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機神咆吼デモンベイン

―――御伽噺をしよう。

とおい、とおい、むかし。
はるか昔のおはなし。

最初の人間が生まれるよりも、
さらに昔のおはなしです。

冥い冥い星々の向こうから、生まれたばかりの地球に、
『ぐれーと。おーるど・わん』とい呼ばれる悪い神様たち
がやってきました。

悪い神様たちは海に空に大地に押し寄せて、お城を築
き神殿を築き、地球を我が物にしてしまいました。

悪い神様たちは好き勝手に暴れて、地球に生きるみん
なを苦しめました。

みんなみんな、泣きました。
地球も、痛い痛いと泣きました。

だけど神様たちはとても強くて、誰もどうすることも
できませんでした。
みんなみんな、祈ることしかできませんでした。

 

だけど悪い事をしているのは神様なのです。

――ではいったい、誰に祈ればよいのでしょう?

だけど、みんなの祈りは届きました。
ある日、空が輝きました。
誰もが空を見上げました。
そして、誰もがそれを見ました。

憎しみに燃える空から、
血を舐める地球に降り立った、光の巨人。
空を輝かせ、地を照らし、彼はやってきました。

――善い神様が、舞い降りたのです。

善い神様は、荒れ果てた地球を見て、
とても怒りました。
そして、悪い神様たちを懲らしめようと、その手に光
り輝く剣を執りました。

善い神様と悪い神様たちとの戦いが始まりました。
――実のところ、善い神様は、みんなが思っていたよ
うな、全知全能の神様ではありませんでした。

『えるだー・ごっど』が『ぐれーと・おーるど・わん』
を懲らしめたなんて、嘘っぱちなのです。
このお話は御伽噺ですが――御伽噺の中でも、嘘は嘘
なのです。

宇宙はやっぱり悪い神様しか、いないのです。

だけど祈りは確かに届いたのです。
善い神様に届いたのです。

悪い神様たちは、やはり強すぎました。
善い神様は、何度も何度も、傷つき、倒れました。

傷だらけになって、

たくさん血を流して、

でも、それでも善い神様は諦めませんでした。

何度も何度も立ち上がって、涙を堪え、歯を食いしば
り、剣を手に、何度も何度も、悪い神様たちに挑みました。

そんな善い神様を見て、悪い神様たちは、だんだん怖
くなってきました。

ものすごく痛いはずなのに、

泣きたいくらい痛いはずなのに、

どうして、こいつは、何度も何度も立ち上がれるのだろう?

悪い神様たちは次第に、善い神様に追い詰められるよ
うになりました。

いつか悪い神様たちは思うでしょう。
宇宙の果ての寒い場所に閉じ込められながら、
悩むでしょう。

怒りながら、
嘆きながら、
憎みながら、
妬みながら、

そして――憧れながら。

なぜ、こんなことになってしまったんだろう?
この世界には善い神様なんて居なかったはずなのに。
いったい誰が、何が、どんな願いが、宇宙の真理すら
も捻じ曲げて、善い神様を創り出すのだろう?

――生命とは何なのだろう?

 

この苛烈な闘争の永劫の中、
無限の数を重ねて唱えた、魔を絶つ誓い。

今回もまた、変わる事無く。
そして、これからもなお――

「憎悪の空より来たりて――」
「正しき怒りを胸に――」
「我等は魔を絶つ剣を執る」!

「汝、無垢なる刃
――デモンベイン!」

これは御伽噺です。
だけど、それは。
世界の中心で夢見る神様ですら、
宇宙の総てをお創りになった神様ですら、
決して、決して、消し去る事の出来ないそれは、

刹那の愛を紡いで、永遠の時を刻み続ける――

いのちの歌。

 

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