「きんどう」をご覧のみなさま、はじめまして。Kindleインディーズマンガストアで「勇者のクズ」という作品を配信している漫画家、ナカシマ723です。「パクツイBOTスレイヤー」の連載でご存知いただけている方もいるかもしれません。
Kindleインディーズマンガストアは、通常のKindle本と同じ体裁で、誰でも無料でマンガ作品を投稿・配信できるサービスです。ストア内の月間ランキング上位数十名には、Amazonの基金から月10万円が分配されます。(18年8月時点)
この記事では同ストアでこれから作品を発表していきたい人に向けて、ストアの現況や、私が参加した際のデータ、上位にランクインするための戦略をお伝えします。
【まとめ】勇者のクズ 第1話 + 第2話/第3話 + 第4話
「勇者なんて、最低のクズがやる商売だ。」 マフィアの頭目が「魔王」と化し、彼らを狩る仕事が「勇者」として合法化された現代の東京。都内で活動する勇者・《死神》ヤシロは、勇者見習いの学生・城ヶ峰に依頼され、渋谷にはびこる魔王のひとりを倒すハメになる。しかし事件の背後には、東京全域を巻き込む邪悪な陰謀の影があり――!?
Kindleインディーズマンガストアを攻略してみた
Kindleインディーズマンガストアってどんな感じ?
同ストアは、今年7月にAmazonが新しく立ち上げたサービスです。JPG画像1枚からでもKindle本として投稿でき、epubなどの電子書籍データを作成する必要がないため、Pixivなどの投稿サイトとあまり変わらない感覚で利用できるのが特徴です。
上位になれば、一般の商業作品と同様の無料ランキングに混じって掲載されることもあります。
7月中のランキング上位勢としてニュースになっていたのは「徒然チルドレン」の若林先生、「バーサスアース」原作の一智先生の作品だったので、インディーズマンガストアといいつつ「結局バリバリの商業経験者が強いんじゃねえか」と言われてたりしますが、それは別にどこの投稿サイトでも同じなので、がんばっていきましょう。
上位勢、どのくらいダウンロードされてたの?
毎月のDL数は、翌月15日にKDPアカウントの「レポート>履歴」の欄で見ることができます。私の場合は7月が4558冊、8月は9894冊でした。
7月に上位20名のうちどのあたりの位置だったのかは不明で、8月の分配金を獲得できているかも未確定ではありますが、ランキングを見たかぎり7月については月の半分程度、8月については1ヶ月通してストア内の総合上位10位には入っていたようです。
同作の1話目PVは各サイトあわせてまだ15万弱なので、単に「たくさんの人に見てもらう」という目的で置くにしても、投稿先として無視できない規模はすでにあるといえます。
なおサービス開始当初はリアルタイムにDL数を確認することができたのですが、現在はどの日にどのくらいDLされたのか、各作品のDL比率はどれくらいなのか、実際読まれてはいるのか……等のデータは一切わかりません!虚無!
参加するメリット(分配金の獲得、および有料KDP作品への導線として)
今のところの目玉は、なんといっても月ごとの上位ランカーへの分配金10万円です。毎月、小さい漫画賞が開催されているような形ですが、分配金をもらったからといって、作品の版権がAmazonに渡されるということもありません。
私の場合、「勇者のクズ」1巻分の連載資金には無断転載まとめブログから回収した賠償金を使用しています。しかしこれは2巻の半ばでほぼ尽きる見込みなので、そこからは単行本の売上などでまかなう必要があります。
今のペースの分配金がどのくらい維持されるかわかりませんが、もし3ヶ月ほど連続で獲得できれば、かなり金銭的な助けになります。
また、将来的にKDPで単行本を発売するにあたって、そもそもあまり電子書籍に馴染みがない読者の方にも、Kindle本に慣れてもらう機会になるのではないかと思っています。
(いまだに「スマホでもPCでも読める」「マンガならアプリDLすらしなくても、ブラウザからすぐ読める」ことを知らない方は多いので……。)
ランキング上位に入るには?作品は各話で分割すべき?
分配金は今のところ最大で月10万ですから、表紙とあらすじだけでダウンロードされる自信があるなら、月に10ページ以下ずつ発表していくというやり方もアリかもしれません。ランキングの基準はどうやらダウンロード数なので、すでに数10ページ以上の作品が手元にあるなら、ある程度区切って投稿した方が数を稼ぎやすいという考えも浮かびます。
しかしあまりに短いと、読者からすれば次の巻を読んだり、わざわざレビューをつけたりする気持ちになれない可能性があります。
上位になるには必ずしも毎月新作を投稿しなければいけないわけではないので、レビューがもらえるような作品を1つ置けば、数ヶ月にわたって分配金を獲得することも可能なはずです。むやみに分割するのではなく、読者にとって読みやすい範囲で区切っていくことが大事だと思います。
最近、ランキング上位を獲得しているヒゲの筆先生の「先生と助手(とデブ)」も、20~60ページずつの形でまとめて投稿されているようです。
結局、商業作家やSNS強者が強いのでは?
もともと固定ファンがいる人は当然有利です。Twitterのフォロワーが多い方、効果的な告知ツイートを作れる方なら、Pixiv等にも投稿している漫画まとめをこちらにも載せるだけで、10万円ゲットするのは難しくないでしょう。まだ参加者が少ない今がチャンスです。
一方で、そういった大きな導線がなくてもランキング20位以内に入り、分配金を獲得されている方も多くいらっしゃいます。
他サイトからの誘導は作品を一時的に上位に押し上げることはできますが、ランキングは日次で更新されていきます。長期的に上位にとどまるには、やはり作品そのものの訴求力が重要です。
私の場合、7月中にTwitterに投稿した告知ツイートの「リンクのクリック数」は現時点で653回でした。しかし先述のとおり、同月中の「勇者のクズ 1話+2話」のダウンロード数は4558回でした。
Kindle版の存在はTwitter以外では特に広報していませんから、実際のところTwitterのリンクからのダウンロードより、Amazon内で発見して読んでくれる人のほうがずっと多かったことがわかります。
自分のことを全く知らない人が見ても「面白そう」と思える表紙・タイトル・あらすじをちゃんと作れていれば、他のプラットフォームを持っていない人でも十分戦えるのではないかと思います。
「キーワード」には既存のカテゴリを記入しよう
以上のように、まずは真っ当に読者のことを考えて作品の内容・見せ方を整えることが大事だと考えますが、他にひとつ、あまり気づかれていないらしいランキング対策があります。作品を投稿する際、「キーワード」を記入する欄についてです。
これは読者から見えない検索用ワードの設定欄のように見えるのですが、実はここで「ファンタジー」「SF」「メディアミックス」などの、独立したカテゴリランキングがある言葉を登録しておくと、リリース時点から商品ページでそのカテゴリ内での順位が表示されるようになります。
あまり作品内容にそぐわないものはダメでしょうが、「少年マンガ」「少女マンガ」といった大きなカテゴリよりは上位に入りやすいため話題にできますし、ランキングページからの流入も期待できます。
「勇者のクズ」の場合、「格闘技」カテゴリで他に無料の登録作品が一切ないため、常に1位という状況になっています。(2018年9月現在)
→ 参考 格闘技マンガ 売れ筋ランキング
今後、インディーズストアで改善されてほしいな~と思うところ
同ストアは開始して間もないサービスということもあり、他の投稿サイトと比べて使いづらい面もあります。
まず挙げられるのが、検索性の低さです。読者目線でみると、ストア内ランキング数十位以下の作品があまりにも探しづらいです。
ストア内からのリンクをたどっても「Kindleインディーズマンガ内にあるマンガだけを、特定の語句で検索する」方法にたどり付くのは難しく、たとえば「異世界転生モノの作品だけを探す」ということができません。この点を補うタグなどの機能もありません。
いろいろ試してみましたが、ストアトップのランキング横から「もっと見る>絞り込み>著者」の項目をどれか適当にクリックした後なら、画面上部の検索窓を使って(その著者に限らず)インディーズストア内だけを検索できるようです。しかし、なんとなくストアを見に来た人がこの方法にたどり付くのは難しそうです。
検索例:インディーズマンガストア内を「異世界」で絞り込み検索した結果
また、他の投稿サイトならランキング等から1クリックでその作品を読み始めることもできるのですが、インディーズストアの場合は「商品ページ→購入ボタン→読むボタン」で3クリック必要です。
この時点で読者の方にとっては不便なので、たとえば投稿先をここ一本に絞って、あくまで分配金の獲得を狙う、というところまでする価値があるかどうかは微妙です。
他にもさまざまに不便な点がありますが、Amazon側としてもまだ手探りの状況なのだと思います。7月末には投稿者に向けて、詳細なアンケートの依頼があったりもしました。フィードバックを送っていけば、投稿者にとっても読者の方にとっても使いやすいように改善されていく可能性はあります。
今後、同ストアがKDP作品への導線として、また趣味の創作を発表する場として、発展をみせてくれることを期待しています。
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【まとめ】勇者のクズ 第1話 + 第2話/第3話 + 第4話
「勇者なんて、最低のクズがやる商売だ。」 マフィアの頭目が「魔王」と化し、彼らを狩る仕事が「勇者」として合法化された現代の東京。都内で活動する勇者・《死神》ヤシロは、勇者見習いの学生・城ヶ峰に依頼され、渋谷にはびこる魔王のひとりを倒すハメになる。しかし事件の背後には、東京全域を巻き込む邪悪な陰謀の影があり――!?