POPなポイントを3行で
- クラウドファンディングで4億円を調達したbambooにインタビュー
- エロゲブランドの代表でありCAMPFIREの顧問、そしてmilktubのフロントマン
- 成功しか知らない男が語る独自のメソッドとブランド終了の胸の内
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美少女ゲームブランド・OVERDRIVEが12年の活動の幕を閉じるべく開発するロックンロールADVシリーズ最終作『MUSICA!』(ムジカ)。開発費をクラウドファンディングで募ったところ、8900万円という金額を調達して大きな話題を呼んでいる。
OVERDRIVE代表のbambooさんは、アニメ『バカとテストと召喚獣』『有頂天家族』などの主題歌を手がけるロックバンド・milktubのフロントマンにして、国内最大のクラウドファンディングプラットフォーム・CAMPFIREに顧問としても在籍する人物。
自社ブランド・OVERDRIVEとして、さらにはCAMPFIRE顧問/キュレーターとして調達した累計金額は、5年間で4億円にものぼる。
KAI-YOU.netでは、関わったプロジェクトのすべてで目標金額を達成してきたbambooさんに、2年ぶりのインタビューを敢行。
一般利用者だった立場から、運営としての2年間の中で感じたクラウドファンディングの変化や課題、成功の秘訣について。
さらにOVERDRIVE最終作への思い入れや、その先に見据える次なるステップまで、余すところなく話を聞いた。
取材・文:かーずSP 編集:恩田雄多 写真:稲垣謙一
bamboo 最初の目標金額は3960万円だったんです。達成するのに1カ月ぐらいかかるかなって予定を組んでいたら、30分で目標を達成してしまって……今後1カ月考えていた僕の広報プランはどうなるんだと(笑)。
正直、熱量を舐めてました。ファンの皆さん、舐めててごめんなさい! そして本当にありがとう!! ──これ以上ないスタートダッシュですね。
bamboo と、言いたいところなんですけど、『MUSICA!』が8900万円集めていたとしても、消費税で8%取られる。さらに会社で展開している事業なので、来期の中間消費税の支払いである4%も手元にキープしておかないといけないんです。
仮に1億円集めても1200万円が差し引かれることを考慮する必要があります。「集めた額そのまま全部使えるんでしょ」って、たまに勘違いしている人もいるみたいですけど、いやいやそんな税法は日本にありませんよって。
プラットフォームのCAMPFIREの手数料も17%あるので累計29%、さらに成果物の送料と梱包費用を考えたら全体の4割ぐらいが手元に残らない。
つまり、制作費としてはプロジェクトで集まった金額の6割から7割しか使えません。その金額も試算した上で目標金額を設定して活用しないと、クラウドファンディングは詰むんですよ。 ──ファンのすさまじい熱量によって目標金額を大きく超えた『MUSICA!』も同様だと?
bamboo もちろんです。加えて、単純に金額だけの話でもないですからね。あれだけの金額を集めたことでいろいろな人が「やったじゃん!」と言ってくださるんですけど、熱量=期待値の高さなので、「MUSICA!」が完成するのはあくまでも大前提です。
本当に「成し遂げた、成功した」と実感できるのは、ファンに届けて「おもしれぇぇぇぇぇぇ!」って言わせたときだけなんです。
だから僕に言わせれば、まだスタートすらしていませんよ。たまたまプロデューサーの大きな仕事である資金調達が予想以上の好結果だったというだけです。
bamboo 自分の方程式が、他社のプロジェクトでも通用するのか興味がありました。いままで自社案件で約2億円の調達、外部の案件のキュレーターで2億円以上の調達協力をしてきました。
大きいところでは緒方恵美さんの「緒方恵美、声優デビュー25周年記念企画」やクラムボンの「クラムボン×岩井俊二『日比谷野外音楽堂ライブ』映像化大作戦」など、外部キュレーターとして関わったプロジェクトは100%目標金額を達成してサクセスしています。
そういう意味では、おぼろげながら構築されていた成功の法則が、より具体的かつ明確になりつつあります。【緒方恵美、声優デビュー25周年記念企画】国内&海外に、同時に正規CDを届けたい
bamboo 最もこだわるのは「見え方」。世間的には「お金を集めることってかっこ悪い」という風潮がまだまだあります。ただでさえそういった環境なので、お金の集め方に筋が通っているか、集める過程をエンターテインメントとして見せられるかどうかが結果を左右します。
僕にとっては、クラウドファンディングもmilktubで行っているようなライブの延長線上なんですよ。ファンをどんどん巻き込んでいって、熱量やファンを増やしながら1つの目標や目的に向かっていく。milktub結成25周年記念ライブDVD「M25-TOKYO」
bamboo 十人十色の人生を送ってきた人たちが、同じ価値観を共有する場として集まるのがライブなので、クラウドファンディグには同じような感覚でいます。
──クラウドファンディングの段階からエンタメとして成立していて、見る人を楽しませられるかが重要ということですね。
bamboo とあるメーカーの人に、「bambooさんのクラウドファンディングって資金調達ってよりもパーティの会費集めてるみたいですよね」って言われた事があります。ファンの気持ちになって考えてみてください。いきなり「クラウドファンディングやります。資金調達です。お金をください」っていうのはなんかダサいじゃないですか。
事前にファンと対話して、「僕らはこういう企画をやりたいんだけど、みんなはどう思う?」っていろいろ議論を重ねた総決算として、クラウドファンディングを使うべきですよ。
でも実際のところ、プロジェクトページを公開すればお金が入ってくると思っている人が多すぎます。基本的に未完成なものに対して投資してもらうんだから、メリットとデメリットの説明をしないで、都合のいいことばかり言ってお金を求めるのは失敗するパターンですね。
──クラウドファンディング自体がエンタメなら、そのエンタメに至るまでの準備も必要になりそうです。
bamboo 自分でプロジェクトを立ち上げる前に、第三者のプロジェクトを支援してみると、いろいろ知ることができるかもしれません。プロジェクトオーナーはどんなリアクションをするのか、どれくらいの頻度で活動報告しているのかなど、「見え方」をどこまで意識しているのかという視点で研究するのがオススメです。
あくまでも僕個人の意見なので一概には言えないですけど、いくつかのプロジェクトを支援していると「このオーナーは研究しているな」と感じて信用度が上がります。しっかり研究をしているのかどうか、1つの判断基準として僕は使っています。
平野耕太さんの漫画『ドリフターズ』で織田信長が「戦争はいろいろやってきたことの帰結」と言っていたのと同じで、クラウドファンディングも「はじめる前に何をどれだけ積み重ねてきたか?」の答え合わせなんですよ。
bamboo ゲームの場合、イラストとシナリオのあらすじをプロジェクトページに少し載せて募集するパターンが多いんですけど、個人的にそのやり方が好きじゃないんですよね。
仮でもゲームとして動くものを用意した上で、「この続きを楽しみたいですか?」と問うのが本筋だろうと思ったので「体験α版」を出しました。背景やBGMは過去作の流用、キャラクターも一部を除いて線画ですけど、ストーリーはガッツリ楽しめる。 bamboo 要は人が近づいてくる、応援したくなるようなムードづくりですね。よっぽどのことがない限り、人はゼロからの投資はしないので、まずは自分でつくってみる。僕らも体験α版の制作に数百万円かけていますが、それでダメなら需要がないと判断して損切りすればいいわけです。
──「お金を集めるために自分には何ができるのか」を考えて実践するということですね。
bamboo 当然です。僕はクラウドファンディングとは別に、『MUSICA!』のためにOVERDRIVEで年2回開催するOVERDRIVEコレクションなどのアパレルを売ったり、他所の外注仕事を受けて2000万円ぐらい集めました。たとえクラウドファンディングが失敗したとしても、絶対にこの作品だけはつくりたいと思ったからです。
ファンには覚悟と熱量をちゃんと見せないといけない。頑張っている人を応援してくれる人は必ずいるので、彼らに響かせるためには、それなりの理屈と筋、自分たちが何をやっていたかという信用が必要なんです。
──CAMPFIREの顧問としてキュレーションするときも、ムードづくりや覚悟の示し方を意識しているんでしょうか?
bamboo そうですね。プロジェクトオーナーには必ず「自分がまずお金を出すのかどうか」を聞いています。ファンを巻き込もうという人が、自分たちのやりたいことにBET(賭け)しないのはずるいだろうと、その覚悟を問うわけです。 bamboo まめな活動報告も、進捗が遅れたときの説明も、すごく簡単な言い方をすると「誠実であるかどうか」なんですよ。その上で、クラウドファンディングを成功に導くために必要な6つの要素が揃っているか。
支援したくなる「ムード」、支援者であるパトロンへの十分な「メリット」、プロジェクト自体の「ロマン」、過程を魅力的に演出できる「ドラマ」、達成後も見越した計画的な「予算」、それらを第三者としてみて改善していくための「客観的な視点」。
この6つが伴っていないプロジェクトは、エンタメ性の高いクラウドファンディングの使い方としては物足りないというのが僕の考えです。ファンが払った金額以上の対価を、体験も含めて提供できるのかが大切です。
自社ブランド・OVERDRIVEとして、さらにはCAMPFIRE顧問/キュレーターとして調達した累計金額は、5年間で4億円にものぼる。
KAI-YOU.netでは、関わったプロジェクトのすべてで目標金額を達成してきたbambooさんに、2年ぶりのインタビューを敢行。
一般利用者だった立場から、運営としての2年間の中で感じたクラウドファンディングの変化や課題、成功の秘訣について。
さらにOVERDRIVE最終作への思い入れや、その先に見据える次なるステップまで、余すところなく話を聞いた。
取材・文:かーずSP 編集:恩田雄多 写真:稲垣謙一
CAMPFIRE史上最高額、でも「まだスタートすらしていない」
──7月30日にはじまった『MUSICA!』のクラウドファンディングが24時間で募集金額の200%を達成、そのスピードに加えてCAMPFIRE史上最高の8900万円を超え注目を集めています。bamboo 最初の目標金額は3960万円だったんです。達成するのに1カ月ぐらいかかるかなって予定を組んでいたら、30分で目標を達成してしまって……今後1カ月考えていた僕の広報プランはどうなるんだと(笑)。
正直、熱量を舐めてました。ファンの皆さん、舐めててごめんなさい! そして本当にありがとう!! ──これ以上ないスタートダッシュですね。
bamboo と、言いたいところなんですけど、『MUSICA!』が8900万円集めていたとしても、消費税で8%取られる。さらに会社で展開している事業なので、来期の中間消費税の支払いである4%も手元にキープしておかないといけないんです。
仮に1億円集めても1200万円が差し引かれることを考慮する必要があります。「集めた額そのまま全部使えるんでしょ」って、たまに勘違いしている人もいるみたいですけど、いやいやそんな税法は日本にありませんよって。
プラットフォームのCAMPFIREの手数料も17%あるので累計29%、さらに成果物の送料と梱包費用を考えたら全体の4割ぐらいが手元に残らない。
つまり、制作費としてはプロジェクトで集まった金額の6割から7割しか使えません。その金額も試算した上で目標金額を設定して活用しないと、クラウドファンディングは詰むんですよ。 ──ファンのすさまじい熱量によって目標金額を大きく超えた『MUSICA!』も同様だと?
bamboo もちろんです。加えて、単純に金額だけの話でもないですからね。あれだけの金額を集めたことでいろいろな人が「やったじゃん!」と言ってくださるんですけど、熱量=期待値の高さなので、「MUSICA!」が完成するのはあくまでも大前提です。
本当に「成し遂げた、成功した」と実感できるのは、ファンに届けて「おもしれぇぇぇぇぇぇ!」って言わせたときだけなんです。
だから僕に言わせれば、まだスタートすらしていませんよ。たまたまプロデューサーの大きな仕事である資金調達が予想以上の好結果だったというだけです。
「クラウドファンディングがライブの延長線上」の理由
──この4年間、利用者・顧問という異なるかたちでクラウドファンディングに関わり続けたからこそ、「成功」の2文字には重みがあります。2016年にCAMPFIREの顧問に就任して以降、自身の考えに変化はありましたか?bamboo 自分の方程式が、他社のプロジェクトでも通用するのか興味がありました。いままで自社案件で約2億円の調達、外部の案件のキュレーターで2億円以上の調達協力をしてきました。
大きいところでは緒方恵美さんの「緒方恵美、声優デビュー25周年記念企画」やクラムボンの「クラムボン×岩井俊二『日比谷野外音楽堂ライブ』映像化大作戦」など、外部キュレーターとして関わったプロジェクトは100%目標金額を達成してサクセスしています。
そういう意味では、おぼろげながら構築されていた成功の法則が、より具体的かつ明確になりつつあります。
僕にとっては、クラウドファンディングもmilktubで行っているようなライブの延長線上なんですよ。ファンをどんどん巻き込んでいって、熱量やファンを増やしながら1つの目標や目的に向かっていく。
──クラウドファンディングの段階からエンタメとして成立していて、見る人を楽しませられるかが重要ということですね。
bamboo とあるメーカーの人に、「bambooさんのクラウドファンディングって資金調達ってよりもパーティの会費集めてるみたいですよね」って言われた事があります。ファンの気持ちになって考えてみてください。いきなり「クラウドファンディングやります。資金調達です。お金をください」っていうのはなんかダサいじゃないですか。
事前にファンと対話して、「僕らはこういう企画をやりたいんだけど、みんなはどう思う?」っていろいろ議論を重ねた総決算として、クラウドファンディングを使うべきですよ。
でも実際のところ、プロジェクトページを公開すればお金が入ってくると思っている人が多すぎます。基本的に未完成なものに対して投資してもらうんだから、メリットとデメリットの説明をしないで、都合のいいことばかり言ってお金を求めるのは失敗するパターンですね。
bamboo 自分でプロジェクトを立ち上げる前に、第三者のプロジェクトを支援してみると、いろいろ知ることができるかもしれません。プロジェクトオーナーはどんなリアクションをするのか、どれくらいの頻度で活動報告しているのかなど、「見え方」をどこまで意識しているのかという視点で研究するのがオススメです。
あくまでも僕個人の意見なので一概には言えないですけど、いくつかのプロジェクトを支援していると「このオーナーは研究しているな」と感じて信用度が上がります。しっかり研究をしているのかどうか、1つの判断基準として僕は使っています。
平野耕太さんの漫画『ドリフターズ』で織田信長が「戦争はいろいろやってきたことの帰結」と言っていたのと同じで、クラウドファンディングも「はじめる前に何をどれだけ積み重ねてきたか?」の答え合わせなんですよ。
払った金額以上の対価を体験も含めて提供できるか
──『MUSICA!』における戦う前の準備とはなんでしょうか?bamboo ゲームの場合、イラストとシナリオのあらすじをプロジェクトページに少し載せて募集するパターンが多いんですけど、個人的にそのやり方が好きじゃないんですよね。
仮でもゲームとして動くものを用意した上で、「この続きを楽しみたいですか?」と問うのが本筋だろうと思ったので「体験α版」を出しました。背景やBGMは過去作の流用、キャラクターも一部を除いて線画ですけど、ストーリーはガッツリ楽しめる。 bamboo 要は人が近づいてくる、応援したくなるようなムードづくりですね。よっぽどのことがない限り、人はゼロからの投資はしないので、まずは自分でつくってみる。僕らも体験α版の制作に数百万円かけていますが、それでダメなら需要がないと判断して損切りすればいいわけです。
──「お金を集めるために自分には何ができるのか」を考えて実践するということですね。
bamboo 当然です。僕はクラウドファンディングとは別に、『MUSICA!』のためにOVERDRIVEで年2回開催するOVERDRIVEコレクションなどのアパレルを売ったり、他所の外注仕事を受けて2000万円ぐらい集めました。たとえクラウドファンディングが失敗したとしても、絶対にこの作品だけはつくりたいと思ったからです。
ファンには覚悟と熱量をちゃんと見せないといけない。頑張っている人を応援してくれる人は必ずいるので、彼らに響かせるためには、それなりの理屈と筋、自分たちが何をやっていたかという信用が必要なんです。
──CAMPFIREの顧問としてキュレーションするときも、ムードづくりや覚悟の示し方を意識しているんでしょうか?
bamboo そうですね。プロジェクトオーナーには必ず「自分がまずお金を出すのかどうか」を聞いています。ファンを巻き込もうという人が、自分たちのやりたいことにBET(賭け)しないのはずるいだろうと、その覚悟を問うわけです。 bamboo まめな活動報告も、進捗が遅れたときの説明も、すごく簡単な言い方をすると「誠実であるかどうか」なんですよ。その上で、クラウドファンディングを成功に導くために必要な6つの要素が揃っているか。
支援したくなる「ムード」、支援者であるパトロンへの十分な「メリット」、プロジェクト自体の「ロマン」、過程を魅力的に演出できる「ドラマ」、達成後も見越した計画的な「予算」、それらを第三者としてみて改善していくための「客観的な視点」。
この6つが伴っていないプロジェクトは、エンタメ性の高いクラウドファンディングの使い方としては物足りないというのが僕の考えです。ファンが払った金額以上の対価を、体験も含めて提供できるのかが大切です。
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