特別企画が組まれている「新潮45」10月号

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『新潮45』8月号に掲載された、自民党の杉田水脈衆院議員の寄稿「LGBT支援の度が過ぎる」は、大きな批判に晒された。7月下旬には、自民党本部前で杉田氏の議員辞職を求める大規模なデモも行われた。

自民党は8月、党サイトで杉田議員について「本人には今後、十分注意するよう指導した」と釈明した。杉田議員は自身のツイッターで主張への批判に反論していたが、その後、殺害予告が届いたことを理由に関連するツイートを削除。8月2日以降、新しい投稿はない。

こうした中、9月18日に発売された『新潮45』10月号では「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という特別企画が組まれている。この企画では、新しい歴史教科書を作る会・副会長の藤岡信勝氏や文芸評論家の小川榮太郎氏など7人の主張が掲載されている。どれも杉田議員の主張を擁護、もしくは、議員への批判を過度なバッシングだとみなす主張だ。

藤岡氏は「尾辻議員の主張は誤読」と主張


「LGBTと『生産性』の意味」というタイトルで意見を掲載した藤岡氏は、杉田氏の論にいち早く不快感を示した立憲民主党・尾辻かな子議員は、杉田氏の寄稿を誤読していると主張する。「杉田氏は、『子どもを持たない、もてない人間は生産性がない』などとはどこにも書いていない」と言い、

「杉田氏が書いたのは1:税金という公的資金を投入するかどうかという社会的決定の文脈の中で、2:公的資金を少子化対策費の枠で支出するかどうかの妥当性に関して判断する基準として、3:LGBTの人たちについて『彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がない』と位置づけられる、というだけのこと」

と主張。元の文章には何ら問題がないという態度を示した。

小川氏「性には、生物学的にXXの雌かXYの雄しかない」

小川氏は「政治は『生きづらさ』という主観を救えない」というタイトルで、「性的嗜好(編集部注:本文ママ)についてあからさまに語るのは、端的に言って人迷惑である」、「極端な希少種を除けば、性には、生物学的にXXの雌かXYの雄しかない」などと主張した。論の後半では、「LGBTの生き難さは後ろめたさ以上のものだというなら、SMAGの人達もまた生きづらかろう」と、自身の造語であるSMAG(サドとマゾとお尻フェチと痴漢)を例に出し、

「ふざけるなという奴がいたら許さない。LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だからである(中略)彼ら(編集部注:痴漢症候群)の触る権利を社会は保障すべきではないのか。触られる女のショックを思えというか。それならLGBT様が論壇の大通りを歩いている風景は私には死ぬほどショックだ、精神的苦痛の巨額の賠償金を払ってから口を利いてくれと言っておく」

とも書き綴っている。なお、本文中ではLGBTなどの性的マイノリティを性的「嗜好」と書いているが、これが意図的なのか誤植なのかはわからない。

「酷すぎて何を言っていいのか途方に暮れるレベル」掲載内容に疑問相次ぐ

ネットでは、今回の特別企画について新潮社の意図を汲みかねる人も多い。「出版社としてのスタンスに疑問を感じる」「新潮45チラッと読んだけど、さすがに酷すぎて何を言っていいのかも途方に暮れるレベル」など、否定的な感想は少なくない。

特に小川氏の文章について、一般社団法人fairの代表理事で、自身もゲイの松岡宗嗣さんはツイッターで「酷すぎる」と苦言を呈していた。他にも「小川榮太郎さんの文章、このあとめちゃくちゃ炎上すると思います」など、不快感を示す読者が散見された。

杉田氏の寄稿を巡っては、17日に放送されたTBSの報道番組で、出演した安倍首相が自身の境遇を引き合いに「私も妻も辛い」と発言。党として処分を下さなかったのは「まだ若い」ためで、同じ自民党員として注意しながら仕事をしていってほしいと述べた。