自分が純粋な日本人じゃないと教えられたのは、
私が20歳を超えてからのことでした。
TVを見ているときに「あの人クォーターなんだって」
と家族の誰かが言うと「ウチと同じじゃん」と誰かが言った。
驚いて「えっ?」と私が反応すると・・・・
なぜか急に家族一同が顔を伏せて黙ってしまった。
「えっ?」
どうやら口が軽く頭がオカシイとされていた、
私にだけはナイショにしていたらしい。
バカバカしい話に聞こえるでしょうが・・・
もし海外の血が入ってると近所の人や友人にバレてしまったら、
「差別されるかもしれない」と
私の家族は本気で思っていたようでした。
問い詰めて、話を聞いてみると・・・
思った以上に血筋はゴチャゴチャしているようでした。
言われてから思い出してみると・・・
親戚の中にアカラサマな容姿をしている人がいる。
↑こういうね
見た目の話をすると・・・
メキシコっぽい人が多いんじゃないかと思う。
(たぶん)
当時は凄くショックでして・・・
自分はずっと日本人だけの家系の純粋な日本人だと、
そう思って心のどこかでそれを誇っていたからだと思う。
海外の血が入ってるってことが、
なんだか汚らしいモノのようにさえ思えました。
(いまはぜんぜんそんなことはないんですけどね)
私の家族が警戒していたような
外国の血が入っていると差別されるかどうかの話は別として、
たしかに日本人は血筋 を重要視する人が多いと思う。
例えばそれは・・・
「凄い人は親や先祖が凄いから凄いんだ」
みたいな理屈がないと・・・
凄い人が凄い説明にならないからかもしれない。
人気漫画の主人公の設定にも多い。
父親が伝説のスーパーサイヤ人だとか。
父親が凄腕のハンターだとか。
父親が革命軍のボスだとか。
父親が魔族の王だとか。
父親が火影だとか。
もうあえて主人公の父親だけ登場させない、
みたいな手法をとっている漫画もある。
私が暮らしたクソ田舎の居酒屋などは
酒が入ると・・・
「オレの家は武士の一族なんだよね~」
「どこの武士なの?」
「平家だったらしいよ?」
「バーカ、おれの家は源氏だぞ?」
みたいな先祖自慢合戦が繰り広げられることがありました。
そんなことをワイワイ言い合っていると・・・
「オレの家は家系図はあるけど?おまえらあるの?」
みたいなマウンティングがさらに始まる。
家系図の力は偉大である。
しょせん酒の上での世間話とはいえ・・
みんな血筋の話が大好きだ。
血筋へのこだわりは強い。
私はそういう話題になると、
そっと席を離れたりして・・・
なるべく会話に混ざらないようにしていました。
やっぱり、みんな良い血筋が大好きだし。
なにより日本製が大好きだ。
海外製品は壊れやすくウサンクサイと思ってる。
「日本国籍ならみんな日本人だから!」とか。
「どんな生まれであっても自分は自分!」とか。
なーんて・・・簡単に割り切れない感覚がある。
・・・まぁとにかく家族からは、
「血筋の話は人には絶対に言うんじゃないよ?」
と強くクギを刺されておりました。
当時は物凄い強烈なショックを受けましたが・・・
1年、2年、3年、4年と経つうちに・・・
(いやいやいやいやいや、まさか・・・・
血筋くらいでどうこう言う人いないでしょ?)
と冷静に思うようになっていました。
自分から血筋のことは言わないけど・・・
別にそんなことで差別するヤツいないでしょ~ってね。
くだらない話だ。
がっ・・・・・しかし・・・・・・・・
その数年後・・・・・2度目の婚約の時に、
相手の親御さんからこう言われてしまったのです。
「〇〇人の血が入ってるなんて怪しい!」
なんてね?
まさかのまさかでした。
他にも、かなりボロクソに言われましたが・・
「財産目当てじゃないのか?」とかね。
さすがに婚約者の彼女には、
血筋のことは言ってあったわけですが・・
(えっここで?人生のこのタイミングで?
まさかこんなとこで突っ込まれる?)
みたいにあっけにとられてしまいました。
どうせ一生血筋のことなんか
誰からも突っ込まれないだろうと
タカをくくっていました。
いやぁでも・・・でも・・・
こういう時どうすればいいのか?
なんて弁解すれば良いのかわかりませんでした。
「日本で育ったから日本人です、怪しくありません!」
って言ったところで・・・・言ったところで・・・・
(怪しい・・・怪しいかな・・・・?)
どうすれば自分が怪しくないって証明できるのか?
信用される方法がわかりませんでした。
そこでさらに・・・・さらにさらに・・・
親御さんは出してくるわけですよ・・・
アルティメットマウンティングウェポン
『家系図』
こうかはばつくぐんだ!
江戸時代から続く由緒正しい純血の日本人家系らしい。
これこそ真の日本人である証明!
信頼の証!
私達は純粋な日本人による日本人だけの純潔家系。
オマエとは違う!
・・・・くらいの勢いと圧力を家系図から感じた(笑)
別にそこまでは言われてないですけど。
街中にビルみたいな家建てて住んでいましたから、
そりゃお金持ちで良い家庭なんでしょう。
ああ、すごい・・・・
その『由緒正しい一族の家系図』
まるで生まれた瞬間から自信と自己肯定感を
与えられているかのような奇跡のアイテムだと思う。
本当に羨ましく思いました。
最終的には「家柄が合わない」っていう一言で
婚約は破棄となったんですが・・・・
まぁ・・・なんていうか・・・
自分たち一族が代々守ってきた
素晴らしい『家柄』と素晴らしい『血筋』に
私みたいなゴチャゴチャと血が混じった無能の貧乏人が
間違っても一族に入るなんて許せなかったんでしょうね。
それは代々培ってきた伝統と誇りみたいなものだから、
今更変えられない感覚なんだろう。
それは・・・・・もう仕方ない。
生き方はそう変えられるもんじゃない。
私も今となっては「自分は自分!」とかじゃなく、
「べつになんでもいいや・・」みたいな感覚で生きてます。
自分がどうのこうの~なーんて考えない。
晩御飯に何食べるか悩むので精一杯ですよ。
おしまい
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▼面白く書けたので、読んでください。
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売り上げは被災地に寄付します。
よろしくお願いします。