朴大統領醜聞に火をつけたのは中国か米CIAか?
2016年12月10日 金子秀敏 / 毎日新聞客員編集委員
朴槿恵大統領を模した人形=ソウル市内で行われた抗議デモで2016年12月3日 韓国では朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求める世論が渦巻いている。大統領の古い友人、崔順実(チェ・スンシル)被告一族らへの利益供与疑惑で検察の捜査が始まった。 国会は大統領弾劾訴追に動いている。ソウル市内では大規模な抗議デモが続き、ついに大統領は「4月退陣」を受け入れた。
それにつけても朴大統領のスキャンダルが暴露されてから退陣要求デモまで、なんと展開が速いことか。裏に大統領退陣を急ぐ勢力がいるからに違いない。 最近では、「韓国版ロッキード事件」の陰謀論もちらちらする。
今回の件は、中国のニュースサイトの裏目読みがわかりやすい。10月末、中国火星財経記者聯盟の配信記事がこう報じていた--。 中韓会談決裂から1カ月後に朴大統領スキャンダル 9月初め、中国浙江省の杭州で「主要20カ国・地域(G20)首脳会議」が開かれ、その会場で中国の習近平国家主席と韓国の朴大統領が会談した。 この席で、習主席は、米国が韓国国内に配備しようとしている「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の受け入れを取り消せと厳しい口調で朴大統領に要求した。
2016年9月5日付の毎日新聞大阪夕刊 米軍が超高性能レーダーを持つTHAADを韓国に持ち込むのは北朝鮮のミサイルを迎撃するためだが、中国にとっては、そのレーダーで中国軍の動きが丸見えになるから安全保障上の重大な脅威になる。 だが、会談は決裂した。その1カ月後、朴大統領と崔氏の機密情報漏えいスキャンダルが洪水のように韓国メディアに流れた。 スキャンダル報道をリードしたのは有料テレビ局JTBCだった。同局が、崔氏の廃棄したパソコンをどこからか入手して、 データを復元、分析したところ、崔氏と大統領のメールのやりとりを発見し機密漏えい事件として大々的に報じたという奇妙な発端。
火星財経の解説によれば、習・朴会談が決裂した後、中韓関係は急速に冷却し、中国当局の圧力で韓国人タレントの中国公演が中止になるなどの影響が出た。
中国に進出した韓国財閥は、中国を怒らせた朴大統領の退陣を望むようになり、韓国最大の財閥「サムスン」グループ系のJTBCをはじめ、 財閥系メディアが朴大統領スキャンダル報道を競ったという。
その背後に中国の圧力があったと火星財経は書いていないが、中国メディアも朴スキャンダルを大きく報道している。
「朴槿恵退陣」などと書かれたプラカードを手にした市民ら=ソウル市の光化門広場で2016年11月5日、大貫智子撮影 CIAがスキャンダル流布との怪情報も さて韓国の一部メディアでは、崔氏が韓国軍の次期主力戦闘機の機種選定に介入して、ロッキードマーチン社製のF35に決めさせたがロ社に手数料を要求して紛糾し、 ロ社製のTHAAD設置が遅れている、また米中央情報局(CIA)が崔氏を排除するためにスキャンダルを流布している、などの怪情報も流れている。「韓国版ロッキード事件」だ。
朴槿恵大統領=ソウル市内で2015年6月22日(代表撮影)
だが、軍用機の機種選定にはいくら大統領の親友でも介入するのは難しい。スキャンダルがCIA発だというのも疑わしい。 米国に利益がないからだ。朴大統領を退陣させてTHAAD配備を白紙に戻そうという陰謀なら、米国発ではない。
|
この記事に
コメント(0)