バブルを機に変わった労働市場 非正規・高プロの流れ続く

09.17 17:00 京都新聞

 日本の労働市場や雇用慣行は、1991年のバブル崩壊を機に大きく変わった。企業はコストを減らすために多様な雇用形態を取り入れ、国も軌を一にして労働規制の緩和を進めた。2008年のリーマン・ショック後の「派遣切り」などの社会問題を受け、労働者保護の機運も一時高まったが、経済界は制約の少ない雇用形態を求め続けている。労使双方が納得できる雇用の実現は今なお遠い。

 近年の労働政策の底流には、バブル崩壊による長期不況のさなかの1995年、日本経済団体連合会(現在の経団連)が発表した報告書「新時代の『日本的経営』」がある。雇用形態を、正社員らの「長期蓄積能力活用型」、専門プログラマーなど必要な時に契約する「高度専門能力活用型」、パートや派遣社員などの「雇用柔軟型」の3タイプに分類し、効果的に組み合わせる経営を提言した。

 報告書の流れに沿って、派遣労働は99年に「原則自由化」された。本来、派遣は賃金が中間搾取される問題点などから原則禁止され、86年に労働者派遣法が施行されても業種が限定されていたが、方向性を180度転換した。04年には製造業派遣が認められるなど、対象が拡大した。

 企業が多様な雇用形態を求める背景には、国際競争にさらされる経済界の危機感がある。大手メーカーは、85年のプラザ合意後に進んだ円高に対応するため、工場の海外移転を加速。91年のバブル崩壊後は、人員整理を進めた。日本的経営の象徴とされてきた終身雇用も見直しが進んだ。

 また、経営側の要望が通る一因には、労働組合の弱体化が指摘されている。60年代に30%超あった労組の組織率は現在、17%程度に低下。経済界は次第に、需要の変動に応じてスムーズに人員調整ができる制度を強く主張するようになった。

 日経連の報告書は今も影響力を保つ。3月に成立した働き方改革関連法では、「高度専門能力活用型」に近い「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)が盛り込まれた。高収入の一部専門職を対象に全ての労働時間規制を外す内容で、19年4月に導入される。しかし、派遣労働と同様にいずれ対象が拡大され、労働者の待遇悪化につながるとの懸念は強い。裁判で不当とされた解雇に対する金銭解決制度の創設も検討が始まっている。

 立命館大の吉田誠教授(産業・労働社会学)は「平成時代、経済界は派遣などのルールを変えて利益を得ようとしてきた。だが、需要に応じて非正規労働者を増減させるのではなく、ワークシェアリングで対応するなど、景気後退を乗り切る知恵や工夫もあるのではないか」と指摘する。日経連の報告書の流れは簡単には止まらないとし、「国は高プロなどの制度の変更で副作用が起きないようにすることが求められる。労働者も、自分の身をどう守るか考えないといけない時代になってきた」と話す。


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 来年5月で幕を下ろす平成は、数々の経済危機が起きた。日本のバブル崩壊、米国発のITバブル-。そしてリーマン・ショックからちょうど10年がたった。過去のバブルの現場にいた京都、滋賀にゆかりの人たちの当時を振り返り、今に続く影響や新たな危機の芽に目を凝らす。

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景気改善、でも非正規減らず 派遣切り後、パート5年

09.17 16:30 京都新聞

 「今年いっぱいで仕事は終わりです」。2008年12月。京都市内の自動車部品工場で働いていた派遣社員の大木昭(48)=仮名=は、派遣会社の担当者から突然告げられた。契約は翌年3月末まであるはず。「補償はあるのですか」。そう尋ねたが、「ありません」と素っ気ない返答。目の前が真っ暗になった。

 工場で働き始めたのは3年前。金属塊を機械に設置し、加工する役割を担当した。膝を痛めるなど身体への負担は大きかったが、派遣先の正社員から「3年頑張れば良いことがあるよ」と聞き、正社員化への淡い期待を抱きながら仕事に励んできた。

 その願いは、08年9月に起きたリーマン・ショックで打ち砕かれた。世界的な景気後退で、自動車需要は激減。工場でも景気の変動に対応すべく、男性ら約10人が雇い止めにされた。

 勤務最終日。居並ぶ正社員を前にあいさつする機会があったが、何もいえなかった。「現場の人間関係は悪くなかった。悔しかったが、向こうの気持ちも分かったから」と振り返る。

 同じ頃、東京では大木と同様に派遣契約を切られた労働者らを支援する「年越し派遣村」が日比谷公園に設けられ、世間の注目を集めた。年末年始の厳しい寒さの中、仕事や住居を失った人ら約500人がボランティアの炊き出しに並び、宿泊場所の提供を受けた。

 「雇用の調整弁」としての非正規労働者。90年代初頭のバブル崩壊で、企業は人件費を抑えるために正社員を減らし、契約社員や派遣社員への置き換えを進めた。国も呼応して1999年に派遣労働を原則自由化した。「派遣切り」は、必然的な成り行きだった。

 大木はその後、労働組合に相談し、09年10月、契約を打ち切られた仲間とともに派遣先工場の経営会社を相手取り、直接雇用を求める訴訟を京都地裁で起こした。だが、会社側は応じず、やむを得ず12年に和解した。

 年越し派遣村以降、国会で非正規労働の問題は重要テーマとなった。12年には労働者派遣法が改正され、規制緩和路線から労働者保護にかじを切った。今年4月、有期契約の労働者が5年を超えて働くと無期契約に移行できる「無期転換ルール」も始まった。

 今年8月下旬の夜。大木は京都市内で、支援を受けた労働組合の幹部らと再会した。産業廃棄物処理会社でのパート勤務が5年に達したため、無期契約への変更を申請したと報告した。「定年まで働けられるようになれば少し前進だが、身分がパートのままでは暮らしはどうなるのか」。大木は複雑な表情を見せた。

 10年前に比べて景気は確かに良くなった。今年3月には、「同一労働同一賃金」などの非正規労働者の待遇改善策を盛り込んだ働き方改革関連法が成立した。雇用環境は改善したように見えるが、非正規労働者はいまだに雇用者全体の4割近い。結婚などの人生設計を見通せない人も多い。

 大木自身も独身だ。「働く気持ちは誰にも負けないが、非正規では子どもを養うのも難しい。東京五輪もいいけれど、格差の解消こそが国が取り組むべきことではないか」=敬称略

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 来年5月で幕を下ろす平成は、数々の経済危機が起きた。日本のバブル崩壊、米国発のITバブル-。そしてリーマン・ショックからちょうど10年がたった。過去のバブルの現場にいた京都、滋賀にゆかりの人たちの当時を振り返り、今に続く影響や新たな危機の芽に目を凝らす。

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自治会加入促進へ協議義務化 京都市、開発業者の関与増へ

09.17 16:30 京都新聞

 京都市は、マンションや新興住宅地に転入する住民に地域活動への参加を促すため、開発業者に転入者の自治会加入などについて地元自治会と事前協議し、状況を市に報告することを義務付ける方針を決めた。19日開会の9月市議会に地域コミュニティ活性化推進条例の一部改正案を提案する。

 同条例は2012年4月に施行した。市民に地域活動への積極的な参加を促し、マンションの開発業者には転入者の自治会加入などに関する協議窓口となる「連絡調整担当者」を置くことを求め、市への届け出を義務づけていたが、さらに内容を強化する。

 改正案では、業者が着工や販売の前段階となる建築確認申請を行うまでに、地元自治会との間で転入者の自治会加入や地域行事への参加について話し合うことなどを求める。従来の義務付け対象はマンションなどの共同住宅だけだったが、改正後は宅地面積1千平方メートル以上の一戸建ての宅地開発や社員寮、学生寮なども新たに加える。

 市地域づくり推進課は「自治会加入の促進とともに、転入者の自治会活動や近所づきあいへの不安解消にもつなげたい」と話す。

 市内の自治会加入率(推計)は12年度が69・8%、16年度が68・5%と伸び悩んでいる。地域行事の運営に影響が出始めているほか、高齢化で役員の担い手不足なども深刻化しているため、業者の関与を増やして転入者による地域参加を後押しする。

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認証ジビエ施設第1号に京都の工房 供給量を倍増へ

09.17 12:00 京都新聞

 シカやイノシシのジビエ(野生鳥獣肉)を扱う京都府京丹波町塩田谷の食肉処理施設「京丹波自然工房」が、衛生や流通管理が徹底されている農林水産省「国産ジビエ認証施設」の第1号に認定された。同工房は京都市の百貨店でも獣肉販売を始め、供給量の倍増を計画しており、「認証を機に安心安全なジビエをさらにPRしていく」と意気込んでいる。

 施設は株式会社「ART CUBE」が運営。代表で猟師の垣内規誠さん(57)=福知山市三和町=が、深刻化する農作物の獣害を解決し、おいしいジビエの地域資源を活用しようと、2013年2月に開設した。

 京丹波町や福知山市、大阪府能勢町のシカやイノシシを年間約400頭処理し、食肉として東京都や京都市の飲食店などで販売し、ドッグフードも手がけている。

 同省はジビエの利用量を16年度の1283トンから19年度に倍増させる目標を掲げている。衛生管理基準を満たし、トレーサビリティー(生産流通履歴)の確保に取り組む食肉処理施設の認証制度を今年5月から始めた。

 同工房では全作業工程を記録し、捕獲時の体温や内臓の状態をチェックして異常がないか確認。識別番号を付けて、工程ごとに処理する部屋を変える。

 今月から京都高島屋(京都市下京区)で常設販売を開始。国のジビエ利用モデル地区の指定を受け、来年度から年間千頭の処理を目指して本年度中に処理施設を改築する。

 垣内さんは「牛や豚と同じような品質管理をし、国のお墨付きをいただいた。国内初の重みを感じながらジビエ業界を引っ張っていきたい」と話している。

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活版印刷でノート作り 京都、家族連れら楽しむ

09.17 09:30 京都新聞

 昔ながらの活版印刷や紙の工芸を体験する「KAPPAN(カッパン)縁日」が16日、京都市上京区で催された。家族連れらが、慎重に活字を並べて刷った名前入りブックカバー作りなどを楽しんだ。
 本作りの楽しさを体験できる(仮称)堀川アート&クラフトセンターの予定地で、建設主体の大垣書店が印刷会社の修美社とともに催した。デジタル化が進む中、出版の原点と言える活版印刷に触れ、紙の文化の良さを感じてもらうのが目的。
 会場には、印刷や唐紙に関するワークショップ、カフェなど28ブースが並び、多くの親子連れやお年寄りらが訪れた。
 裏表紙に自分の名前を印刷したオリジナルノートを作った西京極西小5年の平野沙和さん(11)は「活字は逆文字なので、『さ』を探すのが難しかった。ノートは絵を描くなど大切に使いたい」と話していた。
 近くの堀川商店街にあるイベントスペース「堀川ACLab」で関連イベントが30日まで開かれており、印刷職人の愛読書の展示や活版印刷体験(28、29日)などを行う。

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駅コンコースで落語披露 京阪三条、大学生が舞台出演

09.17 09:20 京都新聞

 駅のコンコースで大学生が音楽などを発表する「サークルステーションIN三条」が16日、京都市東山区の京阪電鉄三条駅で開かれた。駅の利用客が足を止め、龍谷大(伏見区)の学生たちの演奏を楽しんだ。
 地下のコンコースに舞台と客席を設け、吹奏楽部やマンドリンオーケストラ、混声合唱団など同大学の5団体が出演した。落語研究会の京龍亭柏丸=本名・渡辺隼平=さん(21)は、古典落語「動物園」を熱演。毛皮をかぶってトラになりすます男をユーモラスな動きで演じた。
 イベントは京阪ホールディングスと市内の大学が連携した取り組みで、15日には同志社大の学生たちが出演した。

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熱気球体験でまち一望 亀岡で「京都丹波EXPO」

09.17 09:00 京都新聞

 子どもらに地域の魅力を体感してもらうイベント「京都丹波EXPO」が16日、京都府亀岡市保津町の保津川河川敷グラウンドで多彩に催された。親子連れらが熱気球で上空約20メートルからまちの風景を眺め、サッカー選手との交流などを楽しんだ。
 ふるさとのまちや自然、スポーツなどを好きになってもらおうと、亀岡青年会議所が主催した。
 一番人気は熱気球のフライト体験で、ゴンドラに乗り込んだ子どもたちは、バーナーに点火されて気球がふわりと高さ約20メートルまで浮かぶと、「すごい」「まちがよく見える」と歓声を上げていた。
 サッカー教室で、子どもたちは京都サンガFCの下畠翔吾選手やコーチの正岡望世さんからキックやパスの手ほどきを受けた。一緒にミニゲームも行い、巧みなボールさばきを間近に見ながらボールを追いかけていた。
 段ボール製の手作り甲冑(かっちゅう)の試着体験や、チアダンスの披露などもあり、多くの人出で終日にぎわった。

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コブハクチョウの羽、短く整える 滋賀・彦根城

09.17 08:50 京都新聞

 滋賀県彦根市金亀町の市彦根城管理事務所はこのほど、内堀で飼育しているコブハクチョウの風切り羽を切って短く整えた。
 ハクチョウの風切り羽が伸びて飛行が可能になると城外で事故に遭う恐れがあるため、年1回行っている。8月には雄1羽が近くの彦根港湾へ飛び立ち、職員総出で捕獲した。
 14日に飼育している5羽のうち2羽を処置し、職員が一枚一枚はさみで切り取った。
 堀のハクチョウは1961年から飼育。94年にはコクチョウも合わせて36羽まで増えたが、高齢化やイタチに襲われるなどして減少。現在はハクチョウ4羽、コクチョウ1羽の計5羽が観光客の目を楽しませている。

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樹木希林さん存在感 京都で7月「7センチ縮んだ」

09.17 08:50 京都新聞

 俳優の樹木希林(きき・きりん、本名内田啓子=うちだ・けいこ)さんが15日午前2時45分、東京都渋谷区の自宅で死去した。75歳。樹木希林さんは「影の軍団」や「必殺」シリーズなど京都・太秦で撮影された時代劇ドラマや映画にも数多く出演し、味のある存在感をみせていた。
 今年7月末には、茶道の先生役を務めた新作映画「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」(10月13日公開)のイベントで、京都市東山区の建仁寺を着物姿で訪問。会見で体調を尋ねられ、「(昨年末の撮影時から)10キロ痩せて、7センチ縮んだ」とユーモアを交えながら語っていた。

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由良川PAで20年記念催し 京都、沿線特産市にぎわう

09.17 08:40 京都新聞

 京都縦貫自動車道・由良川パーキングエリア(PA)の開業20周年を記念した「美味(おい)しさいっぱい沿線特産市」が16日、京都府舞鶴市地頭の同PAであった。府北部の農産物やご当地グルメが販売され、家族連れらでにぎわった。

 府道路公社の主催で、舞鶴や宮津、福知山など6市町の16団体が参加。会場には地元でとれた野菜や果物、イワシやサバを使ったすしなどが並んだ。長旅の疲れを癒やす足湯も設置され、来場者は思い思いの時間を過ごしていた。

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