就業体験として位置づけられてきたインターンシップと就職活動の垣根がなくなろうとしている。経団連は自ら掲げてきた就活ルールの抜本的な見直しの一環として、採用活動と切り離すように求めてきたインターンに関する規定も廃止する方針。早期に企業の内定を獲得したい学生もインターンと採用を結びつけて考える傾向が強まっており、これに応じる企業が広がる可能性がある。
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政府と経済界、大学はこのほど就活ルールの見直し議論に着手した。経団連の現行ルールは廃止し、政府と大学が代わりとなるルールを作る方向で調整を進めている。2021年卒の学生の採用活動から、経団連は事実上、ルール作りの役割を終える見通しだ。
それに伴い、経団連が企業に求めてきた「インターンと採用活動を結びつけない」とのルールもなくなる公算が大きい。すでに一部企業では、1日限りの短期インターンを実質的な会社説明会として利用したり、中長期の場合は採用に直結させたりする例もあり、今後はこうした動きが一段と加速しそうだ。
■全日空が首位
現実には、学生側には早くから「インターン=選考」との意識が広がっている。楽天が運営する就職情報サイト「楽天みん就」は21日、20年卒予定の学生を対象としたインターン人気ランキングを発表。これを今春調べた19年卒学生の就職したい企業ランキングと比べると、上位20位までの企業のうち12社が重複している。インターンと就職の人気が重なっている。
インターンの人気ランキングで首位だったのは全日本空輸。グローバルに事業を展開している印象が人気をけん引しているようで、本選考となる就職人気ランキングでも上位の常連だ。
全日空は今年は夏場に1日型のインターンを14回開き、約2000人を受け入れる。1日型を経験した学生は例年、職場見学などがある冬季の4日間のインターンも希望する例が多いという。
■3年生から活動
3位のニトリは学生視点に立ってインターンの内容や日時を調整している。1日型のプログラムだけで4種類もあり、きめ細かい。土日も開くなど、授業や予定をずらさず参加できる配慮もしている。毎年内定者の意見をもとに内容を見直す工夫もしている。
6位の資生堂は女子学生に限れば2位。マーケティングについて知るインターンを毎年実施する。今年は11月に4日間開き、40人程度を募集する。化粧品ブランドのマーケティングプランを立案し、経営陣に発表する。
国内の大手企業は従来、経団連ルールや大学への建前もあり、表向きはインターンと採用活動を直結させていないという姿勢だった。しかし、新卒採用は売り手市場が続いており、企業にとっても早めに学生との接点を得られるインターンの重要性は高まっている。
学生側は3年夏のインターンを事実上の就活の最初の関門ととらえて早くから動く例が大半。早大3年の男子学生は「早く内定を得たいので、選考と直結していると先輩から聞いた企業のインターンを中心に受けた」と話す。
就職情報大手のディスコ(東京・文京)の武井房子上席研究員は「企業も学生もお互いをよく見ようとしている。インターンを数多く経験した学生は企業を見る目が肥え、インターンの質にも敏感になっている」と指摘する。
採用と就活が政府と大学が選考解禁時期の方針を示す新たな枠組みに移行した後は、インターンの開始時期がさらに早くなる可能性もある。企業側には、インターンが事実上の採用活動スタートであることを一段と意識した動きが必要となりそうだ。
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