伝説になること間違いなしの舞台! TOKYO TRIBEライブレポート

TOKYO TRIBE舞台版! スタンディングオベーションを受ける伝説の舞台に

ダンス、ラップ、演劇を組み合わせた舞台「TOKYO TRIBE」が、10月22日の大阪公演で千秋楽を迎えた! 同舞台は井上三太による大人気コミックを原作とした革新的な舞台で、ヒップホップカルチャーをベースとした日本のラップシーンに燦然と輝く名曲の数々が全編に散りばめられ、ダンサー、ラッパー、俳優、歌手と各分野の第一線で活躍する出演者たちが「TOKYO TRIBE」の世界観を舞台パフォーマンスで好演。
連日の公演は超満員を記録し、スタンディングオベーションが起こるほどの大盛況を生み出した。新たなエンターテイメントの可能性を切り開いた本舞台。公演の模様をライブレポートでお届け!


原作の世界観をリスペクトしつつ、舞台オリジナルの世界観で見せる新たな「TOKYO TRIBE」

架空の街・トーキョーを舞台に、シヴヤSARU、ブクロWU-RONZ、ハラヂュクJINGUSという3つの“トライブ”が繰り広げる抗争を描いた本舞台。
シヴヤSARUで仲間と共に青春を過ごしていたメラは、親友の海と恋人のフジヲと一緒にいるときに、不良に絡まれていた男を助ける。その男はスカンクと呼ばれ、メラに独占欲を抱くほどに尊敬を抱き、自分に振り向いてもらうためにどんどん過激な行動を取っていく。そして、ある日悲劇が起こってしまう。メラに振り向いて欲しいスカンクは、メラの周りの人間が邪魔だと考えるようになり、メラが目を離した隙に、海とフジヲを男たちに襲わせた。フジヲは男たちに信じがたい暴行を受け、失意のまま投身自殺をしてしまう。

TOKYO TRIBE

この悲しい事件をキッカケにメラは失意と責任を背負い、そのまま消息不明に。海は仲間との普段の生活に戻り時間を過ごしていく。そんな中、ブクロWU-RONZに身を属したメラが、シヴヤSARUのメンバーを拷問の末に惨殺。さらに、暴力での解決を良しとしないシヴヤSARUのリーダーであるテラまでも殺害し、事態は抗争が避けられない状態に発生していく。

自分のせいでメラが非道に走ったのではないかと、そのせいで大事な仲間を死なせてしまったという自責の念にかられる海。かつて愛した恋人と同じ面影を持つスンミと出会い、過去のトラウマと戦うメラ。2つのトライブの抗争に巻き込まれてしまった、舞台オリジナルのトライブ”ハラヂュクJINGUS”。3つのトライブが巻き起こす戦いは、やがて真実にたどり着き、意外な結末を迎えることに。

TOKYO TRIBE

原作者の井上三太は、動画インタビューで舞台に対し「舞台は身を委ねているので、好きにしてもらっていい。破壊してもらってもいいし」と、制作側や演者のセンスに任せると発言していた。実際、舞台を見てみると原作の世界観を大切にし、ダンサーやラッパーが舞台に出演するという意味を意識して作られた舞台になっていた思う。特に新トライブである”ハラヂュクJINGUS”は、ヒップホップの5大要素のひとつである”ブレイクダンス”を打ち出したメンバーになっており、常に新しいムーブメントが生まれるトーキョーというワードを背負っている作品に対して、新しい要素を生み出すことに成功していた。


物語を動かす3つのトライブとは

物語のプロローグが終わると、3つのトライブによる抗争が描かれていくのだが、内容に触れる前に、登場するとトライブの詳細をまとめよう。

 

シヴヤSARU
<メンバー>
テラ(KENTHE390)、海(遠山晶司)、書記長(DOTAMA)、権堂(櫻井竜彦)、キム(伊藤今人)、ハシーム(楢木和也)、裸武(野田裕貴)、のりちゃん(當山みれい)
<特徴>
メラがかつて在籍し、海が現在も在籍するトライブ。仲間と平和な日々を過ごしていたが、ブクロWU-RONZの攻撃により、抗争に発展。本舞台の正義側となるトライブで、ストーリーもシヴヤSARUを軸に回っていく。

ブクロWU-RONZ
<メンバー>
メラ(SHUN)、バサラ(RYO)、ビズ(Toyotaka)、ブードゥー(SHINSUKE)、スカンク(遠藤誠)、ブッバ(ACE)
<特徴>
現在、メラが在籍するトライブで、暴力と闇組織を思わせるような黒さを感じるトライブ。本舞台では悪役側となるトライブで、メラの上にブッパという上の存在がいる。物語のキーマンとなるスンミ(宮澤佐江)も、このブッパによって捕らえられていた。

ハラヂュクJINGUS
<メンバー>
號(植木豪)、P-TAN(魚地菜緒)、テンチ(大野愛地)、オロチ(YU-YA)、TNK2(塩野拓矢)
<特徴>
舞台版のオリジナルトライブで、ブレイクダンスのバトルセッションで仲間と楽しく過ごしていた。音楽を愛し、音楽がなければ踊れないという生粋のダンサーたちであったが、シヴヤSARUとブクロWU-RONZの抗争に巻き込まれることに。ここだけラッパーがいないが、のちにシヴヤSARUの書記長が、ハラヂュクJINGUSでラッパーとして覚醒する。

 

以上の3つのトライブが、抗争を繰り広げることに。
廃人のようになってしまった海は、仲間の力もあり戦線復帰。メラの暴走を止めるために立ち向かう。一方、メラは宮澤佐江が演じるスンミと出会うことで、恋人のフジヲを思い出し、次第に心が揺れていく。それを良しとしないスカンクが、スンミを消すために襲おうとするがメラに阻止され、憧れは憎しみに代わりメラとの関係に終止符を打つ。一方、戦いに巻き込まれ一時はシヴヤSARU側に付いていたハラヂュクJINGUSであるが、メンバーのP-TANがブクロWU-RONZに人質として捕らえられてしまい、ブクロWU-RONZ側につき、シヴヤSARUに牙の矛先を向けることに。TOKYO TRIBE

この3つのトライブとメンバーのカラーがものすごくマッチしていて、違和感なく舞台の世界観に入ることができる。ダンスと音楽が主軸になる舞台で、細かい説明がなくても、物語の状況を把握できるのは演者の表現力と練習の賜物ではないだろうか。


ダンスとヒップホップミュージックの融合が心地良い

本舞台はダンスとラップを構成の軸としていて、そのフィックス感が生む新しいエンターテイメントの素晴らしさを感じさせるものになっていた。
ダンス面では、3つのトライブでダンスジャンルが違い

シヴヤSARUは梅棒が振付し、ジャズとミドル系のヒップホップを感じさせる楽曲のグルーヴが伝わるダンス。
ブクロWU-RONZは、Beat Buddy Boiが振付し、ニュースクール系のヒップホップで、黒さを際立たせたダンス。
ハラヂュクJINGUSは、Pani Crew植木豪が振付し、ブレイクダンスでセッションやバトルを重視したダンス。

というふうにトライブが違えばダンスも違うという見せ方と演者のキャスティングが絶妙すぎて面白い。

特にハラヂュクJINGUSは正義側と悪側の両方につくのだが、シヴヤSARUに付いているときは、セッションやクリーンなブレイキンで現代的に。ブクロWU-RONZに付いているときは、バチバチのバトルスタイルで、ストリートカルチャーを感じさせるブレイキンに変わるところが、改めてダンスの奥深さを感じさせた。

さらに、抗争中盤では當山みれいが演じるのりちゃんが、歌唱するシーンがあり、そこでは梅棒が得意とするジャズダンスで歌詞の意味をしっかり踊りで伝えるという見せ場も用意されていて、ここでこの演出入れてくるかという緩急も素晴らしい!

ここまで、さまざまなバイオレンスなシーンが舞台上で演出されてきたが、どれも目を伏せたくなるような恐怖というものはなかった。では、子供に合わせたような柔らかい描写だったのか? それは違う。怖くもないし柔らかくもない、”リアル”なのだ。伊藤今人が手がけるこの舞台の演出は、背景や世界観だけでなく、ひとつひとつの描写がリアルだったように思う。作品が持つ攻撃的なリアルさは壊さずに、観客が不快に思わないような見せ方を演出する絶妙な作りはさすがとしか言いようがなかった。

TOKYO TRIBE

本舞台でダンスと同じく重要なのが音楽だ。KEN THE 390DOTAMAACE、Beat Buddy BoiのSHUNが、本作のために書き下ろしたオリジナルラップも抗争中の場面で使用され、”MIYAVI vs SKY-HIによるテーマソング「Gemstone」”を含め、稀少なヒップホップ音楽が「TOKYO TRIBE」の舞台で鳴り響いていた。
音楽監督を務めたKEN THE 390の、ヒップホップミュージックの歴史を網羅するような選曲とシーンに合ったジャパニーズラップのシナジー感は、心地良いを超えて神業の域に達していたように思う。ダンサーがダンスをラッパーが音楽を作る。ステージングだけでなくクリエイトな部分でもこんなに相性がいいということが分かっただけでも、この「TOKYO TRIBE」は歴史に残る舞台だと言えるのではないだろうか。

TOKYO TRIBE

スカンクがメラの裏切りをブッバに告げ口したことで、抗争は最終局面へ。ステージ上では目で追えないほどのダンスバトルが繰り広げられ、同時にテラ(KEN THE 390)、書記長(DOTAMA)、ブッバ(ACE)のラップバトルが熱量を上げ、激戦がどんどん加熱していく。ハラヂュクJINGUSの人質も救出され、戦いは主要人物たちの一騎打ちへ。メラは一連の黒幕であるスカンクを倒し、海と和解するが瀕死のスカンクに拳銃で打たれてしまう。「認めて欲しかった」そんなスカンクの切実な想いに気づいたメラは、初めてスカンクを認め、長い因縁に終止符を打った。

TOKYO TRIBE

TOKYO TRIBE
海とメラは和解し、最後に残された悪の親玉ブッバを協力して倒そうとするが、ブッバも武器を振り回し半狂乱状態で襲いかかる。メラが決死の攻撃でブッバにトドメをさすが、ここまで戦い傷ついてきたメラは力尽きてしまう。
TOKYO TRIBE


感動のフィナーレ! 圧巻のダンス&ラップライブ

ブッバが倒れ、トーキョーには以前のような平和が訪れた。シヴヤSARUの元にハラヂュクJINGUSがやってきて、ダンスセッションで挨拶をするほどまでに。そして、スンミが現れ、隣にいるだろうメラの影に向かって海は笑顔で迎えた。

最後に光の見えるエンディングなのも、伊藤今人らしい演出だ。やはり最後に救いのある舞台は、見終わっても心地良い。

ストーリーが終わると全キャストが登場し、それぞれ得意とするダンスでキメていく。この時のダンスパフォーマンスが、今までのダンスイベントでは見たことないような輝きを出していたのが印象的。パフォーマンスハイとでもいうべきだろうか。舞台上で快感を感じているパッションがダンスに反映されていて、このシーンだけでもダンスムービーとして成立するような圧巻のパフォーマンスだった。

TOKYO TRIBE

そして、豪華パフォーマンスはこれだけでは終わらない! KEN THE 390、DOTAMA、ACEのラップショーが始まり、3人それぞれのフロウで、会場全体にリリックを叩きつけていく。そこに、舞台中はメラとしてダンスと演技を中心にパフォーマンスをしていたBeat Buddy BoiのSHUNが「俺もラッパー!」と自身最大のパフォーマンスであるラップで参戦。この4人の並び、今後見ることはできないんじゃないかというくらい、最高にかっこいい!

TOKYO TRIBE 舞台 レポート

ダンスとラップが融合し、新たなエンターテイメントを生み出した舞台「TOKYO TRIBE」。舞台が幕を閉じた時、ステージに向けられたのは割れんばかりの拍手と歓声だった。日本のHIPHOPには、伝説として語られる音楽や作品がいくつかあるが、舞台「TOKYO TRIBE」は、その伝説の一つとして語られていくだろう。それほど衝撃を与えるエンターテイメントライブであった!

 

EDIT&TEXT:NOZATATSU


公演概要

TOKYO TRIBE

原作:井上三太(「TOKYO TRIBE2」)

構成:家城啓之 演出:伊藤今人(梅棒)

振付:梅棒 / Beat Buddy Boi / 植木豪

音楽監督:KEN THE 390

キャスト:梅棒(伊藤今人 / 遠山晶司 / 遠藤誠 / 塩野拓矢 / 櫻井竜彦 / 楢木和也 / 野田裕貴)、Beat Buddy Boi(SHUN / Toyotaka / RYO / SHINSUKE)、植木豪、宮澤佐江、當山みれい、大野愛地、魚地菜緒、YU-YA、ACE、DOTAMA、KEN THE 390

おすすめ記事
.