欧州全域でガチャ規制論議が幕開け - Y!ニュース  個人

翻って、そもそもルートボックスは我が国においては一般的に「ガチャ」と呼称され、欧米圏に先行する形でゲーム業界のビジネスモデルとして定着し、また未だ我が国は世界でもトップクラスの市場を形成してきました。にも関わらず、こういう論議が我が国からは起こらず、後発のハズの海外から発信されてくる辺りに我が国のゲーム産業の特殊性といいますか、いわゆる「ガラパゴス」な現状が現れているのかな、とも思うところ。 

基本的に、「ガチャ」は日本においてその定義上「賭博」ではない。

「ランダムあるいは一定の確率で何らかのアイテムが入手できる」というクジ引き的な形態をもってギャンブルと同一視されるのは仕方がない。もちろん上記記事の筆者はそのような間違いはしていない。そしてぼくも、「ギャンブル」と「賭博」をわざと分けて書いている。上記記事は「ギャンブル」の話だ。

さて、賭博とは何かということについて、「(1)偶然性をもって」「(2)得喪を争う((3)"財物"を得る/喪う)」のように分解してみる。
別の解釈があるのではないか、という御仁もいるだろうが、そういう発想ができる人やガチャに対して論理的に一家言ある人をこの文章は対象にしていない。速やかにお引き取りください。

(1)は、偶然性を扱わないゲームはほとんど無いので、有無を取りざたする必要はないだろう。

(2)において、基本的に、利用者がガチャを有料で実施する際に、支払額が100円なら、100円分のアイテムが使用できるようになっているというのがガチャの建てつけである。
※ ここでは「100円分のアイテムが使用できるようになる」のは利用権の販売なのか、アイテムデータという資産の貸与なのかという論議はしない。

いわゆる"スカ"(お金を払ったのにガチャから何も出てこない状態)が前提となっているガチャは存在してはならない。そんなものがもしあったら、『JOGA安心安全ガイドライン窓口』に速やかに通報すべきだ。

もちろん、この何も出てこない状態に「システムのトラブル・故障等で一時的に出なかった」「自分にとって価値を感じられないクソアイテムが出た」は含まれない。前者は運営によって何らかの改修や補填等カスタマーサポートが得られるべきものであって、後者は感じ方の問題である。
※ ここでは、個人の感じ方の論議や、アイテムがクソで無価値に感じられるゲーム設計をしているのではないかという論議はしない。

そして(3)の「財物」だが、ゲーム内アイテムは財物ではない。
「RMT(Real Money Trading)できるから財物ではないか?」という推論を否定はしないが、サービス外で金品が利用者間を移動することと、ゲーム内でアイテムが移動するということに物理的な繋がりは無い。アイテムが「移動」しているように見えても、ゲーム会社のサーバー内にあるデータが書き換わっているだけであり、そもそも、ゲーム会社のサーバー内にあるデータはゲーム会社のものである。
すなわち、これについてはまず「ゲーム会社のサーバー内にあるデータを、わが物のように勝手に他人へ売却する行為」をどうにかしなければならないという別の問題だ。
※ ここでいう「ゲーム」には、イーサリアム等を用いた『ブロックチェーン・ゲーム』は含まないことにする。

ということで、(2)(3)は満たさないですよね、というのが「ガチャは賭博ではない」という話。

で、最初に書いたとおり「賭博とギャンブルは違うってことですよね?」という意見は当然のように出てきて、「公営ギャンブル」とは言うけど「パブリック賭博」とは言わないよねとか、身近にある言葉を置き換えれば詳しくない人でもなんとなく理解できる。
「ギャンブル」は、それこそ(2)(3)に拘泥しない幅広いレジャーを指すことができるだろう。だが、議論をするときに定義を共有せずにこれをすることは大変危険だ。言葉遊びに終始するのもよくない。

「何となく」「もやっと」「気に入らないから」「海外でこういう考えが主流だから」というところから容易に規制は始まる。
そうでなくても、国際的にEUとどう関わっていくかで、冒頭の記事に記されている海外での議論に「足並み揃え」をしなければならないという政治的な事情をもって、何らかの方向へ進むというのも考えられる話である。
さらには、スマートフォンOS企業の「開発者規約」という金科玉条の更新をもって、ある日「ガチャ禁止、ガチャのあるアプリは一斉にストアから削除」が施行されるかもしれない。

……そんなRMTのことや、ブロックチェーン、仮想通貨を用いて換金できるゲームが流行ったらどうなっちゃうの?ということにもガッツリと触れている小説を書きましたので、皆さまお読みいただければ幸いです。

ブロックチェーン・ゲーム』沢しおん - カクヨム

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