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地球最深部マントル近くに生命体「常識はずれの微生物」発見

 地球の核に近いマントル由来の岩石から湧き出る水に、特異なゲノム構造を持つ常識はずれの微生物が生息していることを海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの研究チームが、米国で突き止めた。

 

 海洋研究開発機構の鈴木志野特任主任研究員らは、米国のゲノム研究機関や南カリフォルニア大学などと共同で、カリフォルニア州ソノマ郡にある「ザ・シダーズ」と呼ばれる場所で、蛇紋岩から湧き出る地下水の調査を実施した。

 

 岩肌に蛇のような紋様があることから名付けられた蛇紋岩は、地球の奥深くのマントル上部を構成するカンラン石が、地殻変動やマグマの上昇などによって隆起。水と反応することで蛇紋岩化し、pH11を超えるアルカリ度の高い湧き水ができる。

 

 研究者の間では、この一連の蛇紋岩化反応は、約40億年前の地球誕生直後の環境と似ていると考えられており、こういった過酷な環境で生きられる生物が、生物の進化の歴史を紐解くメカニズムを残している可能性があると言われている。

 

 研究チームは、ザ・シダーズにある2つの蛇紋岩から湧き出る地下水を採取して、そこに含まれる微生物のゲノム解析を行った。57個の微生物のゲノムについて調べた結果、呼吸をつかさどる遺伝子が存在せず、呼吸していない可能性が高いことがわかった。

 

 さらに、いくつかの微生物は、生命活動に必要な酵素を作る遺伝子がないことも判明した。地球上には、昆虫の体内で生きる細胞内共生微生物を除けば、あらゆる生命がこの酵素を持っており、この微生物は、生命の常識を覆すような、エネルギー生成メカニズムを持っている可能性があるという。

 

 ザ・シダーズの湧き水から最も多く検出されたのは、謎に満ちた未知の細菌群(Candidate Phyla Radiation=CPR)ばかりで、既知の微生物のなかでは、最もゲノムサイズが小さい生命であることがわかった。

 

 研究チームは、「栄養分や生命活動に必要なエネルギー供給源が乏しい地球内部に生息する微生物の環境適応能力を解明することで、生命進化の歴史や多様性の謎を知る手がかりにつながる」と述べている。

 

 なおこの研究成果は、英科学誌『ISME Journal』電子版に掲載された。

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