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あなたの価値をAIより高めるたったひとつの方法

9月22日発売の「結局、人生はアウトプットで決まる 自分の価値を最大化する武器としての勉強術」からの引用です。

◉アウトプットの継続が、あなたをブランドにする(18ページ)

「中島さんのように名前が知られるようになると、得することがいっぱいあると思いますが、特に有名になって良かったと思うことはなんですか?」と聞かれることがあります。

これはとても良い質問だと思ったので、前項でも触れた〝パーソナルブランディング〟という観点から考察してみたいと思います。

 

パーソナルブランディング(もしくは、パーソナルマーケティング)とは、通常のマーケティングのように会社や商品を知ってもらうことではなく、個人の名前を知ってもらうことです。それも単に名前を知ってもらうだけではなく、その人の経験や経歴を反映した上で、多くの人がその人を信頼し、発言に耳を傾けるようになることを意味します。

たとえば、皆さんご存じのルイ・ヴィトンが、「丈夫で長持ち」というブランドイメージと強く結びついているように、テスラ社CEOのイーロン・マスクは、「不可能なことを可能にしてしまう偉大な起業家」というブランドと強く結びついています。

イーロン・マスクが経営するテスラ社ですが、現在の時点で大赤字を垂れ流しているにも関わらず、株高を維持し、資金調達し続けることができているのも、彼のブランド力が重要な役割を果たしているからなのです。もしもイーロン・マスクが無名の人物だったとしたら、まったく同じ行動や発言をしたとしても、今のテスラは存在しないでしょう。

アップルのiPhoneがあれほどの成功を収めたのも、「スティーブ・ジョブズ」というブランドが重要な役割を果たしていたことを見逃してはいけません。ジョブズの熱狂的なファンが数多くいたからこそ、アップルはiPhoneのビジネスを一気に軌道に乗せ、他社が簡単には追いつけないだけのシェアを握ることができたのです。

これは、カリスマ性を持つリーダーのいない、ソニーやサムソンにはできない芸当です。

 

日本の企業の中にも、パーソナルブランディングを上手に使っている企業があります。それが任天堂で、「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」などの名作を手がけた宮本茂さんを「スーパークリエーター」としてブランディングし、彼の熱狂的なファンを世界中に何百万人も作ることに成功したのです。

そういう意味では、ソニーも世界を席巻した「ウォークマン」の生みの親は大賀典雄さんだったし、現在も世界中で愛される「プレイステーション」の生みの親は久夛良木健さんです。彼らの名前は世界でも知られているので、その頃までのソニーは、パーソナルブランディングをうまく活用できていたと言えるでしょう。しかし、技術畑の人間ではない出井伸之さんがCEOになってからというもの、製品名に作り手の個人名が紐づくことはなくなってしまいました。

 

パーソナルブランディングには、もちろん実績が必須ですが、だからといって、どんなに大きな仕事をしたとしても、その人の名前が自動的に有名になるとは限りません。

典型的な例が、トヨタのレクサスです。高級車ブランドとしては素晴らしい地位を占めています。アメリカでもそのブランドは広く認知されていますが、一方で、「レクサスの生みの親」については、まったくと言っていいほど知られていません。

「レクサスはチーム力の賜物だ」と反論する人もいるでしょうが、それはiPhoneも同じです。決してジョブズ一人で作ったわけではないのです。しかし、アップルはジョブズというカリスマ性を持つリーダーを巧みに利用し、あたかもジョブズがiPhoneの生みの親であるかのような演出をすることにより、「アップル」「iPhone」「スティーブ・ジョブズ」という3つのブランド力を同時に高め、iPhoneの大成功に結びつけたのです。

パーソナルブランディングが素晴らしいのは、コーポレート・ブランディング(企業ブランディング)よりも広告の費用対効果が高いことにあります。「アップル」「iPhone」「スティーブ・ジョブズ」という3つのブランド力が最高潮に高まっていたスティーブ・ジョブズの時代のアップルは、マイクロソフトに比べ、はるかに低いマーケティング予算で何倍もの効果をあげていたことが知られています。

 

せっかく良い仕事をしていても、誰にも知られていない人(いわゆる「地上の星」)はたくさんいます。いくら実績は素晴らしくても、残念ながら彼らのパーソナルブランドが高いとは言えません。

何が違いを分けるのかというと、要は大衆に向けてアウトプットすることなのです。言い方を変えれば、アウトプットしていないとどれだけいいものを作っても、やがては埋もれてしまうのです。私は、たまたま良いタイミングでブログを書いていたために、知名度が上がりました。「はてなブックマークをできるだけ多く集める」という私だけの遊びが、期せずして私のパーソナルブランドを上げるという意味で効果的だったのです。

タイミング良くウィンドウズ95のソフトウェアアーキテクトというポジションにつくことができた上に、アメリカでも起業経験があるため、「世界で活躍するソフトウェア・エンジニア」というイメージが強く結びつくことになりました。

そのおかげで、さまざまなカンファレンスにスピーカーとして招待されるし、実際のビジネスの場でも、私が顔を見せるだけで商談がうまく進むことがよくあります。有料メルマガに数多くの読者を集めることができたのも、私の名前にブランド力があったからと言えるでしょう。マイクロソフトを退社してからしばらくして設立した「UIEvolution」という会社は、一度スクウェア・エニックスに買収され、その後、MBO(Management Buyout)することになったのですが、この際の資金集めにも、私自身のブランド力が多いに役立ちました。

 

こうやって、私は業界でも名の通る存在となりました。「マイクロソフトでウィンドウズ95を作ったから有名」と思われていますが、実はそうではありません。私はウィンドウズ95を作った実績があるとともに、ブログで発信をしていたからこそ、今の立場を手に入れることができているのです。

一方で、ソニーの大賀さん率いるウォークマンチームのもとで奮闘していたエンジニアは、何人もいるはずです。彼らにも十分な実績がありますが、そのほとんどが世間から認知されていません。もしあの時代にインターネットという手軽なツールが存在していて、私のようにアウトプットしていたら、彼らも一定の知名度を得ていたはずです。講演の依頼が来たり、他社からヘッドハンティングを受けていたかもしれません。

彼らは手軽なツールがなかったために、アウトプットしたくてもできなかったとも言えます。その点、私は恵まれていました。プロジェクトに関わるのと機を同じくして、「アウトプットの時代」が到来したからです。それは、あなたも同じ。いや、私がブログを始めた頃以上にアウトプットしやすくなっています。つまり、昔は地上の星にならざるをえなかった裏方のスタッフたちも、夜空でキラキラと輝ける時代になったということ。

しかし、自分から発信しないと誰も気づいてくれません。アウトプットしやすくなったのは、他の周りも同じですから、積極的に主張していかないと埋もれてしまいます。

知る人ぞ知る地上の星になるのか、夜空で輝く星になるのか。その明暗を分けるのはアウトプットの有無なのです。

ソフトウェア開発もそうですが、それに加えてアウトプットすることによって、身の回りの状況が変化し、たくさんの方々と知り合えることができたのは、とてもありがたいことでした。ブログを通じてたくさんのエンジニアとも縁ができましたし、新たなビジネスチャンスにもつながりました。この本を書いているのもそうです。

その意味では、ブログやYouTubeを通じてコンスタントに「発信し続ける」ことは、今の時代、ものすごく重要だと思います。発信することによって学ぶこともたくさんあるし、長期に渡って発信し続けることがボディブローのように効き、あなたのパーソナルブランディングはじわじわと上がっていくのです。

 

別にブログでも、ツイッターでも、インスタグラムでもいいのですが、アウトプットしてみることで、ある分野で権威を持てるぐらいの位置を目指してみましょう。別にその分野でナンバーワンになる必要はありません。何も、トップだけがパーソナルブランドが高いわけではないからです。

また、アウトプットをしていくそのプロセス自体がものすごく勉強になり、自分の可能性を広げてくれます。アウトプットをすることで、自分自身が成長していくのです。このことに気がついていない人が非常に多く、いつも私はもったいないと思っています。

 

◉ブログをやるなら、実名をさらせ(26ページ)

発信でいうと、日本はことあるごとにムーブメントが起きています。たとえば、ブログブームやミクシィブーム、携帯小説ブーム、ツイッターのハッシュタグ祭りなどもこれに当てはまるでしょう。「控えめ」などと言われる日本人ですが、何かきっかけがあれば熱狂的に盛り上がる日本人の姿を見ていると、「あながちアウトプットが嫌いではないし、むしろ好きなのではないか」と思えるかもしれません。

誰にでも承認欲求がありますから、決して不思議ではないのですが、それらの多くは、本当のアウトプットとは言えません。なぜなら、とても刹那的で浅いアウトプットでしかなく、「本質を理解する」という意味での勉強にもならないし、パーソナルブランディングの確立にもつながらないからです。

そこで、私がおすすめするのが実名ブログです。実名でアウトプットするからこそ、「ちゃんとしたことを書かなければ」というプレッシャーを自分にかけることができるし、中島聡なら中島聡の、あなたならあなたのパーソナルブランドの確立につながるのです。

日本では匿名のブログが多く存在していますが、私が住むアメリカでは大半が実名です。アメリカには、「偽名でなければ書けないことは、読むに値しない」と受け止められたり、「正々堂々とした意見や主張でないと受け入れられない」といった風潮もあります。

また、アメリカの新聞の投書欄を見ても、みんな実名を明かしています。日本なら「50代男性」といった表記が一般的でしょう。また、日本ではラジオ番組のリクエストコーナーでも、多くの人がラジオネームを使っている印象を受けます。アメリカ人が聞いたら、「なんで曲のリクエストをするのに自分の名前を隠さなきゃいけないんだ?」と思うはずです。

ここで、日本とアメリカの優劣をつけたいわけではありません。私がおすすめするのは断然実名。匿名が悪いとはいいませんが、たとえば私のもとに寄せられる誹謗中傷などは匿名のものばかり。果たして彼らは、実名で同じことを言えるでしょうか。こうやって実名にすることで自分の発言に責任が生まれるのです。

実名を公表すれば、発信する内容も下手なことを書けません。大して調べもせずに闇雲に誰かを批判するようなことも、とたんに減るでしょう。下手なことは書けませんから、アウトプットにも深みが増していきます。最近は匿名の人気ブロガーが本を出版したりセミナーを開いて人気を博すこともあるようですが、やはり実名のほうがパーソナルブランドは上がりやすいでしょう。

 

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