平原で出会ったのは、サタンではなく天使の軍勢でした 後編
サイド:ユアン
それはある日、僕が天に舞う翼の生えた天女を見つけた時のことだ。
「ねえ、母さん? あれは何?」
その時、母さんはこう答えた。
「ああ、天使と呼ばれている――」
そうして母さんは地面に落ちていた拳大の石を拾って、天使に投げつけた。
音速を遥かに超える速度。
空気摩擦による赤色現象を伴いながら、石は天使の頭部を爆発四散させた。
「――鳥さね」
「鳥なの? 人間っぽいけど?」
「ああ、ありゃあ鳥だ。鳥頭だ」
「ふむ?」
「絶対神(親鳥)の命令を忠実にこなすだけの機械さね。異教徒には慈悲もなく、教徒にすらエゲつない試練を与える」
「きょうと?」
「分からないなら理解しなくても良いよ。とにかくややこしいとだけ覚えておけばね」
まあ、とりあえず……天使とかいうのが悪い鳥なのは理解できた。
でも、どうして悪いのかな?
きっと、鳥っていうくらいだから農作物を荒らしたりするんだろうか。
それは本当に害獣だな。迷惑な事この上無い。
「まあ、要は天使っていう偉そうな名前だけど……所詮は鳥さね」
「うん。人里を好きに荒らしてみんな困ってるんだよね?」
「そういうことさね。ああ、でもユアン?」
「何? 母さん?」
「親鳥の取り巻き――第一階級……ミカエルとかガブリエルとかの
「うん、分かったよ母さん」
そして、今。
「第8階位:
母さん曰く、本当に虚弱体質で、普通の人間が全力で闘う前の準備である――闘気解放をした余波だけで死んでしまうこともあるという。
けれど、虚弱体質とはいえ普通にご飯は食べるだろう。
いくらなんでも1000体で畑を荒らされたら、農家さんも困り果ててしまうはずだ。
「よしっ!」
僕は上空2300メートル――天に向かって脚力だけで飛びあがった。
そして――
「極大禁術魔法――
半径2000メートルを、オリハルコンですらも切り刻む風の刃で攻撃する魔法だ。
普通の人だと14歳で使える魔法だけど、僕が使えるようになったのは恥ずかしながら最近のことだ。
「あびっ!」
「ぐぎゅっ!」
「ぐびりっ!」
「ぴぎっ!」
「あっぎいいいっ!」
そうして、1000体の天使たちが瞬く間に無数の肉片へと姿を変えて平原に落ちていく。
そこで飛び上がった僕も落下起動に入り――数分後に無事に地面に着地した。
と、僕が着地した時、周囲が神聖な光に包まれて――
気が付けば、僕の前に体長3メートルほどの翼が生えた、蒼銀のフルアーマーの天使が立っていた。
「人間にしては中々やるようですね。召喚直前に全て屠られていたようですので……どこまでの実力化は分かりませんが」
「貴方は?」
「私は天使の第3階位:
「……」
「
「……なるほど」と僕は頷いた。
「つまり、大きな鳥さんということですね」
「ん? 全然……畏敬の念が見えませんね?」と
が、すぐに
そうして気を取り直したように右手を掲げた。すると、
「そしてこれが
パキョっ。
ビジっ。
パァンっ。
僕の拳が
能天使たちは僕の攻撃を視認すらできないようで、みんな防御も取れずに棒立ちのまま頭を吹き飛ばされていく。
そして、瞬きの後に能天使が10体……平原に横たわった。
「………………………………えっ?」
「……」
「私が攻撃すら見えない――って……えっ?」
と、そこで僕は
「鳥害ってご存知ですかっ!?」
「……えっ?」
「農家のみんなは――鳥さん達には困っているんです! 人里に現れると今回みたいに駆除をしなければなりませんっ!」
「…………えっ?」
「迷惑なんですっ! 人里には来ないでくださいっ! 帰っていただけますよねっ!?」
「……」
「帰っていただけますよねっ!?」
「……あ……はい」
そうして
☆★☆★☆★
――この時、目撃者の数は実に300名。
これが、後の世の歴史書に度々登場する……謎の超生命体の初出となる。
その超生命体の名は、ユミロス平原に初めて現れたことから――後の歴史家の手によって暫定的に『ユミロスの悪夢』と名づけられ、俗称として定着することになった。
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