人気相撲漫画「バチバチ」シリーズで知られ、7月3日に急逝した漫画家・佐藤タカヒロさんの追悼特集が9月20日発売の「週刊少年チャンピオン」43号に掲載された。
![追悼号の表紙を飾るのは佐藤さんが描き遺した主人公・鮫島の鉛筆画。](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-09/21/20/asset/buzzfeed-prod-web-01/sub-buzz-25092-1537575581-9.jpg)
追悼号の表紙を飾るのは佐藤さんが描き遺した主人公・鮫島の鉛筆画。
佐藤さんはシリーズ3部作の最終章となる『鮫島、最後の十五日』を2014年から同誌にて連載していたが、41歳の若さで亡くなり、シリーズは未完のまま幕を下ろした。
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特集は横綱白鵬の追悼手形で始まり、チャンピオン連載陣に追悼色紙展、さらに主人公・鮫島の全取組が52ページにわたって掲載された。
多くのファンを魅了した熱い漫画に報いるよう、熱の込もった追悼号はいかにして生まれたのか。佐藤さんの最後の担当となった少年チャンピオンの編集者に話を聞いた。
――20日に発売された「週刊少年チャンピオン」43号は佐藤タカヒロさんの追悼号となりました。週刊漫画誌で巻頭から大きく追悼特集を組むのは異例のことです。
残念ながら『鮫島、最後の十五日』の連載中に佐藤先生が亡くなられたこと。熱のこもった作品であったことは間違いありませんでしたので、先生は亡くなってしまいましたが、作品は生きているぞと読者の皆様に届けたいとの思いからの特集です。
――どの段階で特集を組むとなったのでしょうか。
佐藤先生が亡くなられた時に、編集部全体でこういうものを作ろうとなりました。ご遺族の方にも相談させていただき、特集を組むことが決まりました。
我々、編集部も今回の特集を作っていて『鮫島』は熱いなと感じました。編集中何度も佐藤先生の匂い、熱を感じることができて、改めてその大きさが分かりました。
![これまで少年チャンピオンに掲載された巻頭カラーの特集ページ。](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-09/21/20/asset/buzzfeed-prod-web-03/sub-buzz-5974-1537577825-1.jpg)
これまで少年チャンピオンに掲載された巻頭カラーの特集ページ。
――特集では少年チャンピオンの連載作家がそれぞれイラストと佐藤さんへのメッセージが載った追悼色紙を寄せています。さらに雑誌の垣根を超えて、少年ジャンプで『火ノ丸相撲』を連載している漫画家の川田さんも色紙を寄せています。
佐藤先生ご自身も「火の丸相撲」は毎週しっかり読んでいて、打ち合わせのときなどで感想を話されることもありました。
今回ダメ元で聞いてみたんですが、ジャンプ編集部様が非常にスムーズにお話を通してくださいました。
追悼色紙には佐藤先生の奥様のものもあります。
頼むかどうか非常に悩んだのですが、「主人のためなら」と承諾していただいて。私としてはそのコメントに胸が詰まります。
![追悼色紙のコーナーに掲載された奥さんの色紙とメッセージ。](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-09/21/20/asset/buzzfeed-prod-web-06/sub-buzz-22187-1537576674-7.jpg)
追悼色紙のコーナーに掲載された奥さんの色紙とメッセージ。
――佐藤さんは7月3日に亡くなりましたが、以前から体調が悪いというような話はあったのでしょうか。
それはなかったと思います。ただ、週刊連載というタイトなスケジュールの中、佐藤先生は自分が納得するまで描くというところがありまして、仕事場に行った際に描き直しの原稿がすごい量で、こんなに描き直していたのかと驚いたことがあります。自分の中でボツを出すということをたくさんされていて...。
雑誌を読んでいる方はわかると思うのですが、コミックスで絵の差し替えが多い。絵に妥協をしない方でした。
見開きや画面構成にもすごく力を入れる作家さんだったので、そこで眠れないということもあったのではないかと思います。
――漫画の中では主人公の鮫島も命を削って相撲に取り組んでいましたが、佐藤さんご自身も命をかけて漫画に取り組んでいたのですね。残念ながら漫画は十三日目の取組が終わった時点で止まってしまいましたが、その後の構想などは聞かれていたんでしょうか。
佐藤先生の頭の中では当然決まっていたと思います。ただ、実際に描いてみるとその時の熱量などでまた変わっていったのではないかと思います。
――佐藤さんとの思い出で印象深いものはありますか。
佐藤先生はアナログの作家さんなんですけど、取組をしている回とそうでない回では封筒に入っている原稿の厚さが違うんです。ページ数は同じなのに。
それはトーンやホワイトの量が違うからで、そこで分厚さが変わることがあるんだって、驚きました。
先生はセブンスターを吸われていたんですけど、原稿を封筒から出すとその匂いがして、ここで頑張ってるんだなというのが伝わりました。
![『バチバチ』シリーズの魅力であった佐藤さんの熱量が伝わる見開き。全取組特集でも名シーンの数々が掲載されている。](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-09/21/21/asset/buzzfeed-prod-web-06/sub-buzz-24140-1537578141-1.jpg)
『バチバチ』シリーズの魅力であった佐藤さんの熱量が伝わる見開き。全取組特集でも名シーンの数々が掲載されている。
――佐藤さんご自身はどういった方だったんでしょう。
面倒見の良い兄貴分肌の方でした。漫画に関しての打ち合わせは真摯に話を聞いてくれますし、ご自身がどうしてこういうネームにしたかという説明もとても丁寧に説明してくれました。
普段は電話での打ち合わせなんですけど、山形まで直接うかがった時には「せっかく来てくれたんだから」と美味しい飲み屋の席をご用意してくださったり、本当に気を使ってくださる作家さんでした。
――追悼号についての反響はどうですか。
『鮫島』ファンの皆様からの温かい反響はいただいております。また隠しメッセージがあることから電子版ではなく、今回は紙の雑誌を購入してくださる読者の方もいらっしゃいました。
![追悼号の小口(断裁面)には「サヨナラバチバチアリガトウ」と編集部の隠しメッセージ。](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-09/21/20/asset/buzzfeed-prod-web-05/sub-buzz-7206-1537576104-2.jpg)
追悼号の小口(断裁面)には「サヨナラバチバチアリガトウ」と編集部の隠しメッセージ。
――私自身「バチバチ」シリーズのファンです。本当に面白い漫画ですし、この記事を読んでいる、佐藤さんの作品を読まれていない方に興味をもってもらえればと思っています。
ありがとうございます。佐藤先生がたくさん魂を削って作った熱い漫画です。ぜひ追悼号をきっかけに少しでも多くの方に手にとってもらえれば幸いです。