「裁量労働制」の対象拡大、議論再開へ…労働実態どう調べる? 検討会がスタート
「裁量労働制」で働く人の労働実態調査の方法を考える厚労省の専門家検討会(座長:早稲田大学・西郷浩教授)が9月20日にスタートした。メンバーは統計学者や労働経済学者、労使の代表ら。年内をめどに調査設計について議論を整理する。
裁量労働制(企画業務型)の対象拡大は、先の通常国会で成立した「働き方改革関連法」の目玉とされたが、元になる調査データに不適切な処理が発覚し、法案から削除された経緯がある。
財界が対象拡大を希望しており、政府も新たに実態を調査した上で、法案を提出する方針だ。
検討会の冒頭、厚労省労働基準局の坂口卓局長は、「(データ問題を)しっかりと反省して裁量労働制の実態について正確に把握する」「国民の皆さまに疑念を抱かせてしまったので、払拭もやっていかないといけない」と発言した。
●「労働者と事業主への調査」になる可能性が高い
第1回のこの日は、調査対象や調査事項などについて、メンバーが自由に意見を出し合った。
問題となった厚労省の「労働時間等総合実態調査(2013年度)」は、事業者のみに労働実態を尋ねる形式。検討会では、この点も踏まえ、事業主と労働者それぞれを調査すべきという意見が大勢を占めた。
事業主と労働者についての調査では、厚労省所管の独立行政法人「労働政策研究・研修機構(JILPT)」が同じく2013年に実施した調査がある。一方で、回答率は事業主が約3割、労働者が約2割だった。
質問事項について、メンバーからは「裁量労働制の適用前後で、労働時間がどう変わったかを尋ねるべき」など、多くの意見があっていたが、質問項目が増えると回答率が下がると予想される。
政策を左右しかねない調査だけに、(1)回答率とのバランスを考慮しつつ、実態把握のために有用な調査項目を精査すること、(2)裁量労働制と一般の労働者の比較を視野に入れながら、調査対象をどのように抽出していくか、などが今後の課題になっていきそうだ。
第2回は10月下旬頃の予定。