リノンの試験
…そういえば、異世界にシャワーはあるのだろうか?
「二人ともご飯よ~。」
シルビィの返事がないまま、夕食の時間になった。
「「は~い!」」
リノンも心配そうな顔をしている。
「ご飯とお風呂終わったら、リノンの部屋に集まろうか?」
「…うん。」
そういって、僕たちはリビングに向かう。
「二人とも、席について!」
「うわぁ…今日はごちそうですね!」
「そうよ、リノンの前祝ね!」
「…まだ合格と決まったわけでは…。」
「リノンなら、大丈夫よ!」
母さんがリノンを励ます。
…まぁ、落ち込んでる理由はほかにもあるけど…。
「「いただきます!」」
「リノン、今日の試験はどうだった?」
「はい、現代社会以外は何とか…。」
「社会は今のリノンにとっては難しいかもね。
焦らずに覚えていけばいいよ。」
「ありがとうございます。」
今度は父さんから。
みんな、試験が気になるようだ。
「あ、これおいしいです!」
「それは鳥のから揚げね!」
少し暗かったリノンに明るい表情が戻る。
ご飯の力って偉大だな…。
「「ごちそうさまでした!」」
ご飯を済ませて僕は部屋に戻り、お風呂の準備をする。
「…。」
風呂場まで来て、今までの事を思い出す。
いつも風呂場でリノンとバッティングしてたし…。
「コンコン!」
ノックをしてみる。
返事がない。
「リノン?」
これまた返事がない。
「入るよ。」
僕は思い切って入ってみることにした。
リノンが居ないことを祈って…。
脱衣所は空だった。
その代わり、シャワーの音がする。
「あ、ゴメン!!」
「ユウスケ?」
今度は返事があった。
「ユウスケ、そこに居て…。」
リノンが心細そうに声をかける。
「どうしたの?」
「シルビィが心配で…。」
リノンはシャワーを浴びながら言う。
…そういえば、異世界にはシャワーなんてあったのだろうか?
などと、余計な思考にとらわれる。
「ユウスケだけがエンカウントするなんて、おかしいし…。
こんなに返事が遅かったこともなかったから…。」
リノンは続ける。
なんだかんだ言っても、シルビィの事が心配らしい。
「リノン、心配しても仕方ないよ。
もしかしたら、戻った時に日記に
何か書いてあるかもしれないし。」
「…そうね…。
心配しすぎかもしれないし…。」
少しだけ、リノンが元気になったような気がする。
シャワーの止まる音がして…。
「ガラ!」
「じゃあ、ユウスケ、私の部屋に行こ!」
「…。」
「…。」
「うわっ!」
「きゃうん!」
リノンはその場にへたり込む。
僕は慌てて外に出る。
「み~た~な~!!」
「いや、今のはリノンが悪い!!」
低い声でうなるリノン。
…さて、今日僕は眠れるだろうか…。