(cache)たった一人の復讐者~勇者パーティーと世界に絶望と後悔を与えるのはこの俺だ~

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たった一人の復讐者~勇者パーティーと世界に絶望と後悔を与えるのはこの俺だ~ 作者：復讐

聖なる祠

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　吼えるイザベラ。

　その身は怪物。その姿は悪意の権化。

　されどその記憶は愚かしいイザベラそのもの。

　ばさりと羽ばたき。

　イザベラは咆哮する。

　声にならぬ唸りと共に。

　眼下佇む復讐者《カイト》に向けて。

　その赤い紅い目から流れるは血の涙。

　黒く黒く染まった怪物《イザベラ》の涙。

　カイトもまた笑いをあげる。

　その胸を踊らせる“復讐”の賜物に。

　その。イザベラの成れの果てを見つめ。

　狂ったように嗤いをあげてやる。

　面白い。ほんとに。

　この、喜劇は。

　勇者《アレン》とロックを一撃で伏せたときよりも。

　アレンの顔面に拳をめり込ませ、ロックの腹に魔剣を突き刺した時よりも。

　ずっと。ずっと。

　心が踊ってしまう。

　カイト。カイト。カイト――ッ。

　イザベラは、復讐者《カイト》へとその爪を突き立てようとする。滑空し、その眼球に黒く揺らめくカイトを宿して。

　その憎しみを。その悲しみを。

　自分から全てを奪った。

　その、復讐者《カイト》へと。

　「じゃあな、怪物《イザベラ》」

　鼻で笑い。

　カイトはその身を翻す。

　相手にする価値などない。

　もはや、こいつは。

　殺すに値しない。

　その爪で傷をひとつでもつけてみろ。

　その脆弱なる復讐の意思で。

　この俺にかすり傷のひとつでもつけてみるがいい。

　降り下ろされるは。長く歪なかぎ爪。

　その赤黒く。

　人の面影。それが欠片もない長い長い爪。

　それを――

　その価値なき本能を。

　カイトの闇は一風にして無に帰す。

　意味を為すこと等ない。

　それを知れ。そして、理解しろ。

　大人しく。

　己の末路を受け入れろ。

　吹き荒れる力の奔流。

　弾き飛ばされ。

　ぐしゃりと。イザベラは壁へと激突する。

　場に踞り。

　小刻みに身を震わせるイザベラ。

　その姿に。

　その、哀れで醜い末路に。

　カイトは一瞥を向けてやる。

　そして――

　「腹が減ったらそこに餌がある。外にも、腐るほどお前の餌が転がっているはずだ。せめてもの慈悲だ、遠慮なく食らい尽くせ」

　そう声をあげ。高笑いと共に。

　カイトは守護結界の間を後にする。

　もうここには用はない。

　遮断の結界が張られたこの地。

　ここに足を踏み入れる者は二度と現れない。

　一人で。いや一匹で。

　お前はここに居ろ、怪物《イザベラ》。

　未来永劫。死ぬこともできず。

　食わずとも。死ぬことはないだろう。

　だが、その空腹に怪物《イザベラ》は耐えること等できようはずもない。

　精々、腐れ切った生を謳歌しろ。

　愛した者の血肉で腹を満たし。

　お前たちを救世主と慕った者共の肉片で、その本能を満たすがいい。　

　俺にはまだやることがある。

　俺にはまだ――

　やらなければならないことがあるのだから。

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