックせずに引用されている。
公明党は一貫して一括交付金の創設に賛成だった。予算案がまとまる半年前の2011年6月1日の衆院沖縄北方特別委員会で、当時公明党沖縄方面議長だった私は沖縄一括交付金の創設を政府に明確に求めている。以下、少々長いが議事録の抜粋を引用する。
沖縄及び北方問題に関する特別委員会(平成23年6月1日)
○遠山委員
実は、一括交付金も、ですから政府の一部の補助金を一括してまとめて出すというレベルではなくて、私はきょう手元に持っておりますが、内閣府の沖縄担当部局予算、今年度で二千三百億円ありますが、これを全部一括の交付金にして、使い道も含めて丸ごと沖縄に任せてくれ。もっと率直に、直截に言うならば、今この予算をつくっている内閣府の役人たちの仕事を全部取り上げて、沖縄に下さいと言っているんです。
おもしろいのは、沖縄の琉球新報という新聞に載っていたんですが、内閣府の、だれだかわかりませんよ、匿名で、官僚たちの間ではこの沖縄県の一括交付金の要望をブラックボックスと呼んでいる。つまり、何に使うかは教えないけれども、お金だけたくさん欲しいということを言っていて、そんなブラックボックスみたいなものを国会が認めるわけないじゃないかと内閣府の官僚が言っていたと、県議会議員が言っているのを新聞が報道していましたね、大分又聞きになっていますが。
ただ、これは、私も与党にいましたから非常に難しい要求だと思いますが、そろそろ沖縄が自立的に発展をしていくために、当然、財政規律とか予算の使い道の透明化は担保しなきゃいけません、一括交付金といっても国費を出すわけですから、会計検査院の検査の対象になりますし、財務省も当然、予算執行調査をしなければいけないわけでございますから、私は、そこをきちんと担保した上で、はっきり言って異例ですけれども、特例ですけれども、沖縄の予算に関してはかなりの自由度を与えて渡すということを、決断をそろそろしてもいいのではないかと思いますが、枝野大臣、いかがでしょうか。
この議事録の裏付けも取らず、書き手に説明の機会も与えずに、一方的な記事を掲載した沖縄地元紙の報道姿勢には、大いに失望したことを最後に記しておく。
印象操作をしているのは、どちらなのか。公平な報道を望みたい。