相次ぐ幹部の逮捕と辞任で信頼は地に落ちた――。文部科学省の戸谷一夫事務次官(61)が21日、一連の贈収賄事件の責任を取って辞任した。事務方トップの次官が2代続けて不祥事で引責辞任する事態に同省内からは怒りの声が上がる。戸谷氏自らも贈賄側から不適切な飲食接待を受けており、同省のガバナンス(統治能力)の欠如が改めて露呈した形だ。
2代続けて事務次官が引責辞任した文科省(21日午前、東京・霞が関)
「幹部職員の辞職は極めて遺憾なことであり、心よりおわび申し上げる」。林芳正文科相は21日午前、閣議後の記者会見で謝罪した。「一つ一つ仕事を積み重ねていくことを続けて、文科省に対する信頼回復に努めたい」と厳しい表情で繰り返したが、自らの責任は「省内の調査チームが引き続き調査を続けており、まずはこれをしっかりとやり遂げる。その後に考えたい」と述べるにとどめた。
文科省では2017年1月、組織的な天下り問題で前川喜平前次官が引責辞任。その後任の戸谷氏は当時「信頼回復に向け、全省一丸で取り組む」と抱負を語っていた。しかし、組織を立て直すはずの戸谷氏も贈賄側のコンサルタント会社の元役員(47)が設けた会食の場に同席していたことが発覚した。
相次ぐ幹部の逮捕や引責辞任に文科省内は怒りの声であふれた。女性職員は「次官が接待を受けたと認定されたのなら、辞任するのは仕方がない。接待がダメなのは分かっていたはず。教育をつかさどる省として情けないし恥ずかしい。脇が甘いとしか言いようがない」と話した。
男性職員は「なぜこのタイミングの処分だったのか。接待を受けたという事実がありながら、この間、幹部としてどういう思いで部下に指示を出していたんだ」と憤り、「もっと早く処分できなかったのだろうか」と首をかしげた。
贈収賄事件や不適切な接待では文科省幹部の規範意識の低さが際立つ。「教育・科学行政のあらゆる場面で特定の大学や業者が優遇され、幹部らが不適切な接待を受けているのではないかと疑われても仕方がない」(同省関係者)
ある若手職員は「幹部は組織を改革し若手の意見を反映していくと言っているが、無責任に感じる。もはや外部の人材に省内の改革を任せないとだめかもしれない」とため息を漏らした。
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