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【大相撲】

稀勢、待ってました横綱相撲 栃ノ心倒し勝ち越し王手

2018年9月18日 紙面から

懸賞金の束を手に鬼の形相で引き揚げる稀勢の里=両国国技館で(西岡正撮影)

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◇秋場所<9日目>

(17日・両国国技館)

 復活を期す横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が大関栃ノ心を寄り切り、7勝目を挙げた。10日目の遠藤戦に、昨年春場所以来の勝ち越しを懸ける。大関とりに挑む関脇御嶽海(25)=出羽海=は横綱白鵬(33)=宮城野=との1分を超す熱戦に敗れ、3敗目を喫した。白鵬と、横綱鶴竜が全勝を守った。

     ◇

 ようやくの横綱相撲で、稀勢の里が勝ち越しに王手をかけた。立ち合いで頭からぶつかり、栃ノ心が前のめりになったところを見逃さず、素早く左を差し込む。まわしは先に左下手を許したが、右上手と、1枚まわしながら左下手もガッチリ。相手の強引な下手投げを2度こらえてから力強く寄り切ると、勢い余って相手もろとも土俵下へ突っ込んだ。左四つで攻めきる最高の形で後半戦の滑り出しを飾った。

 「やることを、しっかりやっていきたい」

 取組後の支度部屋で、必死の攻めを振り返った言葉はシンプルそのもの。真っ正面を見つめたまま、顔色ひとつ変えなかった。それでも、無言を貫いた前日から一転、短い言葉ながら力がこもっていた。

 中日を黒星で折り返し、新横綱Vを成し遂げた昨年初場所以来となる大関戦。不安ばかりが募る一番だった。8場所連続休場中、9日目までたどり着いたのは昨年夏、九州両場所だけ。いずれも苦杯をなめていた。

 さらに、栃ノ心も「壁」だった。昨年名古屋場所3日目には、あえなく寄り切られ、当時平幕だった相手に金星を配給。客席から投げられた座布団が大銀杏(おおいちょう)を直撃する屈辱も味わった。さらに、今年夏場所前の横綱審議委員会の稽古総見では歯が立たず、翌日の出稽古でもコテンパンにたたきのめされ全休に追い込まれていた。

 幾重もの逆境を突破した白星に、八角理事長(元横綱北勝海)は「下手を取ったのが大きい。自分の形になって勝ってるわけだから」と、自信回復の意義を強調した。

 8場所連続休場中は届かなかった7勝目の手応えを問われても、「うん、そっすね」と素っ気なかった。勝ち越し、そして2桁勝利へ。越えなければならないハードルが少しずつ見えてきた。ここからが本番。誰よりも、稀勢の里自身が分かっている。 (志村拓)

 

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