魔導国の日常【完結】 作:ノイラーテム
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(そういえば、前にこんな話を聞いたことがあるな。誰だっけ…えーっと、ぷにっとさんに聞いたんだったかな)
アインズ・ウール・ゴウンの孔明と呼ばれた男の会話が脳裏に蘇る。
イベントで実装された中の、未解明エリアの一つをギルメンだけで回り切った時の事だろうか?
他にもコラボの思い出があるので、KADOKAWA感謝祭で行われた、連続コラボの一つだったはずだ。
「こんな話を知って居るかな? ある時、見世物小屋に一つ目怪人が連れて来られた…」
「確か、自分も見世物小屋をしようとして、捕まえに行ったら逆に捕まる寓話でしたっけ?」
何人かのギルメンが同意して頷くのだが、そこが首なんだ…と思ったのが印象的だった。
なにしろマクロ・コマンドで『頷く』動作はあるが、種族によっては判らないのが多いからアイコンで…。
…っクソがっ。
思い出し笑いをしようとして、アインズの感情が抑制されてしまった。
続きは何だっけ…えーと。と楽しい思い出を追い駆け直す。
「今回のポイントは主観性で状況が変わると言う事なんですよ」
「つい、絶対量が多い方を正しいと思い込んでしまいますよね。たった一人の、それも見世物小屋の出し物を見ただけで…」
相手の考えに気が付いたと思って、先回りしようとした時、フルフルと首の様な何かが横に動いた。
アレ? 何か間違えたかと当時は思ったのだが、どう考えてもおかしい所は無い。
あえていうなら、この話のポイントは…じゃなくて、今回の。ということだろうか?
「違うんですか? てっきり、迂闊に情報を信じてはいけないって忠告かと」
「モモンガさん達はいつから一つ目怪人が、同レベルの相手だと思ったんです? 単眼巨人キプクロスだって一つ目じゃないですか。弓の為に片目に成ったアマゾネスかもしれませんよね」
だからこそ、今思い返せば、詐欺臭い手口に感心してしまう。
いわゆる、叙述トリックというやつだろうか?
「野生のロリっ子落ちてたら…。それだったら確実に捕まりに行きます!」
「巨人のティムが可能なら冒険する価値があるな。強いだろうけどロマンもある。例えばこう…背中に立って薙ぎ払え! とか」
「倒しにいけばジャイアントスレイヤーの称号とか、巨人族に伝わる秘宝も良いですよね」
アインズは続く仲間の言葉を思い出して、できるだけ思い出が途切れないように、噛み締める様にして懐かしんだ。
今はもう会えない仲間達の事を思い出しつつ、続く軍師の言葉を思い返していく。
「要するに情報は手に入れた段階から、汚染している可能性があります」
指に当たる部分を立てながら、ぷにっと萌えは当然の様な説明を行う。
つまりは、大前提から嘘を吐けば状況自体が動かせるのだ、と。
「分母と分子を計算すれば、汚染する事も可能だということです。例えば先行して狩りをしてる我々が、次から全員、特定の装備を付けて居たら? 今は一人も所持して居ませんが?」
「っ! あのイベントから隔離できるかもですね。そしたら暫くは独占できるかも」
「アンチで固めてPKしてもいいな。これは一回・二回だろうけど。…種族特攻同士の相克はなんだっけ? 何かが五割増しになったはず」
確か、あの時は特定の種族に有利に成るアイテムを持っていると、始まらないイベントがあったのだと思い出した。
その時のコラボ『トリニティ・ブラッド』は、吸血鬼が大規模に出現するイベントなのに、アンデッド・スレイヤーを持って居たら始まらないイベントが存在した。悪の吸血鬼を狩る、正義の吸血鬼の話ってどういうことよ…とか皆で笑いあった物だ。
勿論、タブラさんみたいに連続コラボの全てを網羅する原作スキーなら、話は別なのだろうが、思いつける全員が行動する訳でも、仲間に吸血鬼が居る訳でも無い。
ルールが判明するまで、盛大にバンパイア・スレイヤーのクリスタルを売り払い、専用クラスの鬼強データを愉しんだものである。
(吸血鬼オンリーのギルドから、クリスタル売るな! って言われてたのに、専用職もあるって判った瞬間に、いきなり転職条件教えてくれって頼まれたのも良い思い出だなぁ…)
アインズはそんな思い出を心の奥に仕舞いながら、なぜ今の話の最中に思い出したのかを、擦り合わせし始める。
今は異種族交流の話題の最中。
(つまりは、大前提から状況を動かし、観念を汚染してしまえば良いって事だよね。ぷにっとさん)
モモンとして出来る事を分子に、アインズとして出来る事を分母に持って行くのだ。
そうすれば、上手く交流させれるに違いない。
「冒険者全てが異種族を許容できる訳でもないし、そちら側方面に行きたいと思うかは別です。ですが…興味があって、交流しても良いと思う数名を厳選、例えばラケシル殿やミスリル以上に限り、カルネ村で試せば良いでしょう」
「オレはもうゴブリンなんかじゃ驚かないぞ! だからカルネ村でドワーフに会うには問題無いってことだな」
モモンの誘導に従ってラケシル、そしてアインザックも自分の知識に照らし合わせていた。
(よしっ引っかかった。後は冒険者10人、ゴブリン50人くらいにしとけばいいかな。…いや待てよ、40にしてリザードマンも10人ほど入れておくか)
実際に会わせる時は、アインズとして人数を調整しておけばいい。
村の外で呑気に護衛をやってるゴブリンや、周辺で採れない物を交換しようとするリザードマンならば冒険者も異和感を持たないだろう。
同時に冒険者の方も、訓練で顔を合わせて居るモックナックなど、もう直ぐ上がれる連中を中心に据えれば良いのだ。
やがてモックナック達がルーンの武器を手に入れ、ゴブリンの案内で依頼をこなし、オリハルコンになったと知れば…。
修行してカルネ村に行きたいと言う者や、訓練にやって来るメンツなど、話の判るゴブリンも居ると認識する者も出て来るだろう。
そして重要なのは、逆もまた然りということだ。
(それはリザードマン達にも言える。出会う連中を順繰りに入れ換えておき、次にはオリハルコン冒険者をリザードマン30~50人とってやれば良いよな。元に戻した後で交易もし易いはずだ)
人間と出会って、人間の中にも話が判る連中が居ると知れば、次第に人間社会に出て来る者も増えるだろう。
もちろんアインズとして機会を作ったり、話題や場所を提供する必要もあるだろうが…。
そんな風に、大前提そのものを動かして誘導してやれば、今は進まない異種族交流も上手くいきそうである。
一つ目怪人の寓話から、トロイの木馬に逆転させると言う訳だ。
(なんだろう? 最初はどうでも良いと思ってた街道敷設の話が、段々と布石として面白くなって来たな)
街道敷設の効率があがれば、アンデッドの人足が認知される。
街道が伸びて人が来たから、異種族交流を始める。
(難しい案件だから直に確認したいと言えば、モモンとして見守っても良いよな)
そして見守るのはモモンとしての自分!
完璧な理由で政務を放りだせると自画自賛して、スケジュール調整と、責任者を任せたレイバーと顔を合わせる事を思いついた。
アインズとして命じれば遠ざけるという事になってしまうが、レイバーから腕利きかつ異種族に偏見が無い者として、責任者から来てくれと頼まれるなら、むしろ逆だ。
前からある、モモンの名声を徐々に変換し、アインズとしての親しみを持たせるという計画にもバッチリであるし、要請を受けて国から派遣するなら何の問題も無い。
(じゃあ、友人のアインザックから紹介してもらうのが一番だよな。どうしよっか)
先ほどタレントの件で名前があがったから、話す理由にはなるが、そのまま街道の話題に繋がる訳ではない。
なら…。
「話は変わりますが、先ほどレイバーと言う名前が出てきましたが、お二人から話を窺ったのは初めてですね。例に出すにしても他にも居られたはず。もしや魔導王がらみか異種族問題で何か?」
「ん? ああ…そうだな、街道が向こうに伸びるなら、今の話の延長と言えなくもないな」
「あいつの街道プランを推薦したんだよな。前にオレが贈った地図の話に絡んで居てな…」
話を聞くと昔の友人で、どちらかというとラケシルに近い友人関係らしい。
そういえば魔術師の才能が無いとか言ってたし、同門を叩きはしたが…とかだろうか?
アインズはそんな事を考えながら、カルネ村行きの途中で紹介すると言う話を受けたのである。
捏造イベント『トリニティ・ブラッド』
KADOKAWA感謝祭で行われた、連続コラボの一つ。
吸血鬼が無数に現われて、あちこちで騒ぎを起こすお話。
アンデッド・スレイヤーをパーティの誰も所持していないと、途中で吸血鬼を狩る吸血鬼が出現するのだとか。
この正義の吸血鬼クースルニクは特殊な種族で、吸血鬼の血を吸うと劇的な強化がされる。
また特殊クラスであるバンパイアハンターへの転職条件、特殊効果のバンパイア・スレイヤーのデータ・クリスタルが手に入る。
悪の吸血鬼クドラクが大量発生する大規模レイドの中で、パーティに誰もアンデッド・スレイヤーを持って居ない状況で始めなければ成らないという条件はかなりキツイ。
だがアインズ・ウール・ゴウンは異形種ギルドゆえ、種族特徴で持てない者と後衛だけで造ったチームがあり、そのチームが発見したとか。
同時期に『ロードス島戦記、火竜山の魔竜』や、『風のムー大陸』、『アルスラーン戦記、ザッハーク討伐戦』、『ハレハレユカイ』、『宇宙巫女』、『ゴシックメイド』、『幼女戦記』などがあったという。
ゴシックメイドにはホワイトプリムが忙しくなっていたはずなのに帰還。何故か幼女戦記ではペロロンチーノが軍人口調に変化、ぶくぶく茶釜はハレハレユカイの時には居なかったという。
と言う訳で
1:カルネ村周辺で、ちょっとした人数変化。
あら不思議、初心者でも付き合い易い割合に!
2:レイバーと顔見知りになって、モモンさん(アインズ様)も街道敷設に顔出すよ!
3:ミスリルはカルネ村、オリハルコンはリザードマンの村までという認識。
モモンはアダマンタイトだからドワーフの国へ姿消すけど仕方無いよね!
という感じのイメージが浸透することになります。
現地に居る異種族たちの意見? そんなものを聞く必要が無いので、アインズ様は聞いておりません。
ああいう世界観だと、支配された一族は価値のある財産なので、仕方無いですよね。
追記:
新しく始めた新着報告とは、冒頭の文章が若干違っております。