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この国で、地方移住がまったく進まない根本理由が分かった

魅力はあれど、支援がナシでは...

このところ地方移住への関心が再び高まっている。安倍政権がアベノミクスの一環として地方創生を掲げたことや、石破茂元幹事長が自民党総裁選への出馬に際して地方創生を全面的に打ち出したこともあり、このテーマがメディアに取り上げられる機会も増えてくると思われる。

一方、地方移住にはトラブルがつきものであり、理想と現実はだいぶ異なる。地方移住が漠然とした希望であるうちはそれでよいが、本格的に移住を考えるのであれば、相当な下調べが必要だ。

 

若年層の移住希望者が増えている

国土交通省の調査によると、20代の4人の1人が、それ以外の年齢層の6人に1人が、地方移住について関心を持っているという。地方移住の支援を行っている、特定非営利法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター(ふるさと回帰支援センター)への来訪や問い合わせ件数はこのところ急激に増加しており、10年間で10倍以上となっている。

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支援センターへの問い合わせ件数については、地方創生という政策強化によってセミナーの開催件数が増えるなど、別の要因があるため、数値の増加がそのまま関心の高まりを示しているわけではない。だが、地方移住を取り上げたブログやSNSにおける関連投稿の状況などを考えると、関心を持つ人が増えているのは間違いないだろう。

もっとも、関心が高まっているからといって、多くの人がすぐに移住を決断するとは限らない。先ほどの国土交通省の調査においても「親世代との同居もしくは近居」「中古住宅の取得」といった項目も、地方移住と同じくらいの関心度合いになっている。

興味深いのは、地方移住に関心を持つ人の属性が年々変化していることである。

ふるさと回帰支援センター利用者の年齢構成は、2008年には50代が27.9%、60代が35.1%と圧倒的に中高年が多かった。だが2017年では20代が21.4%、30代が28.9%と若年層と高齢者が完全に入れ替わっている。

若年層の関心が高まっているのは、経済的な問題と関連している可能性が高いだろう。
 
ここ数年、日本の労働者の実質賃金は下がる一方だったが、若年層の賃金の下がり方は尋常なレベルではなかった。一部の若年層労働者は、都市部の物価では暮らすことそのものが困難になっており、これが地方移住に対する漠然とした関心を高めていると考えられる。