北朝鮮、一部ミサイル施設の廃棄で合意 南北首脳会談で共同宣言
19日に平壌で行われた南北首脳会談の後、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「9月平壌共同宣言合意書」に署名した。共同記者発表で文大統領は、金委員長が北朝鮮のミサイル実験・発射施設1カ所の廃棄に合意したと発表した。
共同宣言に署名した両首脳は記者発表に臨み、「非核化達成に向けた道筋で合意した」と文大統領が明らかにした。
一方、金委員長はこの合意を朝鮮半島の軍事的平和に向けた「躍進」だと説明した。
金氏はさらに、「近い将来、ソウルを訪問したい」と話した。実現すれば、北朝鮮の指導者として初めて、韓国を訪れることになる。
南北両国はこのほか、鉄道の相互接続や離散家族の再会、医療分野での協力なども計画しているという。
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「核の脅威がない平和の地」
文大統領は合意書署名の後、金委員長が「東倉里(トンチャンリ)のミサイル・エンジン実験施設と発射設備を、関係各国の専門家の立会いの下、永久的に廃棄することに合意した」と話した。
金委員長はさらに、米国が相互措置をとった場合に限り、寧辺(ヨンビョン)核施設の永久的な廃棄など追加措置をとる用意があると表明したという。
共同宣言で両国は、非武装地帯をはじめとする地域での軍事的敵対関係を終え、朝鮮半島全体における実際の戦争の危険を取り除き、根本的な敵対関係の解消につなげると合意した。
さらに両国は、朝鮮半島を核武器と核の脅威がない平和の地にするため、実質的進展を速やかに実現するという認識で一致した。
両国はさらに、2032年のオリンピック南北共同開催を目指す方針。
この日は首脳会談に加え、韓国の国防相と北朝鮮軍のトップが軍事的な緊張緩和に向けて合意している。
文大統領は18日から3日間、平壌を訪れている。
韓国の大統領による北朝鮮訪問は11年ぶりで、両首脳が会うのは4月の歴史的な会合以降、3回目となる。
6月の歴史的な米朝首脳会談の成果を実現したいドナルド・トランプ米大統領はただちに、南北両首脳の合意をツイートで称賛し、「金正恩は最終交渉を条件に核査察の受け入れに合意したほか、各国の専門家の前で実験場と発射台の永久的廃棄に合意した。この間は、ロケット実験も核実験も行われない。英雄たちの遺骨は引き続き、米国に帰還する。加えて、南北朝鮮は2032年五輪の共同開催に一緒に名乗りを上げる。とてもわくわくする!」と書いた。
外交専門誌「ディプロマット」のアンキット・パンダ編集長はBBCに対して、「この結果は文在寅大統領にとって、大きな勝利だ。非核化についていくつも、前向きな見出しになる内容を金正恩から引き出したのだから」と話した。
「情報内容はどれも金委員長にとって本当の意味で負担になるようなものではなく、短期的な核放棄に向けて北朝鮮がこれで前進するわけでもない。しかし、米朝協議が前進を続けるための信頼構築への足がかりとなる」
突破口を見つけた
北朝鮮は今年、韓国と米国と前例のない会談を繰り返している。
しかし非核化に向けた米朝間の努力はこのところ行き詰っており、韓国が仲介役として役目を果たすことが期待されていた。
6月に行われた米朝首脳会談では、ドナルド・トランプ米大統領と金委員長が、非核化に向けた大きな枠組みで合意している。
しかしその後、進展はほとんど見られず、非核化に関する明確やプロセスや時期も明らかになっていなかった。評論家らは、北朝鮮が核開発プログラムを終わらせるための意味のある段階を何も踏んでいないと警告していた。
米国は先に非核化を進めてから経済制裁の緩和を行いたい考えだが、北朝鮮は譲歩に応じて米国が経済制裁の手を緩めていくような段階的なプロセスを望んでいる。
こうした行き詰まりを受けて米国は先月、進展が見られないことを理由にマイク・ポンペオ国務長官の北朝鮮訪問を取りやめた。
しかしトランプ大統領は、次期米朝首脳会談への招待を受け取った後、金氏と共に「みんなが間違っていたことを証明する」と話した。米朝両国は、この2度目の首脳会談の実現に向けて動いていると発表している。