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うちのヤンデレ彼女がめんどくさ可愛い件 ~俺のストーカーはお前だったのか!~ 作者:赤月ヤモリ
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ep13・ヤンデレ彼女の居る日常。

ブクマ評価感謝です。

 結局放課後に至るまで、マヤちゃんは休み時間のほとんどを俺の席で過ごしていた。


 本日のマヤちゃんの会話比率はこうだ。

 俺、女子、男子9:1:0。

 完勝である。


 因みに俺の会話比率はこうだ。

 マヤちゃん、男子、女子9:0:1.

 本日言葉を交わしたのは、朝の詩織と昼の桐谷委員長だけ。


 一見してハーレムであるが、全てにおいて隣にマヤちゃんがいた。

 と言うか、朝起きてから今までずっと一緒にいる。

 素直にやべぇと思った。


「コウくんコウくん、一緒に帰ろ?」


「いいよ」


 予想はしていたので了承。

 駅まで共に歩き、電車にride on。

 本日は母親の手伝いがあるそうで、寄り道は無しの方向らしい。


 電車に揺られつつ、並んで座る。

 周りには同じ制服に身を包んだ生徒がポツポツと。


 注目はされるが、朝ほどではない。

 一日で最盛期は終えてくれたようだ。


 安堵しつつ、俺は隣のマヤちゃんに目を向ける。

 彼女の手にはスマートフォンが握られており、メッセージ相手には『お母さん』と名前が表記されていた。


「そういえばマヤちゃんの家は母子家庭何だっけ」


「そうだよ。だからあんまりお金ないけど、お母さんが優しいからすっごく幸せ」


「それはよかった」


 そう言ってマヤちゃんが見せた笑顔は、今までの物とは違っていた。

 誰かに見せるための笑顔ではなく、感情を抑えられずに出て来た、曇りの無い笑顔。


 別に今までのが曇っていたと言うわけではないが、本当に母親を大事にしているのが分かった。


「あっ、そうだ! 今度お母さん紹介するね!」


「えっ」


「お母さんすっごく優しいし、料理も上手なんだよ! も、もちろんいずれは越えてコウくんに毎日食べてもらえるように頑張るけど……」


 さらっと将来設計を口にされてちょっとびっくりだよ。

 でも、そうか。母親か……。


「大事にしなよ。って、上から目線にもほどがあるか」


 苦笑を浮かべると、マヤちゃんは一瞬固まって、次の瞬間俺の制服を掴んで必死に謝って来た。


「ご、ごめん。ごめんね。無神経だったね。ごめんね、コウくん。私……」


「大丈夫だよ。もう、十年も経つしね」


 前も言ったが、俺の両親は十年前に死んでいる。

 ストーカーであったマヤちゃんはもちろんこの事を知っていた。


 だからこその謝罪だったのだろう。


 けれど、当時であればいざ知らず、今は叔父さんや従妹、それに詩織が支えてくれたか今は前を向けている。

 そう思うと、詩織にはほとほと頭が上がらないな。


 いつか、マヤちゃんが浮気とか気にしなくなったら、詩織に何か恩返しがしたい。


 そんなことを考えつつ、マヤちゃんの最寄駅で降りて、彼女を家まで届ける。


「あ、あの、本当にごめんね?」


 彼女の住むマンションの前まで来ると、マヤちゃんは僅かに表情を曇らせて謝った。

 先ほどのことをまだ気にしていたのか。


「本当に大丈夫だから、ね? 今はマヤちゃんや他の人も居るから寂しくないしね」


「コウくん……」


 てててっ、と駆け寄ってくるマヤちゃんは、そのまま俺の胸に顔を埋める。


「ありがとう、コウくん」


 それだけ言うと、離れて「バイバイ、また明日」と言ってマンションの中に消えて行った。



  †



 地元の駅に降りると、詩織を見つけた。


 なんだか今日は良く詩織と会うな。


 俺は彼女に声を掛けようとして……寸でのところで待ったをかける。


 今日マヤちゃんに浮気がどうとか言われたばかりなのに、危うく今朝と同じ轍を踏むところであった。


 俺は逡巡した後、ちょっと離れた所から声をかけた。


「よう、詩織」


「……あぁ、コウ。なに?」


「なにって、いや、何してるのかなぁって」


「何って帰るとこに決まってるじゃん。帰ってゲームよゲーム。今日は一日しんどかったから」


「しんどかったって、病気か何にかか? 病院行くなら付き添うぞ?」


 さすがにこれは浮気にはならないだろう。

 疲れている友人を介抱するのも駄目とは、浮気以前に人間として終っている。


 すると詩織はジッと俺を睨み付けてきた。


「な、なに?」


「……別に。それじゃ」


 不満げな声を上げつつ背を向けて立ち去ろうとする。

 俺は慌てて彼女の背中に声をかけた。


「あ、おい! 病院は行かなくて大丈夫なのか?」


「心配し過ぎ。そういう病気じゃないから」


 そう言う病気って何だ。

 じゃあどういう病気なんだよ。


 俺は溜息を一つ溢してから、帰路についた。



  †



 翌日より、これが俺の日常となった。

 朝起きてマヤちゃんと一緒に登校。

 マヤちゃんと話す以外特になく、淡々と過ごす学校生活。

 そしてマヤちゃんを家まで送り届けて、帰宅。


 たまに帰宅時に詩織と会うか会わない、それ以外にほぼ変化はないと言っていいだろう。


 あぁ、あとは風紀委員の桐谷委員長がたまに監視している気がする。


 たまにマヤちゃんが過剰なスキンシップを取って来た時に止めてくれるので、俺の理性は何とか暴走せずに済んでいた。


 これが俺の新しい日常。


 マヤちゃんは可愛いし、優しいし、尽くしてくれる。

 これ以上なく『俺に都合がいい彼女』だ。


 正直、惹かれていく自分がいるのを感じる。


 でも、何だろう。

 贅沢な話なんだろうけどさ。


 ――楽しくはなかった。



  †



 そんな日常が一週間ほど続き、朝。


 本日、マヤちゃんは用事があるので迎えに行けないとの事。

 そんな訳で久しぶりになる一人の登校を行おうとして、ドアを開けて俺は絶望に声を漏らした。


「嘘、だろ……?」


 性格には郵便受けを開いて声を漏らした。


 中には二つの封筒。


 一つ目は『浅間マヤと別れろ。』


 と脅迫めいた内容の物。

 パソコンで打ち出したのか、筆跡を辿るのは無理だろう。

 住所を突き止められたのは驚きだが、覚悟はしていたので、大丈夫。


 だがもう一枚は別であった。

 同じような封筒に入っていたのは、これまた同ように打ち出しただろう文章の紙。


 そこには――。


『俺は長宮詩織の秘密を知っている。』


 あたまが真っ白になった。

次→明日はお休み。明後日の夜。

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