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【社説】

南北首脳会談 非核化 後回しせずに

 北朝鮮側が再び、核放棄への意欲を表明した。時期や方法について具体的な約束はしなかったが、ひとまず対話は続きそうだ。南北関係改善を急ぐあまり、非核化を後回しにしてはならない。

 韓国の大統領が平壌を訪問するのは十一年ぶり。南北首脳会談は今年だけで三回目となった。

 文在寅(ムンジェイン)韓国大統領を、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が夫婦で出迎え、市内をともにパレード。自分の執務室がある朝鮮労働党庁舎で、初めて南北首脳会談を行うなど「破格の厚遇」を見せた。

 この歓迎ムードを反映するように、十九日の発表文には、非武装地帯での軍事的緊張の解消、開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光の正常化、二〇三二年の夏季五輪共同開催の誘致など、軍事、経済、スポーツ、人的交流など多方面にわたる合意が盛り込まれた。

 首脳間で信頼関係が積み重なっていることを実感させる内容であり、歓迎したい。

 ただ、合意の六項目中、非核化についての言及は、わずか一項目にすぎなかった。

 北西部に位置する寧辺(ニョンビョン)核施設と東倉里(トンチャンリ)のミサイル関連施設について、永久に廃棄する意向を示した部分だ。

 具体的な施設名を挙げたのは前進だが、東倉里は北朝鮮がすでに解体措置を取ったと表明している。核施設の廃棄には「米国が相応の措置を取れば」という前提があり、駆け引きは終わっていない。

 米国が求めてきた核施設リストや申告・検証、廃棄に向けた日程の提示は今回もなかった。

 非核化をめぐる米朝間の交渉は膠着(こうちゃく)している。休戦中の朝鮮戦争について「終戦宣言」と、北朝鮮の核放棄のどちらを先に行うかで、対立しているためだ。

 首脳会談前に文氏は、先に核放棄を行うよう正恩氏を説得する考えを表明していた。合意文を見る限り、応じなかったようだ。先に終戦宣言の実現を求める立場を変えていない可能性がある。

 正恩氏の年内ソウル訪問で合意したのは画期的だ。ただ、非核化の見通しがついていない段階では、混乱を招かないか。

 トランプ米大統領は、合意文の内容について、ツイッターで歓迎する意向を示した。二回目の米朝首脳会談が実現する可能性が高く、交渉は、この首脳会談の場に持ち越されることになりそうだ。

 韓国は、南北関係に目を奪われることなく、非核化についても、粘り強く説得を続けてほしい。

 

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