組織のたがが緩んでいるという言葉ではすまされない。文部科学省事務次官が二代連続で引責辞任した。子どもたちの未来を預かる省庁として、早急にうみを出し切り出直すしかない。
 
 同省幹部に絡む贈収賄事件の責任を取って辞任した戸谷一夫次官は自身も、「霞が関ブローカー」として知られていた贈賄側の業者から銀座のクラブなどで六万円を超える接待を受けていた。
 
 公表された外部有識者による報告書では、収賄罪で起訴された前国際統括官の川端和明被告が戸谷次官ら幹部を次々と接待の場に誘い出し、贈賄側業者や政治家などと引き合わせていた構図が浮き彫りとなった。
 
 公務員は、利害関係者から金銭などの贈与を受けることは禁止されている。タクシー代も含めて十万円を超える金額を相手側に負担させていた事例もあったが、接待を受けた幹部らは「政治家は利害関係者ではないので問題はない」と考えていたという。
 
 前の次官が辞任する原因となったのは組織的な天下りあっせん問題だった。高額接待や天下りはいずれも官庁の利権や腐敗の象徴として繰り返し問題視され、防止策も打ち出されてきた。それに無自覚だった組織の体質は前時代的と言わざるを得ない。
 
 ゆがみはどうして生まれたのか、真摯(しんし)に向き合う必要がある。
 
 報告書では組織の「風通し」について言及している。川端被告の誘いの危うさについて情報共有していれば、組織の中で何らかの抑制の力が働いた可能性もあるという意を込めた指摘だ。閉鎖的な土壌が倫理意識の欠如を招いたともいえる。
 
 希望が持てるのは、危機感を募らせた省内の若手から改革を求める声が上がっていることだ。今年七月、有志のグループは次官あてに申し入れを行った。NPOなど省外の人たちの声を政策に反映させることや、部下も上司を評価する三百六十度評価を実施することなどを提案している。そこで求められているのも、まさしく風通しの良さだろう。
 
 接待を受けた官僚たちは、銀座のクラブからタクシーで帰る道すがら、学校の子どもたちの顔が浮かぶことはあっただろうか。一連の不祥事を受けてつくられた、同省のあり方自体を議論する内部組織には若手職員も加わっている。誰のために仕事をしているのか、もう一度原点に返る改革案を打ち出し、再生を急ぐべきだ。
 
 
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