数百メートル先からもその大きさを実感できる威容。立ち上る白い蒸気。北海道で起きた最大震度7の地震後、全域が一時ブラックアウトするという前代未聞の事態からちょうど2週間。その引き金を引いたとされる苫東厚真火力発電所(厚真町)の内部を、北海道電力が20日、報道陣に公開した。
ゴオオオオ……。案内された建屋内部では1号機と2号機のタービンが回転する轟音(ごうおん)が鳴り響き、人の声もかき消される。両機は地震時の破損箇所を修復済みで、どこが壊れていたのかを肉眼で確認することはできない。
一方、4号機のタービンを覆う緑色の鉄の箱は、一部が赤茶けて変色していた。「タービンから出火し、火が噴き出た痕です」。北電社員の説明を受けながらカメラのシャッターを切り続けた。4号機では箱の内部も公開された。すでに修繕済みで、所々すすけたような痕もみられたものの「出火の痕跡かは分からない」(北電)。
各発電機のタービンは正常に動けば1分あたり3000回転して発電する。1号機はすでに3000回転に到達、2号機も再稼働といえる3000回転に向けて徐々に回転数を上げている。
2号機は来週前半にも再稼働する見通しだ。すでに再稼働した1号機と合わせ供給力を95万キロワット積み増して冬季の電力需要期に備える。ただ4号機は現在、1分あたり2~3回転という超低速で動かして慎重に動作確認をしている段階だ。復旧にはなお時間がかかりそうだ。
苫東厚真の2、4号機は地震発生直後に緊急停止した。一方、1号機は地震から18分後と時間差で自動停止したことがわかっている。北電火力部の菅原岳宏担当課長は「2、4号機には地震の揺れを検知して発電機を自動停止するシステムが備わっていたが、1号機にはそのシステムは搭載されていなかった」と明らかにした。1号機が何を引き金に自動停止したかについては、いまだ詳細は不明としている。
建屋に隣接する未舗装の駐車場も案内された。広場のようになっている空間の真ん中ほどに、水が噴き出したように路面が数センチほど盛り上がり、火山のように盛り上がりの中心がへこんでいる場所があった。液状化の痕跡だ。
敷地内で液状化が発生した数について、菅原担当課長は詳細な数字は把握していないとしながらも「数十カ所という規模ではない」という。建屋の下では発生しておらず、北電は「復旧作業には影響ない」と話している。建屋では地下深くにくいを打ち込む地盤沈下対策も施されている。ただ、耐震設計は耐震基準上「震度5」相当だったことが判明している。
北電の社員で苫東厚真に詰めているのは約130人。厚真町に住む社員も多く、自らも被災しながら懸命の復旧作業を進めているという。戦後に全国9電力体制が発足して以来、日本で初めてブラックアウトを引き起こしたという「汚名」。これを「教訓」に転じ、2度と同様の事態を引き起こさない覚悟と決意が北電に求められている。
(安藤健太)
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